奥さまは魔王女

エメラルダの森

「ダーリン…行ってらっしゃい！！気をつけてね…私もダーリンが帰るまでには美味しいご飯を作って待っていますからね。」

「ティナ…無理しないでね…疲れてたらご飯は僕が作るから…ティナみたいに上手には出来ないけど…」

「ありがとう…優しいね…ダーリン！！でも…私がダーリンに食べて喜んで欲しいから…作らせてね！！うふふ…」

そう言ってティナは行ってらっしゃいのキスをして僕を会社に送り出してくれた…


そんな変わらない幸せな日常だったが…
変わってしまった事もあった…



彼女は宣言通り故郷…ジュエラの国王職に就いた…
そして、人間と結婚したと発表した…

つまり僕との事である。最初は国民の中にも「人間なんかと！！」とか「国王様や王女様はどうされたのだ？」という意見もあったのだが…

魔界のマスコミの報道でティナの所信表明やゴルド前国王がミスやリルを可愛がる姿が国民に広く知られると「王女様は博愛の精神で人間と結婚されて幸せになられた…立派な国王様だ！！」とか「ゴルド様は厳しく険しい表情だったがお孫ちゃんの前では優しいお祖父ちゃん！」といった王族を肯定するニュースで世間は溢れかえり…

ひいては僕のことも、「野蛮な人間の中にも立派な人間はいた！！」
とか「自分勝手な人間も王女様の愛に包まれて大人しくなった！！」とかいうニュースで報道された…

一見、馬鹿にされてるような感じがするが、
それだけ昔に人間が魔族の方々に悪い事を
してきたって事だもんな！！仕方がない…

でもティナやご両親、ミスとリル、それに自分の世界に僕の事を理解してくれる人が沢山いる…今はそれだけで十分だと思うし、頑張っていくしかない…

いつか…ティナや僕が望む…二つの種族が分かり合える日が来る事を願って…






ある休日の午後…一家で魔界に来ていた僕達…
ティナは王宮に用事があるので、僕はミスとリルを連れてエメラルダの森へ遊びに出かけた…

ミスとリルは大はしゃぎで森の中を駆け回る…

「あはは…まてー！！」

「またないよー！！あはははは…」

その時…僕達がいる近くで大きな獣の鳴き声が聞こえた…

「グルルル…ガアァァァ！！」

「きゃあぁぁぁぁ！」

その後に女性の悲鳴が…！！！



「ミス！リル！行ってみよう！」僕達は声が聞こえてきた方へ急いだ。