水溜まりの水平線

品方 耳夫

文字の大きさ
上 下
3 / 3

かわいい嘘

しおりを挟む
帰り道、僕は意気揚々と雨に打たれた。
僕の頭の中は彼女の事でいっぱいになっていた。
僕が辛気臭い顔で雨を見ていたら、彼女が笑って隣に座ってくる。
そんなシーンを想像しながら僕はまた帰路とは反対の方向へと歩いていった。
やがてバス停へ着いた僕は、ベンチに腰かけ、彼女がいつも歩いてくる右側の道路に、目をやりながら地面から飛ぶ雨飛沫にズボンを濡らされていた。
しかし彼女が来ないまま、とうとう雨は上がってしまった。
僕はどうしようもない不安で肺が縮んだ。
たまには忙しい日だってある。
そう毎日々々雨宿りになんか来ないだろ。
とか色々自分に言い聞かせながらベンチをたって帰路につこうとした。
その時、待って。と後ろから呼び声がした。

「まだ、雨降ってるよ……降ってるよね…?」

彼女は息を切らしながら言った。
空からはまだポツポツと雫が落ちてきていた。
僕達はまたいつものようにベンチに腰かけて笑いあった。

「ねーねー、いっつも図書館の帰りにここに雨宿りに来てるんだよね?」

と訊く彼女に、まさか家から反対方向のバス停まで態々雨宿りに来ている。なんて僕には言えず、

「そうだよ」

と嘘をついた。

「じゃあさ、なんかオススメの本とか教えてよ!私普段家にいるからなんか家でも楽しめる娯楽が欲しいんだよねー」

そう笑顔で訊く彼女に僕は内心ギョッとした。
流れからすれば一番有り得そうな質問なのだが、普段図書館に行っていないどころか本すら読まない僕にその質問に答えることはなかなかにハードだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

雌犬、女子高生になる

フルーツパフェ
大衆娯楽
最近は犬が人間になるアニメが流行りの様子。 流行に乗って元は犬だった女子高生美少女達の日常を描く

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

処理中です...