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隠し事への葛藤、神様のいたずら

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 ──そして二学期も最終日
 明日からは短めの冬休みになり、それと同時に明日はクリスマスイブ。

 とうとう、裕翔と過ごす聖なる一日が目の前まで来ていたんだ。

 それを考えただけで俺は嬉しくて堪らない反面、いよいよ気持ちを伝える時が来たんだと…どこか気持ちが落ち着かなく、一日一日が短くも長く感じられた日もあったんだ。

「年明け後、また笑顔でここで会おうぜ!」

「もちろんっ!大和も駿もいい年を越してね?」

「ああ、裕翔もな?駿、正月食いすぎるなよ?」

 そんな他愛もない会話を俺たちは交わし、ひと時の別れを告げ合い、そして待ちに待ったクリスマスイブ当日がやってきた。

 好きな人と過ごす初めてのクリスマスイブ。
 俺は裕翔と一緒に過ごせる事が嬉しい反面、ちゃんと思いを伝えられるのか不安で、昨日の夜はタコちゃん人形に向かって…

『お前の事が…好きだ…』
『お、俺と…付き合ってくれ…』

 なんて何度も練習していただなんて…
 誰にもいえねぇよ…恥ずかしい…!!

 そして、そんな練習をしては気持ちが落ち着かず、昨日はあまり眠れなかったんだ。

 そんなドキドキと共に、俺は寒さに負けないようにしっかりと匂いが染み付いたシルク百%のマフラーを首に巻き、忘れずに黒縁眼鏡も掛け、ハリネズミもご機嫌な状態で家を飛び出したんだ。

 ──俺が決めた待ち合わせ場所は、裕翔の街のシンボルでもある大型ショッピングモールだ。

 ショッピングモールの外には、大きな大きなクリスマスツリーが毎年展示されていて、恋人や友達の待ち合わせ場所として有名だったんだ。

 まだ恋人じゃないけど、思いを伝えるには最高な場所だと俺は思っていて…そして、いつか好きなやつと見に来たいとも思っていた場所だったから…

 今日、俺はお前に思いを伝えるよ…
 お前からの答えがどうなるのか…
 そんな事より…俺は俺らしくお前の傍にいたい…

 今日は一緒に楽しもうな、裕翔…?

 ◇ ◇

 待ち合わせ場所へ先に着いていた俺は、クリスマスツリーを見上げ、色んな思いをまとめながら裕翔が来るのを待っていたんだ。

「大和っ!お待たせ!」

 待っていた俺の目に飛び込んできたのは、ちっちゃくて大きくて…寒さになんか負けない心をポカポカと振り撒く裕翔の姿。

 裕翔の身体にはちょっと大きいベージュのコート姿もまた可愛い。

 そして、寒さからなのか鼻先をちょこんと赤くして…でも、でもな?

「裕翔、遅いぞ」

「…えっ!?あ、ありゃ、五分遅刻…」

 俺はお前が来るのが楽しみすぎて、もっと前から来てた。

 待たせた罰として俺は裕翔のおでこをコツンッ!と指で優しく突いてやったんだ。

「いてっ!」っとおでこを撫でる裕翔を見て、俺も自然と笑顔が零れちまって…俺はお前とこういう時間をこれからもずっと大切にしていきたいんだ。

「ほら、いくぞ!」

「…おわっ!?」

 俺は裕翔の手をギュッと握りしめ、裕翔も俺の手を握り返してくれたまま、俺たちは大型ショッピングモールの中へと駆け出していったんだ。

 二人で服を見に行き「これなんかどうだ?」と似合う似合わないを言い合ったり…

 ゲームセンターのUFOキャッチャーで見つけた、可愛いタコちゃんのキーホルダーを絶対に取ると、俺は馬鹿みたいに熱を燃やしたけれど…どうしても二つ取りたくて…

 そして、なんとかタコちゃんを二つ取る事が出来た俺は、一つを裕翔にあげたんだ。

 裕翔と二人だけのお揃いのもの。
【親友の証】以外で二人だけの特別なものを裕翔と一緒に持っていたいと俺は考えていて…

「これでお揃いだなっ?」と微笑む俺に、裕翔は頬を赤くしながら嬉しそうに「ありがとう」と微笑み返してくれて…

 小腹が空いてきたらフードコートに行って、お互いに甘いものが食べたいからとケーキの変わりに二人でパフェを頼んでみたりして…

 裕翔のバナナチョコパフェのバナナをひょいっ!と奪い取って『お前のものは俺のもの』といつものセリフを吐き出す俺に対して、お返しにと裕翔は俺のいちごパフェのいちごを奪い取ってきて…

「コノヤロウ!」と裕翔に返したけれど、お互いすぐに笑顔へ変わってしまう。

 二人で過ごす時間が楽しすぎて…
 身体が溶けてしまいそうな程、幸せすぎて…
 そんな時間はいつもあっという間に過ぎてしまう。

 俺は…ちゃんとお前に思いを伝えたい。
 もっともっと傍にいたい…
 もっともっと…裕翔と笑い合いたい…
 ずっと、俺の傍にいて欲しいんだ…
 
 それだけを願っていたのに…

 神様はそんな俺たちの幸せを、許してはくれなかったんだ。
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