150 / 154
エピローグ ESPERANZA -希望-
①
しおりを挟む
──それから、三ヶ月後
「……ん……ふわぁっ……!」
窓から聞こえる海のさざなみに耳を刺激され、俺は目を覚まし、身体を伸ばす。
「優太さん、やっと起きたの?」
「…夜更かしなんかしてないのに…」
「飲みすぎちゃったんじゃない?」
「…あの泡盛、美味しすぎたんだもん…」
目を覚まし、俺の目の前には大好きでやまない一平がニコッと微笑みながら、俺に声を掛けてくれる。優太さんの『さん』だけは今でも抜けないけれど、敬語はいつの間にか無くなっていた。
『もう、絶対に敬語使いまくってやりますからっ!!敬語やめろとか言わせないようにしてやるっ!!』
顔を真っ赤にしては、君があんなに抵抗してきたあの日々が懐かしい。一緒にいる時間が長くなればなる程、これこそが今まで以上の『互いの素』が見えるということなのだろう。
そして、俺たちはこの三ヶ月で沖縄の本島を離れ、ポツンとただずむ小さな島へと渡り、平和な日々を過ごしていた。
彼女や家族からの追っ手も今のところは何も無く、幸せな日々が流れていた。これも大輔さんがあの日、色んな助言をしてくれたからこそ今の全てに繋がっているのだろう。
札幌の家の退去手続きに加え、クローゼットに入れて置いた荷物も送ってくれたし、会社の離職もあの手この手を使っては、遠く離れた場所から沢山の助言をしてくれた。
大輔さんに出会っていなければ、俺たちの道はどんなものになってしまっていたのだろう…自暴自棄になりながらも、あのサウナに行かなければこの恋は、とんでもない方向に進んでいたのかもしれない。
そんな大輔さんに俺たちは、何かを返すことが出来ているのだろうか…それは、遠く離れてしまった大輔さんにしか分からないこと。
「クロ、おはよ」
『ンニャー!』
「クロちゃんも朝ご飯を食べたから、優太さんも早めに朝ご飯を済ませてね?」
リビングに置かれたダイニングテーブルに腰を据え、一平が作ってくれた朝ご飯に口をつける。今までは弁当生活だった俺にとって、一平が作ってくれた味噌汁は、朝から身体によく沁みる。
「この後、お客さんを迎えに行くの忘れてないよね?」
「ああ、忘れるわけねぇよ」
「なら、早く食べて手伝ってね?」
「はいよ、分かっております」
朝ご飯を食べる横でせっせと家事をする君を見ていると、今でも微笑みが零れてしまう。
今まで自分の気持ちを抑えていた君が今はとても楽しそうで、何より今まで以上に輝いて見える。君から時折怒られることもあるけれど、それさえ君の『本当の気持ち』だと思えるからこそ、全てが愛おしくて堪らない。
でも、怒られたからには俺も俺で直さないと…
「ねぇ、優太さん?こんなんでいい?」
「ああ、今日もかっこいいぞ?」
「も、もうっ!ゆ、優太さんも似合ってるもん!あーっ!恥ずかしい!」
食事を済ませ、お客さんを迎えに行くために着替えを済ませただけなのに、この初々しさ。何ヶ月経っても何年経っても、きっと俺たちはこのままなんだろう。
そんなワイワイとした会話を済ませ、クロを優しく抱いた一平と共に、俺たちは仲良く家を後にすることにした。
「……ん……ふわぁっ……!」
窓から聞こえる海のさざなみに耳を刺激され、俺は目を覚まし、身体を伸ばす。
「優太さん、やっと起きたの?」
「…夜更かしなんかしてないのに…」
「飲みすぎちゃったんじゃない?」
「…あの泡盛、美味しすぎたんだもん…」
目を覚まし、俺の目の前には大好きでやまない一平がニコッと微笑みながら、俺に声を掛けてくれる。優太さんの『さん』だけは今でも抜けないけれど、敬語はいつの間にか無くなっていた。
『もう、絶対に敬語使いまくってやりますからっ!!敬語やめろとか言わせないようにしてやるっ!!』
顔を真っ赤にしては、君があんなに抵抗してきたあの日々が懐かしい。一緒にいる時間が長くなればなる程、これこそが今まで以上の『互いの素』が見えるということなのだろう。
そして、俺たちはこの三ヶ月で沖縄の本島を離れ、ポツンとただずむ小さな島へと渡り、平和な日々を過ごしていた。
彼女や家族からの追っ手も今のところは何も無く、幸せな日々が流れていた。これも大輔さんがあの日、色んな助言をしてくれたからこそ今の全てに繋がっているのだろう。
札幌の家の退去手続きに加え、クローゼットに入れて置いた荷物も送ってくれたし、会社の離職もあの手この手を使っては、遠く離れた場所から沢山の助言をしてくれた。
大輔さんに出会っていなければ、俺たちの道はどんなものになってしまっていたのだろう…自暴自棄になりながらも、あのサウナに行かなければこの恋は、とんでもない方向に進んでいたのかもしれない。
そんな大輔さんに俺たちは、何かを返すことが出来ているのだろうか…それは、遠く離れてしまった大輔さんにしか分からないこと。
「クロ、おはよ」
『ンニャー!』
「クロちゃんも朝ご飯を食べたから、優太さんも早めに朝ご飯を済ませてね?」
リビングに置かれたダイニングテーブルに腰を据え、一平が作ってくれた朝ご飯に口をつける。今までは弁当生活だった俺にとって、一平が作ってくれた味噌汁は、朝から身体によく沁みる。
「この後、お客さんを迎えに行くの忘れてないよね?」
「ああ、忘れるわけねぇよ」
「なら、早く食べて手伝ってね?」
「はいよ、分かっております」
朝ご飯を食べる横でせっせと家事をする君を見ていると、今でも微笑みが零れてしまう。
今まで自分の気持ちを抑えていた君が今はとても楽しそうで、何より今まで以上に輝いて見える。君から時折怒られることもあるけれど、それさえ君の『本当の気持ち』だと思えるからこそ、全てが愛おしくて堪らない。
でも、怒られたからには俺も俺で直さないと…
「ねぇ、優太さん?こんなんでいい?」
「ああ、今日もかっこいいぞ?」
「も、もうっ!ゆ、優太さんも似合ってるもん!あーっ!恥ずかしい!」
食事を済ませ、お客さんを迎えに行くために着替えを済ませただけなのに、この初々しさ。何ヶ月経っても何年経っても、きっと俺たちはこのままなんだろう。
そんなワイワイとした会話を済ませ、クロを優しく抱いた一平と共に、俺たちは仲良く家を後にすることにした。
0
お気に入りに追加
120
あなたにおすすめの小説
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
運命なんて残酷なだけ
緋川真望
BL
「この人が本当に運命の番ならいいのに」
オメガである透はアルファの婚約者との結婚を間近に控えたある日、知らない男に襲われてむりやり番(つがい)にされてしまう。汚されたΩは家門の恥だと屋敷を追い出され、婚約も破棄され、透はその事件ですべてを失った。
三年後、母の葬儀にこっそり参加した透は参列者のひとりから強烈なアルファのフェロモンを感じ取る。番にされたオメガは番のフェロモンしか感じ取れないはず。透はその男こそ犯人だと思ってナイフで襲いかかるが、互いに発情してしまい激しく交わってしまう。
男は神崎慶という実業家で、自分は犯人ではないと透に訴える。疑いを消せない透に対して「俺が犯人を捕まえてやる。すべて成し遂げた暁には俺と結婚して欲しい」といきなりプロポーズするのだが……。
透の過去は悲惨ですが、慶がものすごいスパダリなのでそこまでつらい展開は無いはずです。
ちゃんとハッピーエンドになります。
(攻めが黒幕だったとかいう闇BLではありません)
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
森の中の華 (オメガバース、α✕Ω、完結)
Oj
BL
オメガバースBLです。
受けが妊娠しますので、ご注意下さい。
コンセプトは『受けを妊娠させて吐くほど悩む攻め』です。
ちょっとヤンチャなアルファ攻め✕大人しく不憫なオメガ受けです。
アルファ兄弟のどちらが攻めになるかは作中お楽しみいただけたらと思いますが、第一話でわかってしまうと思います。
ハッピーエンドですが、そこまで受けが辛い目に合い続けます。
菊島 華 (きくしま はな) 受
両親がオメガのという珍しい出生。幼い頃から森之宮家で次期当主の妻となるべく育てられる。囲われています。
森之宮 健司 (もりのみや けんじ) 兄
森之宮家時期当主。品行方正、成績優秀。生徒会長をしていて学校内での信頼も厚いです。
森之宮 裕司 (もりのみや ゆうじ) 弟
森之宮家次期当主。兄ができすぎていたり、他にも色々あって腐っています。
健司と裕司は二卵性の双子です。
オメガバースという第二の性別がある世界でのお話です。
男女の他にアルファ、ベータ、オメガと性別があり、オメガは男性でも妊娠が可能です。
アルファとオメガは数が少なく、ほとんどの人がベータです。アルファは能力が高い人間が多く、オメガは妊娠に特化していて誘惑するためのフェロモンを出すため恐れられ卑下されています。
その地方で有名な企業の子息であるアルファの兄弟と、どちらかの妻となるため育てられたオメガの少年のお話です。
この作品では第二の性別は17歳頃を目安に判定されていきます。それまでは検査しても確定されないことが多い、という設定です。
また、第二の性別は親の性別が反映されます。アルファ同士の親からはアルファが、オメガ同士の親からはオメガが生まれます。
独自解釈している設定があります。
第二部にて息子達とその恋人達です。
長男 咲也 (さくや)
次男 伊吹 (いぶき)
三男 開斗 (かいと)
咲也の恋人 朝陽 (あさひ)
伊吹の恋人 幸四郎 (こうしろう)
開斗の恋人 アイ・ミイ
本編完結しています。
今後は短編を更新する予定です。
記憶の欠片
藍白
BL
囚われたまま生きている。記憶の欠片が、夢か過去かわからない思いを運んでくるから、囚われてしまう。そんな啓介は、運命の番に出会う。
過去に縛られた自分を直視したくなくて目を背ける啓介だが、宗弥の想いが伝わるとき、忘れたい記憶の欠片が消えてく。希望が込められた記憶の欠片が生まれるのだから。
輪廻転生。オメガバース。
フジョッシーさん、夏の絵師様アンソロに書いたお話です。
kindleに掲載していた短編になります。今まで掲載していた本文は削除し、kindleに掲載していたものを掲載し直しました。
残酷・暴力・オメガバース描写あります。苦手な方は注意して下さい。
フジョさんの、夏の絵師さんアンソロで書いたお話です。
表紙は 紅さん@xdkzw48
これがおれの運命なら
やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。
※オメガバース。Ωに厳しめの世界。
※性的表現あり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる