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六章 君と俺だけの甘い空間

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「ほ、ほら、優太さん、他のも食べてみてくださいよ!」
「そうだな、なら…これ…いってみるかっ!」

 俺が手を伸ばしたのは、工夫を凝らしてくれた焼きカプレーゼ。とてつもなく美味しそうに見えるのに、やっぱりトマトが土台って言うのが食べても大丈夫なのだろうかと不安な気持ちにもなった。

「…」
「うわぁ…手に取ったけど、やっぱりトマトだよぉ…って顔してますね?」
「ぐぐぅっ…ああ、その通りだ」
「僕を信じて、パクっといっちゃってみてください。きっと優太さんの口にも合うはずですから」

 自信満々にそう伝えてくれる君の笑顔を信じて、俺は焼きカプレーゼを口へと運んでみることにした。

「…ぱくっ…んんっ…んっ!?」
「ど、どうですか…?」
「こ、これほんとにトマトなのか…?」
「はい、優太さんが嫌いなトマトですよ?」
「トマトなのにトマトの青臭さを感じないし、ピザみたいな感じ…そして、ほろっと甘くてとろける」
「口に…合いましたか?」
「ものすごく美味しい。トマトってこんなにも美味しくなるんだな!」
「わぁっ!気に入ってもらえて良かったです!」

 嫌いなトマトがひと手間かけるだけで、こんなに美味しくなるだなんて思ってもみなかった。そして、この焼きカプレーゼは白ワインにもよく合うらしい。

「うん、白ワインとも合いますね!」
「ああ、ずっと口の中が幸せだ」
「…喜んでもらえて良かった…」

 君が俺の為にと愛をこめてくれた素敵な料理たち。そして、俺の喜ぶ顔を見て、君は隣で微笑んでくれている。ああ、本当に幸せだ。

「一平、本当にありがとな」
「…っ!は、はいっ…!」
「ふふっ!お前の頬っぺたトマトみたいだな」
「ゆ、優太さんが悪いんですっ!」
「はぁ?…ふふっ!今日はそれでもいいよ」

 隣で微笑む君が可愛くて仕方がない。ありがとうの意を込めて、君の頭をポンッと撫でてあげただけなのに、君の頬はトマトのようになっていたから。

「も、もうっ!…で、でも嫌いじゃないです」
「ん?何がだよ」
「頭…撫でられるの…き、嫌いじゃない…」
「そういう素直な一平が好きだ」
「もう少し、撫でて下さい…」
「ああ、分かったよ?」

 幸せだ。二人だけのこの空間で、君とこんなに甘い時間を過ごせるだなんて夢にまで思っていなかったから。

 でも、この幸せな時間もいずれ終わりを迎えなければ行けない日が来るのかもしれない。俺たちの関係は、そういう関係だということを互いに忘れてはいないから。

 それでも今は、この幸せだけを二人で噛み締めていきたい。君と笑い合えるこの幸せだけに包まれていたいと心が強く、願っているのだから。
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