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新しい種

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 朝の六時。
体がだるい感じもなく、気分も爽快。
スッキリした気分で目が覚める。
念の為、プロフィールを確認してみると魔力も体力も全快。
今日も一日、頑張らなきゃね。
気合を入れて起き上がったけど、レイちゃんはまだ眠たいらしく眠そうにむにゃむにゃ言いながら寝返りを打つ。

 しばらくの間、一緒に布団(代わりのタオルとブルーシート)にくるまりつつ、”植物魔法”の練習をする。
四十分もやっていると、頭の中にアナウンスが響いて”植物魔法”の習得を知らせてくれた。
そうだったらいいなーと思っていた通り。”ファーム”や”水魔法”と組み合わせることで、植物の成長を早くすることが出来るらしい。
これは、レイちゃんも喜ぶね!
そう思いつつ、眠っているレイちゃんを確認してみるけど、まだまだ起きる気配はない。
うーん……ちょっとお腹が空いてきたな。
少し悩んだものの、外に食べ物を探しに行くことに決定!
料理はできないけど、食べ物捜しの腕は悪くないみたいだし?
いや、この世界に来る前はそんな特技はなかったから、多分”ファーム”のお陰だね。
食べ物を探すついでに、雪原草も採ってこよう。
緩衝材の材料にもなるし、余ったら背負子やカゴを編んでもいい。

 レイちゃんを起こさないように、ソーっと抜け出して、外の寒さに身を震わせる。
中は、レイちゃんが常に”火魔法”で暖めてくれているから、割と過ごしやすい。
だけど一歩外に出た途端にガッツリと寒さが襲いかかってくる。
体の熱が逃げないように、ビニールのポンチョを着たりと対策はしているけど、とてもじゃないけど間に合わないこの寒さ……!
なんか、耐えられるようになるいい方法、ないかな?
特に厳しいのは靴。
スニーカーだから、雪が滲みてきちゃうんだよね。
出来るだけ早く捜して、さっさと帰ることにしよう。
結局、そのまますぐに食べられるなんて都合の良いものは見つからないまま、あたしはリュックとデータストレージに、昨日と同じような食材を詰め込んで穴に戻る。
ホットベリーは採らなかったけど、要らないよね?
どうやら、オニオンフラワーと違って大量に使う食材でもないみたいだったし……
ちなみに、収穫した雪原草の束を頭からかぶって移動すると、少し暖かい。
他人には見せられない姿だけど、持ち帰れる量も増えていい手だと思うんだよね。
後は、足元を何とかする方法があれば言うことはないんだけど……

 外にいられたのが結局三十分足らずだったのもあって、レイちゃんは相変わらず眠っている。あたしは防寒装備を脱ぐと、リュックから集めてきた食材を取り出して穴の片隅に並べていく。
靴と靴下は脱いで、立て掛けたオイルウッドの先端に引っ掛ける。
後で口に入るものだと思うと、ちょっとためらわないでもないけど、履物がびしょ濡れのままでは後が困るから仕方ないよね。
オイルウッドは、そもそも使うのも皮を剥いた中身だから大丈夫。
……と思いたい。

「何、この穴?」

 思わず呟いたのは、出入り口の横の壁に穴が空いていたせいだ。
あたしがやったんじゃないから、必然的に犯人はレイちゃんなんだけど……
結構大きい穴だ。
これを掘るのに、どれだけ夜更ししたんだろう?
あたしのことは早くに寝かしつけて、自分は夜更しして穴掘りしてたなんて……なんだか釈然としないものを感じつつ、ひっそりと脱穀。
ふと思いついてプロフィールを確認してみると、体力が随分と減っている。
やっぱり、外での採集行為も”ファーム”スキルにカウントされてるっぽい。
体力の残りが40だから、種を四つ作れば上限が上がるかも。
まだレイちゃんが起きる様子もないし、空きっ腹を抱えて起きているよりは夢の中で美味しいご飯を食べるほうがいい。
そうと決めたら、さっさとレイちゃんの横に入って”ファーム”で種作成。
季節は無視していいんだから、食べたいもので、出来るだけたくさん採れそうな野菜がいいんだよね?
あたしは種を四つ作ると、体力切れで気持ちよく気絶して、夢の世界へ旅立った。

作った種
白菜   一個
大根   一個
キャベツ 一個
かぼちゃ 一個
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