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君が好き…これが言えないのに…

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 ──その日のお昼
 いつも通り俺たちは、仲良くパンを頬張り、楽しい時間を過ごしていたその時、裕翔が徐に言葉を紡いだんだ。

「ねぇ、二人は高校を卒業したらどうする予定なの?進学??それとも就職?」

「ああっ?そらぁ就職っ!もう勉強なんかしたくねぇ~もんっ!」

 裕翔の問いに駿からは即答が返ってきて…
 まぁ…駿らしいと言えば駿らしいか。

「でもさ、実は俺、ちゃんとやりたいこともあるんだ…やっぱバスケ大好きなんだよな…だからどっかで、バスケのコーチとか出来たらいいなぁ…とか思っちゃったりしてさっ!」

 駿には駿の夢があって、駿なりにしっかりと道筋を立て、歩み出そうとしているようだった。

 それに比べて俺なんか…

「大和は?高校卒業したらどうするの?」

「俺か?俺は、まだ悩んでるところだな…」

「まじかよっ!お前の頭ならどこでも大学行けるだろ~よっ!」

「行けないこともないだろうけど…まぁ俺にも色々あるんだよ……で?裕翔はどうするんだ?」

 俺は自分の答えを誤魔化すかのように、裕翔へと質問を切り替えちまったんだ。

 大きな宿命が待っているが故に、不安が次第に大きくなりすぎて…色んな覚悟が決まってなかった俺は、二人にちゃんとした答えを話す事が出来なかったんだ。

「僕は今のバイトを少し続けてから考えようと思ってるんだ…まだね、やりたいことが見つからなくて…」

「はぁ?裕翔、お前もそんな感じなんかよぉ!」

「やりたい事も今は見つからないのに、無理に働いたり、大学に行こうとも思えなくてさ…今のバイトすごく楽しいし、いずれやりたい事が見つかると思っていたからさ!」

 何故だろう…
 俺は裕翔の返答に俺は違和感を感じたんだ。

 やりたい事が見つからない…?
 待てよ…?違う…何かが違う気がする…
 もしかして…わざと見つけようとしてない…?

 俺は‪α‬、駿はβ
 そして、裕翔はΩ…
 ま、まさか…!!

 Ωの生涯は俺たちより遥かに短い…
 フェロモンを抑えるために薬を使っている分、寿命が縮まってしまうと俺らは小さい頃からそう教わってきていた。

 薬の副作用も人それぞれと聞いていたけれど…この間の目眩は、薬の副作用だったんだ。

 そして、生涯が短い事を一番よく分かっているのは、裕翔本人な訳だ。

 だから、将来の事を決めようともしなかったのか…?

 ただ守ってやりたい、笑顔を守りたいだけじゃ本当に裕翔を守る事にはならないんだ…

 じゃあ俺は、どうすればいい…?
 
 その答えは俺が一番よく知っているはず…
 ただ、まだそこに辿り着きすら出来ていないし、思いも繋がっていない。

 結局、俺は裕翔に何もしてやれていない…
 ごめんな…こんな自分が憎いし、情けないよ…

 なんだか、しんみりとしたムードになっちまっていたけれど、その場を和ませてくれるのがいつもナイスパスをくれる駿なんだ。
 
「みんなそれぞれだなぁっ!!まぁさ!残り少ないこの時間を、これからも楽しんでいこうぜっ?」

 駿の明るい一言に俺らは笑顔を返し、今日も楽しく一日が過ぎていったけれど…

 俺は本当に…このままでいいのか?
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