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五章 俺と君の狭くも広い道

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 ──辿り着いた新千歳空港
 足を踏み入れた早朝のターミナルは、人気も少なく、普段じゃ考えられない静けさを俺たちは感じていた。

「一平、これ」
「ありがとうございます、ふふっ!優太さん似合ってますよ!」
「そういうお前だって、やっぱ可愛くてかっこいいわ」
「ば、ばかっ!は、恥ずかしいじゃん!早くこんなの外したい!」

 空港内での動き方として大輔さんから提案されていたのは、受付以外では『サングラス』を掛け、出来る限りのカモフラージュをするということだった。

 元々サングラスが好きだった俺は、一平にも似合いそうなサングラスを選び、貸してあげたけれど、爽やかな君にサングラスが似合うのは当然。

 そして、その姿が可愛くもかっこよかったのは言うまでもないのに、君が恥ずかしながら必死に抵抗する姿も愛おしくて堪らない。

「とりあえず、搭乗手続きだけしちゃおうぜ」
「そうですね、クロちゃんは優太さん名義で預けることになってるようなので、同意書とかも問題なさそうですね?」
「ああ、ごめんな?変な名前で搭乗させることになっちまって…」
「優太さんは謝ることをしてないでしょ?二人で新しい道を歩めるなら、これ以上のことはないんですから」

 縛られるものも無くなり『本当の気持ち』で前に進もうとする微笑ましくも素直な君に「ああ、そうだな」と俺も微笑み返し、俺たちは搭乗手続きを済ませることにした。

 ◇ ◇

「じゃあクロ、また沖縄でな?」
『ニャーン…』
「そりゃ寂しいし怖いよね…あ、そうだっ!クロちゃん、これを持っていって?」

 そう言い放った一平は、カバンから君の香りが染み込んだハンカチを取り出し、クロの入るゲージへと優しく忍ばせてくれた。

「これで、僕とクロちゃんは沖縄までずーっと一緒だよ?」
『ニャ…!ニャニャーン♪』
「ははっ!クロ、良かったな?そして、お前ってやつは本当にこいつの事が好きなんだな!」
『ニャーン♪』

 俺はクロに向かって『一平』という名前を吐き出せず『こいつ』としか言えなかった。何故なら周りからすると俺の隣にいるのは、一平であり『一平ではない』のだから。

「では、東雲様、お預かり致しますね?」
「はい、よろしくお願いします」
「クロちゃん、また後でね!」
『ニャーン!』

 クロへひと時の別れを告げ、その後、俺たちも怪しまれることはなく、沖縄へ向かう搭乗手続きを終わらせ、保安検査場を潜り抜けては、出発ゲート内で今か今かとフライトを待ち侘びていた。
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