水溜まりの水平線

品方 耳夫

文字の大きさ
上 下
2 / 3

思い出はいつの日も雨

しおりを挟む
それからはしばらく雨の降らない日が続いた。
もう何日も雨は降っていないが、僕が彼女を考えない日は一日たりともなかった。
只、彼女は僕を忘れていないだろうか。とかそんなことばかり考えて乾いた地面を歩き、教室へ向かった。
授業はいつもどうり退屈だった。
なんのためのものか理解せずに受ける授業はどうも集中出来なかった。
教師の言葉を聞き流しながら僕は彼女のことを考えていた。
彼女と出逢ったきっかけは、学校の課題のために初めて訪れた夏の図書館だった━━━━━
【現代文の課題として読書感想文を提出しなければならなかった僕はなるべく早く読めて感想の書きやすい本はないか、という下心をモットーに本選びに勤しんだ。
そして図書館に来てから大体三十分程たった頃に携帯に天気予報からの通知が入っていたのに気がついた。
どうやら今から10分も待たずに雨が振り出すらしい。
天気予報を見てこなかったので傘も何も持ってきていない僕は急いで帰ろうと図書館を出た。
しかし間に合わず、途中で雨に降られてしまった。
そこで仕方なく雨宿りにきた先にいたのが彼女だった。
びしょ濡れの僕を見て思わず口元を隠したのが彼女だった。】
その時の横目でチラチラ僕を見てはクスクスと笑う彼女の顔を憶いながら受ける授業は全くと言っていいほど頭に入らなかった。
そんな僕を現実へ引き戻したのは校舎を打つ無数の水滴の音だった。
しおりを挟む

処理中です...