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ベローズを追って
しおりを挟む「そうです…
千年程前、アポロン様とアルテミス様はあの男…ベローズ大臣の策略により命を…
いえ…もう大臣ではありませんね…」
「大臣……⁉︎
ちょ、ちょっと待ってよ…
まさか…その大臣って…」
「はい。アポロン様が月へと上がられるきっかけになった…バビロナ王朝を他国と結託して乗っ取ろうとした男です。」
優也とヴァルプルギスは顔を見合わせた。
「彼も王子と一緒に月へ……?」
「人々が国から逃げ出してもぬけの殻となったバビロナ王朝を支配しても楽しくないと考えたのでしょう…
それなら…
いっそのことヴァルハラを支配してやろうと混乱に乗じて魔法で身を隠して月へと上がったようです…」
地上より来たれり太陽の王と月の女王の導きにより…
多民族の豊かな国になったヴァルハラ…
次にアポロン様はずっと気にかけておられたバビロナの人々をヴァルハラに呼び寄せるべく…
月よりの使節団を結成され…アルテミス様と大型のシャトルに乗られてヴァルハラを出発しようとなされました。
しかし…そのシャトルにはベローズが細工をしていたのです…
シャトルの打ち上げは失敗…
使節団としてシャトルに乗り込んだ私とネザーも危うく生命を落とす所でした…
シャトルが爆発を起こしたあの時…
お二人がまだ幼かった私達を庇ってくださらなければ…」
ユミルの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。
「ユ…ユミルさん…泣かないで…ね…!!」
優也はポケットからハンカチを取り出すとそっと彼女に差し出した…
「ありがとうございます…うっ…うっ…」
ユミルの脳裏に色々な思い出がフラッシュバックされていき…
彼女は人目を憚らず、とうとう…目の前の優也の膝の上に顔を埋めて泣き崩れてしまった。
ユミルの背中にそっと手を遣る優也…
その時、彼は自然な感じでネザーと目が合った。
「一つ…不思議に思う事があるんだ…
聞いてもいいかな…?」
「は、はい……」
「君達は千年前から…
時を超えてここに来たんだよね…
そして…
ユミルさんの話の中に出てきた…
『大型のシャトル』
千年前のバビロナにそんな物を作れる技術は無かった筈……
月の民とはそれほどに高度な文明を築いていたのかい……⁉︎」
「いえ……この時空転移装置も…
大型シャトルも…
ヴァルハラが目を見張るような発展をしたのは、全て…デヴォン様のおかげです。」
「デヴォン様……⁉︎
いったいそれは何者だい…⁉︎」
「アポロン様が全幅の信頼を置いていた科学者の方です。
一緒にヴァルハラに来られたのですが…何でも彼は魔法使いではなく、人間界から来られたのだと…
アポロン様とアルテミス様を失ってしまった私達は彼をリーダーとし、新しい女王の元で失意のどん底に落ちたヴァルハラをもう一度豊かな…お二人が望まれた国家へとするのが私達の願い……
そのためにはどうしてもあの男を野放しにして置くわけにはいかないのです。」
優也はネザーに微笑みかける…
「ありがとう!
君達が何故…僕を必要としているのか…
そして…そのベローズの狙いが何なのか…
うっすらと分かってきたよ…」
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