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三章 様々な形、様々な想い

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「腕、痛くないか?」
「…大丈夫です…本当にごめんなさい…」

 休憩室に置いてあるバスタオルを腰から巻き、俺と見知らぬ彼は隣同士で座り込んでいた。

「もし良ければ、俺に話してみないか?」

 どうして、見知らぬ誰かに俺の気持ちを話さなければならない…ほっといて欲しい、そっとしておいて欲しいと、今まで身体だけの関係を持つ相手に自分の何かを話そうだなんて考えたこともなかった。

 なのに、どうしてなのだろう…今はどうしようもなく辛くて、一人では解決出来そうにないこの想いを誰かに聞いて欲しい、支えて欲しいと俺は願っていたのかもしれない。

 ただ、この恋は実ってはいけないもの。
 叶ってはいけない、願ってはいけないもの。
 そして、はたから見たら普通の恋ではないこと。

 それでも、俺の心は限界だった。

「引かれると思います…それでも、聞いてくれますか?」
「ああ、聞くよ?だから、吐き出してごらん?」

 俺は、一平に対するこの想いや今までの出来事を止めどなく流れる涙と共に全てを吐き出して言ったんだ。

 ◇ ◇

「…そういう事だったんだね…」
「大切な人がいる人を好きになってしまっただなんて…ほんと、どうにかしてますよね…」

 身体だけと思って付き合い始めたはずの一平に恋をして、その結末が好きな人には大切な人がいて…それでも好きだという気持ちが消えない自分もどうかしていると感じてしまって…

 好きなのに好きと言えない。
 もっと傍にいたいのに、それは叶わない。

 そんな時だった。徐に彼は自身のロッカールームからタバコを取り出し、火を灯し始めた。

「ほら、吸いな?」
「…なんで吸えるって分かったんですか…?」
「少しだけタバコの匂いがしたから」

 その言葉とともに俺は彼からタバコを一本頂戴し口に咥え、優しく火を灯してくれたその後に、彼はタバコの煙を吐き出しながら、そっと言葉を紡いでくれた。

「君の想い、俺は変だと思わないよ?」
「…えっ…?」
「君が涙を流すほど彼のことが好きで仕方がないのに届かないと想うほど切なくなってしまう」
「…はいっ…」
「…それは俺も同じ想いだから…」

 隣に座る彼は俺の想いを受け止めてくれて、この後自らの想いを紡いでくれた時、俺のまとまりきらなかった想いが少しずつまとまりを見せていくことになったんだ。
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