上 下
24 / 104

お風呂を作ろう 中

しおりを挟む
 さてさて、お次はお風呂の番だ。
まずは、作ったばかりの廊下に二歩ほど入った位置で、左手の方向に入口を作る。
”ディグ”は使うけど、青土を出来る限り回収するという方針は変えません。
流石に、奥まで1メートル程度だとほとんど土が落ちなくて残念だ。
仕方がないので、コツコツと手で削る。
とはいえ、”掘削”スキルを覚えたお陰で思っていたよりもスイスイと掘り進み、三十分程度で”ディグ”で掘った範囲は完成。
ちなみに、今掘った部分は脱衣所兼物干し場になる予定だ。
部屋の幅は廊下よりも広い方が良いよね。
なーんて思いつつ、入り口を右手に見て、うっかり1メートルの奥行きで削ってしまったせいで、思ったよりも脱衣所が細長くなってしまったのは……うん、気にしない。
ここも仕上げは手作業で。

 おっと、そろそろアイラの様子も見なくては。
”ホット”の時間が切れて一時間もすると、結構冷えてくる。
まだ寝ているようなら掛け直してあげないと、風邪をひきかねない。
一旦作業を中止して、寝室を覗く。
まだ、寝てるかな?
そっと”ホット”を追加して作業に戻る。

 脱衣所に戻り、お風呂場づくりを再開。
日本の我が家にあったお風呂を思い浮かべつつ、参考にしてみる。
……なんで、パッとお風呂のサイズが浮かぶのかな?
特に、広さを気にしたこともないんだけど……
まあ、気にしても仕方がないことは気付かないふりをして、まずは、お風呂場の入り口のサイズ決め。
入り口は70センチ。
奥行きは120センチだけど、壁に30センチ使うから150センチで、高さは実家のとは違うけれど180センチということに決めて、”ディグ”で底辺から穴を穿っていく。――今回は、半分くらいが自重で”データストレージ”の中に入ってくれる。
残った部分を手で削り、それが終わると浴室の幅を更に1メートル広げた。
崩れずに残った部分を”掘削”し、”ディグ”で30センチほど掘り下げれば、お風呂を設置するスペースの出来上がり!
いつもの部屋に置いてきていた大きな土鍋を抱えて浴室に戻ると、早速、床面の錬金に取り掛かる。
……と言っても、先に大きなサイズの錬金釜を作る必要があるんだけど。

「あちゃー……」

 思わず声を上げて天を仰いでしまったのは、大きな錬金釜を作った途端にめまいがしたせい。
なんか、体力がヤバいっぽい。
プロフィールを確認してみると、残り体力は4。
浴室の床からあちこちに浸水するのは怖いから、ガラス質の陶器をイメージした床材を作るつもりなんだけれど、少し休憩しないと無理っぽい。
アイラが起きてきた時に驚かせたかったんだけど、仕方がない。
作ったばかりの大型の錬金釜は浴室(予定)に置き去りにして、いつもの部屋に戻って”ホット”を二回。それから”エリアライト”も。
ずっと、浴室の方で作業をしていたからすっかり冷え切っていて、思わずくしゃみが飛び出した。

「おはよ、レイちゃん。くしゃみしてたけど、大丈夫?」

 くしゃみを聞きつけたのか、寝室からアイラが顔を出す。
声の感じからすると、多少は調子が戻っているような気がする。

「ん、おはよ。”ホット”を掛けてなかったせいで寒かっただけだから、風邪とかじゃないと思うよ」
「なにかしてたの?」
「ちょっと、拡張工事をちまちまと」

 まだ、完成してないんだけどと前置きをしつつ、アイラが寝ている間に、お風呂を作っていることをご報告。
本当は、出来上がってから話したかったんだけど……どのみちすぐにバレてしまうだろうから先に言ってしまうことに。
嬉しそうに目を輝かせている姿を見て、『自分、グッジョブ!』と心の中で自画自賛する。やっぱり、お風呂は嬉しいよね。

「じゃ、出来上がったら一緒に入ろっか」

 なんて、ニコニコ笑顔で言われて、うっかり頷きかけた。

「いやいや、まずいでしょ。前ならともかく、今は私、男だし」
「えー、レイちゃんはレイちゃんだし、あたしとしては問題ないけど……」

 アイラってば、なんで、不満そうなの?
年頃の娘さんとしては、よろしくないですよ!
それになにより、トイレの時にもまだ『ギャー!』ってなってしまうセガレさん。
はじめて、セガレさんと正面から向き合う機会になりそうなので、謹んでご辞退おばいたします……
え?
それが見たかった?
ちょっと、やめて!
私が羞恥心で死んでしまう!!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

【完結】伝説の悪役令嬢らしいので本編には出ないことにしました~執着も溺愛も婚約破棄も全部お断りします!~

イトカワジンカイ
恋愛
「目には目をおおおお!歯には歯をおおおお!」   どごおおおぉっ!! 5歳の時、イリア・トリステンは虐められていた少年をかばい、いじめっ子をぶっ飛ばした結果、少年からとある書物を渡され(以下、悪役令嬢テンプレなので略) ということで、自分は伝説の悪役令嬢であり、攻略対象の王太子と婚約すると断罪→死刑となることを知ったイリアは、「なら本編にでなやきゃいいじゃん!」的思考で、王家と関わらないことを決意する。 …だが何故か突然王家から婚約の決定通知がきてしまい、イリアは侯爵家からとんずらして辺境の魔術師ディボに押しかけて弟子になることにした。 それから12年…チートの魔力を持つイリアはその魔法と、トリステン家に伝わる気功を駆使して診療所を開き、平穏に暮らしていた。そこに王家からの使いが来て「不治の病に倒れた王太子の病気を治せ」との命令が下る。 泣く泣く王都へ戻ることになったイリアと旅に出たのは、幼馴染で兄弟子のカインと、王の使いで来たアイザック、女騎士のミレーヌ、そして以前イリアを助けてくれた騎士のリオ… 旅の途中では色々なトラブルに見舞われるがイリアはそれを拳で解決していく。一方で何故かリオから熱烈な求愛を受けて困惑するイリアだったが、果たしてリオの思惑とは? 更には何故か第一王子から執着され、なぜか溺愛され、さらには婚約破棄まで!? ジェットコースター人生のイリアは持ち前のチート魔力と前世での知識を用いてこの苦境から立ち直り、自分を断罪した人間に逆襲できるのか? 困難を力でねじ伏せるパワフル悪役令嬢の物語! ※地学の知識を織り交ぜますが若干正確ではなかったりもしますが多めに見てください… ※ゆるゆる設定ですがファンタジーということでご了承ください… ※小説家になろう様でも掲載しております ※イラストは湶リク様に描いていただきました

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

異世界でのんびり暮らしてみることにしました

松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...