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七章 初夜、君という香り

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「ふぅ…ご馳走様でした」
「お腹いっぱいですね!」
「ああ、最高に美味しかった」

 二人きりの楽しい食事も終わりを迎え、口もお腹も、そして心も満たされた俺たち。

「僕、片付けますね?」
「いや、俺がやる」
「ええっ?優太さんは、運転でお疲れじゃないですか」
「んなこと言ったら一平は、ご飯支度で疲れただろ?」

 どっちがやるだので互いに譲り合わず、話は平行線のまま辿るのかと思っていたけれど、先を読む君は、俺に可愛い提案をしてくれた。

「じゃあ、一緒にやりますか?」
「それもそうだな、その方が早く終わるもんな」
「ですねっ!じゃあ、二人で片付けましょう」

 一平からの提案に俺たちは腰を上げ、食器をシンクへと運んでいき、二人でキッチンに並んで食後の片付けを始めていった。

「俺が洗うから、一平は皿を拭いてくれるか?」
「わかりました、食器を拭くのは、こ…」
「これ…」

 棚からぶら下げてある布へ互いに手を伸ばし、俺たちの手と手が重なり合う。そして、触れ合った瞬間、俺たちは咄嗟に手を引いてしまった。

「ご、ごめんなさい」
「あ、謝ることねぇだろ」
「で、ですよねっ?」
「ただ、ドキッとしたけどな…」
「っ!ぼ、僕もです…」

 互いに頬がほんのり赤くなり、俺は一平の顔を直視することが出来ず、髪の毛をわしゃわしゃとしてしまっていたけれど、これでは片付けが進まらない。

「…とりあえず、片付けようぜ」
「は、はいっ、終わらせちゃいましょう」

 いけない恋なのに、この初々しさと甘酸っぱさ。君から放たれる色んな仕草や色んな表情に俺の心は何度もやられてしまうけれど、この好きという気持ちが止められないのだから、やられてしまってもいいんだと思ってしまうんだ。

 ◇ ◇

「うっし!終わったな」
「二人でやると、やっぱり早いですね!」

 俺が洗った食器の水分を手際よく拭き取り、元の位置へと戻してくれる君。その間も『これはここでしたよね?』と微笑みながら俺に問い、片付けてくれていた君の姿も、俺からすると微笑ましい。

「片付けも終わったし、俺らもシャワーでも入って、疲れを癒すか」
「うん、そうですね!…あっ」
「ん?一平、どうした?」
「い、いえっ!なんでもないですよ?」

 俺の提案に何故か動揺を隠しきれていない君。俺はなにか悪いことでも言ってしまったのだろうかと首を傾げてしまったけれど、もっと頭を柔軟に働かせろと気付くのは、もう少し先のことだったんだ。
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