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お前のものは俺のもの

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 俺の問いかけにそっと口を開き始める山下。

「僕さ、高校に入るまでずっと一人だったんだ…そう、友達もいなくて、毎日山際くんのように空を見ていた…」

「ああ、自由になりたいな…空に浮かぶ雲のように、風の吹くままに自由に動き回りたいな…そんなことを考えていたんだ…」

 おいおい…嘘だろ…嘘…だよな…?

「それでも僕は、高校に入ってから一人暮らしを始めて、バイトも始めて…気付いたら僕の隣に座る駿が親友になってくれて…僕はもう一人じゃない…誰かが傍にいてくれる…それだけが何より幸せだって感じるようになった…」

「そして、今年は高校生活も最後…そんな時、前の僕と同じように空を見上げて、ツンケンとしてる君が僕の前に座っていて…僕、なんでか放っておけなくなったんだよ…」

 や、山下も俺と同じように一人だった…?
 こんなに素直で優しくて、温かい心を持ったやつが…?嘘だ、嘘だろ…?

 でも…山下が嘘をつくとも思えない…
 過去の苦しかった話なんか、思い出したくもないはずなのに…

 きっと苦しみが分かるからと俺に打ち明けてくれて、何よりずっとずっと…今ですら、俺の心に寄り添おうとしてくれているじゃないか…

「ご、ごめん!!山際くんの気持ちも知らずに、勝手に分かったつもりでこんな話しちゃって…」

「…いや、間違ってなんかいない…」

 信じたい…お前の事を…
 いや、俺は信じるよ…?
 だから俺は、お前にだけ真実を話す…
 お前と友達になるために…

「俺も今までずっと一人だったんだ…一人ならこのまま一人でいい…見て分かる通り、周りを引き寄せようとしなかった俺も悪いんだ…」

「そして、俺もお前と同じように空に浮かぶ雲のように、目の前を流れる川のように、何にも囚われることも無く、ただただ自由に…そして静かに時を過ごしたい…」

「転校しても静かに過ごそうと思っていた…別にまた、一人でもいいんだと…そんな俺の気持ちとは裏腹に後ろにいたお前が、何度も何度もしつこく、俺に関わろうとしてきた…すまん、最初は正直うざいと思った…」

「ご、ごめん…」

 バカっ…頼むから今、話しを切らないでくれ…
 お前へ語る真実と思いは、もしかしたらこれが最初で最後になるかもしれないから…

「はぁ…話しはまだ続いてるんだから、最後までちゃんと聞け…」

「う、うん…」

「周りを引き付けたくない俺は、転校早々みんなから変なやつみたいな目で見られているのは百も承知だ」

「そんな周りの声や気持ちなんかを気にもせず、お前は何度も何度も俺に関わりを持とうとしてくれたけれど…その分、俺は怖くなった…」

「…こいつ…こんなにしてくれるのに、仲良くなれたらいいのに、仲良くなった後…俺の前からいなくなったりしないかな…」

「…結局、また一人になるんじゃないのか…そんなことばかり考えては、俺は一人でいいって心に言い聞かせていた…」

 友達になって…信じた人が俺の目の前からいなくなってしまうことが何よりも怖い…

 また暗闇に戻るのであれば、傷を負わずにずっと暗闇のままでいいと思っていたんだ。

「その時だよ、そう今日のことだ…お前がくれたいちごオレ…あれ、相当大変な思いをして買ってきてくれたんだろ…?」

「そして、必死に買ってきて本当なら自分で飲みたかったものを、僕の大好物なんだ!って俺に差し出してくれて…俺、その時に思ったんだよ…」

「こいつなら…いや、俺…こいつと仲良くなりたい…って…」

 『友達になりたい』とは言えなかった。
 強がりで弱虫な俺は『仲良くなりたい』としか山下に伝える事が出来なかったんだ。

 真実を伝えた俺は、山下が仲良くしてくれるのかどうか不安な反面、初めて自分の思いを包み隠さずに話した事で、どこか恥ずかしくもなってしまった。

 俺のクセ…そう、恥ずかしかったり、困ったりすると俺は自分の髪をわしゃわしゃと掻き乱してしまう。

 そんな俺に、山下は俺が一番欲しかった言葉を優しく…そして力強く紡いでくれたんだ。

「山際くん…」

「…なんだよ…」

「僕っ…僕ね…!!」

「僕、君と友達になりたいんだっ!」
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