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六章 君と俺だけの甘い空間

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「うおっ!?この白ワインめっちゃ美味ぇ!」
「辛口ですけど、フルーティーさがあるのがこの白ワインですね!グラタンにも、すごくマッチするワインなんですよ?」
「へぇっ…ってか一平さ、あんま飲まないのに酒に詳しいのなー?」
「もう、嫌ってほど接待に付き合わされてますからねぇ…」

 あまりお酒の種類とかを気にせず、口に合うだけの物を選んでいた俺とは逆に、色んな付き合いから色んなものを会得している一平。

 そして、接待も俺とは次元の違うものだ。社長レベルの人との接待だもの、そりゃ俺が手に届かないようなものだって知っている。それが俺の隣にいる君ということだ。

「それでも、すげぇことだよ」
「ええっ?そうですか?」
「ははっ!いつかその経験も財産になる時が来るってことだよ?さてさて、一平の手料理を頂くとするかなって!」
「ふふっ!じゃあ、グラタンを取り分けますね?」

 その言葉とともに、耐熱皿からグラタンを取り皿へと取り分けてくれる君。そして、取り分けてくれる君の横顔は。楽しそうな顔で俺のためにと尽くしてくれている。

 君のその顔を俺は忘れない。
 いや、もう忘れたくない。

「はいっ!どうぞ!」
「おおっ!めっちゃいい香り!なぁ、一平?」
「はい、なんですか?」
「…いただきます」
「うん、食べてみてください!」

 作ってくれた人には敬意を払ってちゃんと挨拶をしなければならない。それが、自分の好きな人が作ってくれたものなら尚更だ。君が俺の為に一生懸命、愛を込めて作ってくれたのだから。

「…うっし!…パクっ…!」
「…ど、どう…?お、美味しいですか…?」
「んんんっー!!めっひゃ、ふんめぇ!!」
「ははっ!嬉しいのに、ほんっと可愛い!」

 あまりの美味しさに口に入ったまま、俺は目をキラキラに光らせて、一平を見つめていた。

 一平のグラタンは、程よいクリーミーさ、そして中に入る具が何一つ喧嘩をしていない。クリーミーなソースからエビのエキスやしめじ、その他の野菜の旨みが、何度も何度も俺の口の中を楽しませてくれる。

「可愛くてもいい、こんなに美味いグラタン、人生で初めて食べた」
「ええっ!?それは言い過ぎじゃ…」
「ううん、本当に、パクっ…パクっ…う~ん、うんめぇ…」
「ふふっ!口に合ったのなら僕も嬉しいです!」

 口の中が幸せすぎてたまらない。
 こんなに美味しくて、愛のこもった料理を口にしたこと自体久しぶり過ぎるし、その幸せを運んでくれたのが君だからこそ、より美味しさが増していく。

「でも、そんなに美味しいって言われると…ちょっと恥ずかしいですね」
「だってさ、うめぇんだもん、ほら、一平?」
「…えっ…!?」
「ほらっ、口開けろ」
「ふぇえっ…!?」

 俺は昼間にやられたアーンのお返しにと、スプーンにグラタンを一口分乗せ、一平へとかましてやったんだ。

 そんな俺の行為に戸惑う君の顔。こんな顔をどれだけの人が見たことがあるのだろうと思う反面、俺にはそんな顔も、君は見せてくれるんだね?

「嫌なのか?」
「い、嫌じゃないけど…」
「ないけど?」
「…も、もうっ!…パクっ…!!」
「ははっ!なっ?美味いだろ?」
「うん…わ、我ながら、美味しく出来ました…」

 俺からの行為に顔を赤らめる君。そして、モグモグと口を動かし、美味しいくせにどこか素直じゃない君のことが、可愛くて愛おしいのは言うまでもないことなのだけれど。
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