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潜入
しおりを挟む優也達の乗った牛車を模したようなタイプのシャトルはどんどんと速度を落としていき…
遂には空中にて浮遊しながら停止し、スーッと降下したかと思うとゆっくりと着床した。
やがて…ユミルとネザーがシャトルの扉を開けて姿を見せた。
続いて優也が同じように船外へと降りて両手を頭上に大きく上げ、『うーん!!!』と声を漏らしながら伸びをした。
そして…差し出されたユミルの手をゆっくりと取り、最後にゆっくりと姿を見せたヴァルプルギスはシャトルのステップを確認しながら一段…また一段と歩みを進めた。
優也は3人の方へと向き直り…
「で…これから、どうするんだい…?」
優也の問いかけにユミルは、人間界での姿…
弓のクールな表情のまま…うっすらと微笑を浮かべた。
「はい…
これより私達はこの月面都市の長と面会し、我々とベローズの存在を明らかにします。
私はそうする事によってこの時代の長にも我々の考えに必ず賛同頂くことが出来ると信じています…」
「なるほどね…
これが僕達をここへ誘った理由なんだね。」
「あ…いえ…」
ユミルは一度悲しそうに目を伏せるような素振りを見せた。
「勿論…
聡明なアポロン王様とアルテミス王妃様に生き写しであるお二人を長の元へとお連れする事が私達の何百何千の言葉よりずっと説得力に満ち溢れている事は言わずもがなであります…
でも…それだけの為に私達がお二人をこんなに遠くて…危険を含んだ場所へとお連れする訳がありません。
お二人でなければ…切迫している非常に危機的な状況からこの月面都市を守り抜く事は困難なのかもしれないのです…」
優也は彼女の表情や口調からその危機的状況というものが非常に深刻であるものだということを悟った。
そして…それを知るタイミングは必ずしも今でないといけない訳ではなく…
彼女達が言う『月面都市の長』と対面する…
その時であっても十分であると認識した。
で、あるなら…自分が今、配慮するべき人は…
……ニッコリ!!
優也は下を向いていたユミルの顔を笑顔で覗きこんだ。
『はっ!!
どどど…どーされたのですかっ!!」
「いやあ…弓さん…
最初に会った時と今とではイメージが随分違うなぁって思ってさ…」
「そ、それは…」
今度はユミルが困ったような表情で上目遣いに優也の顔を覗きこんだ。
その視線の先にいる彼はニッコリと笑って、
「あなた達が存在する時代と今は色々と違えど…
それでも月面都市の名物と呼ばれるものをご存知の筈…ですよね!!」
「え……は、はい…」
「あ、それから……名物と言っても…
『史跡・名勝』なんかを教えて貰いたいワケじゃないんで……」
「……美味しいモノですよね……」
「流石…分かってらっしゃいますね…」
終始、笑顔の優也を呆れた表情で眺めるユミル…
…この男があの聡明なアポロン王様…
確かに生き写しだけど…
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