フィギュアな彼女

奏 隼人

文字の大きさ
上 下
22 / 92

初めての…

しおりを挟む
夕焼けの街をとぼとぼと僕の後ろを歩くリカ…

僕は立ち止まって彼女に話しかける…
「どうしたの?さっきからずっと元気ないよ…」

「何でも…ないです…」

僕とリカはコンビニの前を通りがかった…

「リカ…アイス大福買おうか?」

「今、欲しくありません…」

「メロンシャーベットもあるよ…」

「要らないです…」

珍しく取り付く島も無いリカにどうして良いのか分からず仕方なく僕達は自分達のマンションに着いてしまった…





ただいま!ムク…遅くなってゴメンね…すぐご飯あげるからね!」

僕がムクの食事を用意している時もリカは元気が無い…

美味しそうに食事を食べるムク…

いつもならその姿を見ているととても幸せな気分になるのにリカが元気が無いと僕は…

ソファーに掛けているリカの前に僕は跪《ひざまづ》いて彼女の顔を見上げた。


「ねえ…リカ…本当にどうしたの?何か僕が悪いことをした?お願いだから教えてよ…」


するとリカはソファーに寝転がって僕にせなかを背中を向け…やがてゆっくりと口を開いた…

「ダイスケさんは何も悪くないんです…私が…胸が痛くなっちゃって…」

「えっ?胸が…?」

「ダイスケさんとミキさんが話し合ってるのを見たら胸がモヤモヤして…

ダイスケさんは悪く無いのになんか腹が立ったような…イライラしてしまって…私…嫌な女の子ですよね…

こんなんじゃダイスケさんにもママにも嫌われてしまう…ううう…」


僕は彼女の機嫌が悪い原因がやっと分かったと同時に自分の彼女に対しての配慮の無さを心から恥じた…

恐らく、シズカさんがこのことを知ったら…

「彼氏…失格ね」

なんて言われるかも知れない…


僕は身体を震わせて泣いているリカの背中を僕は後ろから抱いた…

「ダイスケ…さん?」

「リカ…少し落ち着いたらでいいから僕の方を向いてくれるかい?」

「は、はい…」



リカは急いで涙を拭いて僕の方を向いた!

「あっ!!嫌だ…私…今可愛く無いでしょう?」

僕はリカのその言葉が終わるか終わらないかの所で彼女を抱き寄せて口づけた…


「ダイスケ…さん…」

リカは驚いて目を見開いたがダイスケの口唇から伝わる想いに自然に目をゆっくりと閉じた…

長い口づけが終わって僕はリカの目を見つめた…


「リカ…僕はね、ミキとは幼い頃から一緒にいて仲良く育ったんだ…君よりも彼女と一緒にいる時間のほうがはるかに長かった…」

リカは一瞬また胸に痛みが走った…

「彼女がもう君のように翔べないと聞いて僕はせめて彼女が大事にしているサークルだけは何としても守ってあげたいと思ったんだよ…」

「そうだったんですか…だからミキさんは…」

「うん…これからも頑張って違う面からサークルを背負っていくって…」

リカは起き上がってソファにかけ直した…

「じゃ、じゃあ…ダイスケさんはミキさんのこと…好きというわけじゃ…」

「好きだよ…でも、リカだってシズカさんのこと好きでしょ?スケートサークルの人達は?」

「ママはもちろん…みんな好きですよ…だっていい人ばっかりですから…」

「だよね…僕もみんな好き!」

「あははは…」

そう言った僕の顔を見てリカは笑顔を見せてくれた。リカの笑顔に僕もムクも嬉しくなった…

「ダイスケ…さん…」

「…ん?」

「私とミキさんとでは…やっぱりミキさんの方が長くいるから好きなんですか?」

精一杯の作り笑顔で僕に問いかける彼女に言うべき答えは一つしかなかった…



「愛してる。」

「えっ?」

「僕は…君を…リカを愛している。

『好き』ではなくて…愛しているんだ。」

「ダイスケさん…」

「君がそんなに想ってくれて嬉しかった…
僕もリカを愛しているから…

好きと愛しているはまた違うんだよ…」

リカは僕を真っ直ぐに見つめて…

「ダイスケさん…私…もう一度…」

その時、僕は彼女が何を言おうとしているのかが分かった。

手を広げて彼女を迎え入れる…

リカは僕の胸に飛び込んで…そして口唇を重ねた…



長い長いキスの後…

「今夜はベッドにおいでよ…

抱きしめてあげるから一緒に寝ようよ…」

「えっ?ダイスケさんと?嬉しい…」

「まだ胸は苦しいかい?」

「あら?もう全然大丈夫かも…すみません…ダイスケさん!私、お腹が空いて来ちゃいました…」

「じゃあ、さっきのコンビニに買いに行こうよ…」

「アイス大福かメロンシャーベットどちらにしようかなぁ?…両方はダメですよね…ウフフ…」

そう言って彼女は笑った…


その夜はいつもよりリカを近くに感じる夜になった…


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...