上 下
51 / 81
神様のいたずら

4

しおりを挟む
 ──気付けば外も暗くなり、クリスマスツリーもライトアップされ、より一層綺麗な輝きを放っていた。

 僕たちも帰る前に見に行こうと決めていて、クリスマスツリーの綺麗な輝きを二人で目に焼き付けていたんだ。

「ほんっと、綺麗だねっ…」

「ああ、すごく綺麗だ…」

 クリスマスツリーの前で綺麗な輝きに見惚れていたその時…大和は徐にマフラーを首から外し、僕の首元へ巻き付けてくれたんだ。

「や、大和…?」

「…お前さ、俺の匂い…好きだろ?」

 えっ…ど、どうしてそれが分かったの…!?
 Ωの習性で恋をしたαの匂いに包まれたくなることがあるとは聞いていたけれど、僕はβの大和の匂いにずっと包まれていた…

 それは、紛れもなく大好きな人の匂いが好きで取っていた行為だ。

 で、でもどうして…?
 大和は前から匂いの事、気付いていたの…?
 もしかして、僕が大和のことを好きだって言うことも大和は知っていたの…?

 そんな事よりも恥ずかしい行為をしていた事がバレた方が倍に恥ずかしくて、僕は顔が真っ赤になってしまったんだ。

「大和…ぼ、僕っ…」

「それともう一つ…お前のものは俺のものなら…俺も俺のものをお前にあげたいって思ったんだよ?」

 大和のものを僕にあげたい…
 その言葉が紡がれた時、僕の鼓動は大きく大きく脈を打ち始めた…

 今まで、僕のものは全て大和のものだった…
 その大和が今度は僕に自分の大切なものを渡そうとしてくれているんだ…

 そして、僕は今…大和の大切なものに包まれている…それを考えるだけで嬉しくて堪らない、それだけで堪らないのに…

「…大和…」

「…裕翔…俺、お前のこと…」

 その時だった…
 ドクンッ!!ドクンッ!!

 僕の鼓動が急に早くなり、身体が急激に熱くなりだしたんだ。

 今までに感じたことが無い程、身体中を血が早く巡り、急に息も上がり始めていて、少しずつフェロモンが漏れ出しているのもよく分かる…

 嘘だ…こんな時にまた、発情期ヒート不順が僕の身体を襲うだなんて…

 これはこれはかなりマズイ…
 大和にバレないとしても、今日はクリスマスイブ…そして、ここは大型ショッピングモールだ…

 どこにαがいるかなんて僕には分からない…
 ただ、僕のフェロモンにαが反応してしまうと、せっかくの聖なる夜が台無しになる…

 そんなことを考えれば考えるほど、僕は強い恐怖心に駆られてしまったんだ…

 怖い……怖い…っ!!

「お、おい…裕翔…大丈夫かっ…」

「大和…ごめん、僕、今日は先に帰る!」

 どうしていいのか分からなくなってしまった僕は、咄嗟に大和へそう吐き出し、走り出そうとしたその時…

「おい、待てよ…!」

 僕は大和に腕を捕まれ、止められてしまった。
「離して!」と振り切ろうとするけれど、大和は僕の腕を離してくれない。

 大和お願い…離して…
 このままじゃ全てを失ってしまう…
 大和のことも失ってしまう…
 お願い…大和、お願いっ…!

 そして、大和が僕を引き寄せようとした瞬間…振り返る僕に大和は言葉を失っていた…

 僕から溢れる小さな涙の粒が振り返った反動で大和の頬に飛び散り刺激する…

 それと共に僕は、とてつもなく悲しく…切ない感情が表情に現れてしまっていたんだ…

 言葉を失った大和は、僕の腕からスっと腕を離してくれて…僕はそのまま大和を置いてなり振り構わず聖夜を走り抜けてしまった…

 どうして…どうして今なんだよ…!!
 もう…もう、分かんないよっ!!

 勢いのあまり、首にかけられた大和のマフラーは無残にも地面にひらりと落ちていき、大和の頬に慕った僕の冷たい涙と共に、ホワイトクリスマスが聖なる夜を彩っていったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 まったり書いていきます。 2024.05.14 閲覧ありがとうございます。 午後4時に更新します。 よろしくお願いします。 栞、お気に入り嬉しいです。 いつもありがとうございます。 2024.05.29 閲覧ありがとうございます。 m(_ _)m 明日のおまけで完結します。 反応ありがとうございます。 とても嬉しいです。 明後日より新作が始まります。 良かったら覗いてみてください。 (^O^)

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

これがおれの運命なら

やなぎ怜
BL
才能と美貌を兼ね備えたあからさまなαであるクラスメイトの高宮祐一(たかみや・ゆういち)は、実は立花透(たちばな・とおる)の遠い親戚に当たる。ただし、透の父親は本家とは絶縁されている。巻き返しを図る透の父親はわざわざ息子を祐一と同じ高校へと進学させた。その真意はΩの息子に本家の後継ぎたる祐一の子を孕ませるため。透は父親の希望通りに進学しながらも、「急いては怪しまれる」と誤魔化しながら、その実、祐一には最低限の接触しかせず高校生活を送っていた。けれども祐一に興味を持たれてしまい……。 ※オメガバース。Ωに厳しめの世界。 ※性的表現あり。

槇村焔
BL
□■□あらすじ■□■ 僕の好きな人は、まるで狼みたいな人だった。 彼の名前は、館野仁。 彼は僕の身体のことを知っていても、偏見なく平等に扱ってくれる誰にでも公平で切実な人だった。 そんな彼は、僕の姉・まりんと付き合っていた。 ある日、まりんは仁さんを振って、新しい男の元へと出て行ってしまった。 捨てられて、自暴自棄になった仁さんは、身体を壊し入院してしまった。 このままでは駄目だと思った僕は、仁さんの家に乗り込み…。 Bloveさんのお題で、妊娠がありまして、謎のお題消化したい病に陥り、執筆しました。 今回は攻めは堅物。 受けはふたなりです。 妊娠要素有。苦手な方はご注意を 攻めの本命以外の絡みあり 50話完結。 完結しているので、完結まで毎日更新 ※当初は包容攻め予定でしたがあまり包容攻めっぽさはないかもしれません。 溺愛はしているはず。 堅物×一途ふたなり。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

無自覚両片想いの鈍感アイドルが、ラブラブになるまでの話

タタミ
BL
アイドルグループ・ORCAに属する一原優成はある日、リーダーの藤守高嶺から衝撃的な指摘を受ける。 「優成、お前明樹のこと好きだろ」 高嶺曰く、優成は同じグループの中城明樹に恋をしているらしい。 メンバー全員に指摘されても到底受け入れられない優成だったが、ひょんなことから明樹とキスしたことでドキドキが止まらなくなり──!?

その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました

海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。 しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。 偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。 御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。 これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。 【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】 【続編も8/17完結しました。】 「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785 ↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。

処理中です...