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ティアドロップ

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結真はスタジオの練習に僕と結衣を呼んでくれた。心配させてしまったお詫びだということである。

僕がスタジオのドアを開けると、優花さんが、

「キャー。翔ちゃん。ウチに会いに来てくれたんやろ?嬉しいわぁ…」

「先日は私の彼氏が大変お世話になりました…もう、金輪際関わらないでもらえますよう、よろしくお願い申し上げます。」

結衣からかつて見たことのない黒いオーラを感じた。

「あーら、ここは子供は立ち入り禁止やで。
分かった、迷子やな。
お姉さんが交番に連れていったろか。」

「オバさん。スーパーの特売やってたよ。
早く行かないと売り切れちゃうよ。」

「なんや、ガキンチョが。」

「何なのよ。ババァは黙っててよ。」

おーい!二人とも!
それに結衣ちゃん。キャラ変わってるよ。

「聴いててな。翔ちゃん。」
優花さんのドラムがスタジオに響く。
なんか弾んでるようで楽しそうな音だ。

「いらっしゃい。結真の妹さん達ね。」
声をかけてくれたのはリーダーの陽子さん。

僕が初めてライブに来た時に受付をやっていた
美人のお姉さんだ。後から結真から聞いて驚いた。


このバンドはビジュアル系だろうか?
美人揃いなのも人気の理由だと思う。

「うん。優花、音変わってるよ。
前よりも良くなってる。聴いてて本当に嬉しくなってくる。」

「あはは…陽子さん…そやろそやろ!!
翔ちゃんのおかげや。おおきに。ホンマに愛してる。」

あの…結衣を刺激しないでください。

「フン。」結衣がそっぽを向く。

真新しい赤いギターを手に、結真が音出しする。
でも…何となくだけどしっくり来てなさそうに僕には見える…

「見てなよ!」

僕と結衣の目の前で結真の高速ギターテクが始まる。
僕と結衣が結真の指を目で追ったその直後、

パリン!

結真のティアドロップのピックが砕けた。
いや、それは何かが結真の中で砕けた音だった。

砕けたピックの破片が結真のティアドロップ…

彼女の涙のように見えた。
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