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待たせてごめんな…
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──そして…いよいよ卒業式当日
今日も朝から変わらず、髪のセットをしっかりとして、ハリネズミのコンディションも絶好調な様子だった。
ずっと預かっていた裕翔の黒縁眼鏡もそっと目に掛け、俺は緑色のネクタイをキュッとしっかり結び、ダイニングルームへ向かっていったんだ。
ダイニングルームには父さんと母さんが先に食事を始めていて、俺も「おはよう」の一声と共に席に座ろうとしていたその時だった…
父さんと母さんはピタッと箸を止め、俺に目線が集まった。
な、なんだ…
お、俺の顔をなにか付いてるのか…?
そんな中で父さんと母さんは、俺に向けて優しく、そして温かい言葉を送ってくれたんだ。
「大和…強くなったな…卒業おめでとう」
「大和…この一年、楽しかった?あなたは本当に…ううん、卒業おめでとうっ!」
にこやかに『おめでとう』と言ってくれる父さんを尻に、今にも涙を流しそうな母さん。
そうだ…一年前までこんなに楽しくて、時に辛くて…それでも幸せな日々を過ごせるだなんて、俺自身も考えていなかった。
それを陰でずっと見守ってくれていたのは父さんと母さんだ。
感謝してもしきれない…
そう思わせてくれたのも裕翔、そして駿のおかげなんだ…
「ありがとう…俺、この一年色々あったけれど人生で一番楽しいと思える学生生活だったよ…父さん、母さん…本当にここまで支えてくれて…ありがとうございました…!」
俺は感謝の意を込めて、恥ずかしさも混じりながらも父さんと母さんに頭を下げたんだ。
その姿に母さんは、堪えていた涙を流し…父さんは俺に「頭をあげなさい」と一声掛けてくれて…頭をそっと上げた俺に父さんは続けた。
「仕事の都合で卒業式に参加してやれなくて、すまないな…」
「大和、私も行ってあげられないけれど…裕翔くんと駿くんがいてくれるから大丈夫よね…?」
「ああ、大丈夫だよ…むしろ、父さんと母さんにお願いがあって…」
そう…俺は今日、ある人を迎えに行きたい。
裕翔…?お前の事を迎えに行きたいんだ…
「お願い…?」
「大和、どんなお願いなのかしら?」
「…今日卒業式が終わったら、あるところで一緒に過ごしたいヤツがいるんだ…」
ちょっと照れながら、せっかくセットしたハリネズミをわしゃわしゃとさせながら話す俺に、父さんも母さんは顔を見合わせ、クスクスと笑っているのが俺の耳を刺激する。
「大和、素直に言っちゃいなさいよ…!裕翔くんと一緒に過ごしたいんでしょ?」
「…んなっ!!か、母さん…!」
「大和、行ってやりなさい…そして、時が来たら、私と母さんにちゃんと紹介してくれ」
「…と、父さんまで…!?」
まだ両親に何も話してないのに…
親は子のことを全てお見通しってこういう事なのか…
それと同時にずっとずっと、俺の事を見守り続けていてくれている、ということなのかもしれない。
「…ゆ、裕翔と過ごすのもそうだけど…俺、あいつのことを迎えに行きたいんだ…」
「お前のその覚悟が今後、絶対にブレることが無いのであれば私は止めない…まぁ、今のお前らなら大丈夫だろう…ちゃんと裕翔くんを迎えに行きなさい」
「うんうん!裕翔くんと大和ならきっと大丈夫よ!ちゃんとあなたが裕翔くんを受け止めてあげるのよ?」
「ありがとう…父さん、母さん…」
父さんと母さんは俺の思いを優しく受け止めてくれたんだ。
そう、とうとう裕翔を俺の元へ迎えに行く日が来たということだ…
父さんと母さんの温かい言葉を胸に、俺は少し肩を震わせながらも三人で朝食を済ませ…
そして…
「じゃあ、行ってきます…!」
その一言を父さんと母さんに伝え、外に出た俺は春の心地のいい陽気に包まれながら、高校生活最後の登校を一歩一歩噛み締め、いつもの道を進んでいったんだ。
今日も朝から変わらず、髪のセットをしっかりとして、ハリネズミのコンディションも絶好調な様子だった。
ずっと預かっていた裕翔の黒縁眼鏡もそっと目に掛け、俺は緑色のネクタイをキュッとしっかり結び、ダイニングルームへ向かっていったんだ。
ダイニングルームには父さんと母さんが先に食事を始めていて、俺も「おはよう」の一声と共に席に座ろうとしていたその時だった…
父さんと母さんはピタッと箸を止め、俺に目線が集まった。
な、なんだ…
お、俺の顔をなにか付いてるのか…?
そんな中で父さんと母さんは、俺に向けて優しく、そして温かい言葉を送ってくれたんだ。
「大和…強くなったな…卒業おめでとう」
「大和…この一年、楽しかった?あなたは本当に…ううん、卒業おめでとうっ!」
にこやかに『おめでとう』と言ってくれる父さんを尻に、今にも涙を流しそうな母さん。
そうだ…一年前までこんなに楽しくて、時に辛くて…それでも幸せな日々を過ごせるだなんて、俺自身も考えていなかった。
それを陰でずっと見守ってくれていたのは父さんと母さんだ。
感謝してもしきれない…
そう思わせてくれたのも裕翔、そして駿のおかげなんだ…
「ありがとう…俺、この一年色々あったけれど人生で一番楽しいと思える学生生活だったよ…父さん、母さん…本当にここまで支えてくれて…ありがとうございました…!」
俺は感謝の意を込めて、恥ずかしさも混じりながらも父さんと母さんに頭を下げたんだ。
その姿に母さんは、堪えていた涙を流し…父さんは俺に「頭をあげなさい」と一声掛けてくれて…頭をそっと上げた俺に父さんは続けた。
「仕事の都合で卒業式に参加してやれなくて、すまないな…」
「大和、私も行ってあげられないけれど…裕翔くんと駿くんがいてくれるから大丈夫よね…?」
「ああ、大丈夫だよ…むしろ、父さんと母さんにお願いがあって…」
そう…俺は今日、ある人を迎えに行きたい。
裕翔…?お前の事を迎えに行きたいんだ…
「お願い…?」
「大和、どんなお願いなのかしら?」
「…今日卒業式が終わったら、あるところで一緒に過ごしたいヤツがいるんだ…」
ちょっと照れながら、せっかくセットしたハリネズミをわしゃわしゃとさせながら話す俺に、父さんも母さんは顔を見合わせ、クスクスと笑っているのが俺の耳を刺激する。
「大和、素直に言っちゃいなさいよ…!裕翔くんと一緒に過ごしたいんでしょ?」
「…んなっ!!か、母さん…!」
「大和、行ってやりなさい…そして、時が来たら、私と母さんにちゃんと紹介してくれ」
「…と、父さんまで…!?」
まだ両親に何も話してないのに…
親は子のことを全てお見通しってこういう事なのか…
それと同時にずっとずっと、俺の事を見守り続けていてくれている、ということなのかもしれない。
「…ゆ、裕翔と過ごすのもそうだけど…俺、あいつのことを迎えに行きたいんだ…」
「お前のその覚悟が今後、絶対にブレることが無いのであれば私は止めない…まぁ、今のお前らなら大丈夫だろう…ちゃんと裕翔くんを迎えに行きなさい」
「うんうん!裕翔くんと大和ならきっと大丈夫よ!ちゃんとあなたが裕翔くんを受け止めてあげるのよ?」
「ありがとう…父さん、母さん…」
父さんと母さんは俺の思いを優しく受け止めてくれたんだ。
そう、とうとう裕翔を俺の元へ迎えに行く日が来たということだ…
父さんと母さんの温かい言葉を胸に、俺は少し肩を震わせながらも三人で朝食を済ませ…
そして…
「じゃあ、行ってきます…!」
その一言を父さんと母さんに伝え、外に出た俺は春の心地のいい陽気に包まれながら、高校生活最後の登校を一歩一歩噛み締め、いつもの道を進んでいったんだ。
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