27 / 92
グラビティ・ゼロ
しおりを挟む
シャァァァァァァ……
ヴェガスクールのリンクではエリジブルコースの練習を終えた選手達がシャワーを浴びていた…
「はぁ…」
一つ息を吐いて目をつぶる…サークルのエース…ミヤ。彼女のシャワーの隣に別の女子選手が入ってきた…
「ミヤさん!お疲れ様~!」
「…お疲れ様。」
「調子はどうなん?」
「…別に…いつもと一緒よ…」
「クールやなあ…流石はパーフェクトクイーンて言われるだけあるわぁ…そのギャップでバーンとトリプルアクセルをシークエンスで二連発とかしたったらええのに!!ミヤさんやったら余裕でやれるで!!みんなビックリやで!!」
「そんな簡単じゃ無い事を無理してやって人に褒められて何の意味があるの?演技もステップもパーフェクトと称される程、私は完璧では無いわ…そこを突き詰めて完成度を上げるほうがよっぽど価値のある事じゃないの?」
「あー分かるけどぉ…そんなんワクワクせえへんやん…」
「ワクワク?」
「そうや。ウチはそのワクワクの気持ちを小さな頃から追いかけて今、ここにいるんや。アンタはどうなん?なんでスケートやってんの?」
「私、もう二十歳だしね、小さな頃とは背負ってるものも責任感も違うのよ…ガキみたいな…お遊戯みたいな事やってられないでしょう…
カオリ…あなたもそんな事言ってるヒマがあったら練習したほうがいいわよ…」
「まあ…考え方は人それぞれやしな…そうや!もう一回アルタイルのダンス動画見よ!
そう言ってカオリは自分のブレスフォンの画面を伸ばして見やすくした…
久々やなぁ!これ見るとマジウケ…る…あれ?もう一つ動画アップされてるわ…?」
新しい動画を再生したカオリはそこに映るリカの衣装と表情を見つめた…
「いやーん!この子、ダンスの子やん。ひょっとしてマジで跳ぶん?マジモン?」
その声にミヤもカオリの手元の画面を見つめる…
画面の中のリカはスッとブレードの後ろに体重をかけて流れるようにバッククロスに入る…両手を広げたその表情はまるで今から恋人に逢いに行く少女のようだった…
ミヤは画面に釘付けになった…
「今の…表情からストーリーを考えさせられるなんて…なんて表現力…」
そして呼吸を整えて前向きにリカは力強く踏み切った…「はっ!」
動画には特殊効果は一切使っていない…複数のカメラの切り替えも無ければリプレイも使って無かった…しかしリカが翔んでいる時間の映像がまるでスローモーションのようにミヤとカオリの中に刻み込まれる…
一回転…二回転…三回転半…そして着地…
トリプルアクセルを成功させたリカの動画は
笑顔の着地を決めて終わっていた…
「ふ、ふうん…まあ…綺麗なトリプルアクセルやけど、今やこんなん誰でも…」
「違うわ…」カオリの言葉を遮るようにミヤが呟く…
「グラビティ…ゼロ…この子のトリプルアクセルにはまだ続きがあるわ…」
「グラ…?何やて?どう言うこと?」
「どうやらもう一度アルタイルスクールに見学を申し込む必要がありそうね…」
ミヤはいつも冷静な自分を良しと思っているだけにリカのトリプルアクセルを自分の目で見たい気持ちが大きくなっている事に気付かなかった…いや…
気付かない振りをしていたのかもしれない…
「そして…もう一人…
最初はダンス動画で話題作り…
こうしてトリプルアクセルの動画を見せて更にアルタイルの…彼女のスケーティング技術に注目させる…
完璧なマネージメントだわ…一体誰なの…?彼女の後ろにいるのは…」
ヴェガスクールのリンクではエリジブルコースの練習を終えた選手達がシャワーを浴びていた…
「はぁ…」
一つ息を吐いて目をつぶる…サークルのエース…ミヤ。彼女のシャワーの隣に別の女子選手が入ってきた…
「ミヤさん!お疲れ様~!」
「…お疲れ様。」
「調子はどうなん?」
「…別に…いつもと一緒よ…」
「クールやなあ…流石はパーフェクトクイーンて言われるだけあるわぁ…そのギャップでバーンとトリプルアクセルをシークエンスで二連発とかしたったらええのに!!ミヤさんやったら余裕でやれるで!!みんなビックリやで!!」
「そんな簡単じゃ無い事を無理してやって人に褒められて何の意味があるの?演技もステップもパーフェクトと称される程、私は完璧では無いわ…そこを突き詰めて完成度を上げるほうがよっぽど価値のある事じゃないの?」
「あー分かるけどぉ…そんなんワクワクせえへんやん…」
「ワクワク?」
「そうや。ウチはそのワクワクの気持ちを小さな頃から追いかけて今、ここにいるんや。アンタはどうなん?なんでスケートやってんの?」
「私、もう二十歳だしね、小さな頃とは背負ってるものも責任感も違うのよ…ガキみたいな…お遊戯みたいな事やってられないでしょう…
カオリ…あなたもそんな事言ってるヒマがあったら練習したほうがいいわよ…」
「まあ…考え方は人それぞれやしな…そうや!もう一回アルタイルのダンス動画見よ!
そう言ってカオリは自分のブレスフォンの画面を伸ばして見やすくした…
久々やなぁ!これ見るとマジウケ…る…あれ?もう一つ動画アップされてるわ…?」
新しい動画を再生したカオリはそこに映るリカの衣装と表情を見つめた…
「いやーん!この子、ダンスの子やん。ひょっとしてマジで跳ぶん?マジモン?」
その声にミヤもカオリの手元の画面を見つめる…
画面の中のリカはスッとブレードの後ろに体重をかけて流れるようにバッククロスに入る…両手を広げたその表情はまるで今から恋人に逢いに行く少女のようだった…
ミヤは画面に釘付けになった…
「今の…表情からストーリーを考えさせられるなんて…なんて表現力…」
そして呼吸を整えて前向きにリカは力強く踏み切った…「はっ!」
動画には特殊効果は一切使っていない…複数のカメラの切り替えも無ければリプレイも使って無かった…しかしリカが翔んでいる時間の映像がまるでスローモーションのようにミヤとカオリの中に刻み込まれる…
一回転…二回転…三回転半…そして着地…
トリプルアクセルを成功させたリカの動画は
笑顔の着地を決めて終わっていた…
「ふ、ふうん…まあ…綺麗なトリプルアクセルやけど、今やこんなん誰でも…」
「違うわ…」カオリの言葉を遮るようにミヤが呟く…
「グラビティ…ゼロ…この子のトリプルアクセルにはまだ続きがあるわ…」
「グラ…?何やて?どう言うこと?」
「どうやらもう一度アルタイルスクールに見学を申し込む必要がありそうね…」
ミヤはいつも冷静な自分を良しと思っているだけにリカのトリプルアクセルを自分の目で見たい気持ちが大きくなっている事に気付かなかった…いや…
気付かない振りをしていたのかもしれない…
「そして…もう一人…
最初はダンス動画で話題作り…
こうしてトリプルアクセルの動画を見せて更にアルタイルの…彼女のスケーティング技術に注目させる…
完璧なマネージメントだわ…一体誰なの…?彼女の後ろにいるのは…」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる