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Y・F
しおりを挟む…コンコン。
「はぁ~い…」
…ガチャッ!
ドサドサドサドサ……
「ひいっ!!」
プラティナの目の前に多くの本とファイルにまとめられた資料が降ってきた…
いや…机にうつ伏せていた彼女の前に置かれたと言うのが正しいのだろうが…
「コホン!!王女様…魔法書を枕にしないで頂きたいとあれ程申し上げたではありませんか…
それに…書物というものはたくさん読めば簡単に知識が得られるというものではありませんぞ……
じっくりと…
一行一節に込められた著者の意を…」
白髪混じりで鼻眼鏡…
格式高い制服と帽子に身を包んだこの男性は中央魔法図書館の代表司書である。
「分かってるわよ…
でも…今は時間がないのよ…
早くダーリンを助けに行かないと…
そのためには何とかして月へと向かう方法を…」
「はぁ……分かりました……
また御用がお有りでしたらお呼び下さい…」
…パタン!
ドアの閉まる音と同時にまた机の上に拡げた魔法書の上に顔を埋めるプラティナ…
…チョンチョン!
誰かがプラティナの肩の辺りを指でつついた。
「分かってますって…
本を枕にするなって言うんでしょ…」
プラティナは起き上がって書物を手で拡げて真っ直ぐ向き合った。
…チョンチョン!
「あ~もう!!
何なのよ…私は今…いそが…し…い……⁉︎」
後ろを振り返ったプラティナの瞳に飛び込んできたのは…
ナギ、アイ、ジーニャにジーナ…
各国の王女達にサブリナとマーブルが
勢揃いした姿だった…
「あ……あなた達……」
「しっ!」
笑顔でウインクをしながらサブリナは口の前に人差し指を立てた。
「王女様……
ここはセキュリティの為に原則、テレポート禁止なんですよ…
でも…
早く王女様にお伝えしたくて…」
「私に……⁉︎」
その時マーブルが一歩前に歩み出た…
「プラティナ王女様…不安は払拭されました…
月へと…参りましょう…」
プラティナに向けて手を差し出すマーブル…
しかしプラティナは憂いを帯びた笑みを浮かべて語り出した…
「私…バカだね…
私の申し出にマーブルさんが躊躇された時…
なんか…ホッとしちゃった…」
「えっ⁉︎」
「やっぱり人任せじゃなく…
妻として…
自分の手でダーリンの事を救い出さないとって…
あはは……ナギやアイさん…ジーニャさんは皆、私がお嫁さんにしたいくらい綺麗だし…
ジーナやサブリナ…マーブルさんは容姿も当然だけど…ほっとけないくらい可愛い女なんだもん。
きっと…私…皆に嫉妬してるんだわ…
こんな時なのに…嫌な女だわ…私は…」
「プッ……アッハハハハハ……」
「ワハハハ…」
「アハハハハ…」
部屋中が笑い声に包まれた…
「なっ…何がおかしいのよ…みんな…」
その時…
ドンドンドンドン!!!!!
「王女様……ここは神聖な魔法図書館ですぞ……
もう少しお静かに…!!!」
物凄い剣幕で先程の司書がドアを叩く音がして
皆は慌てて笑うのを止めた。
そして…
「ティナ……それはまるで逆よ…」
「ええっ…⁉︎」
「ナギさんの言う通りよ…ティナさん。
私達がどれ程…あなたに嫉妬しているか…
あなたはジュエラ王国の国王職…
でも…優也くんが拐われてからあなたは国のことなんかそっちのけで彼を取り戻すことだけを考えている…
すごいY・Fだわ…
まるで彼がいないと…
呼吸もままならないような…ね…
だから…
そんなあなたに誰も文句なんか言わない…
言えないのよ…
出来ることなら私達も彼に対してそうでありたいわ…
だから私達はあなたの為に集まっているのではないわ…
自分自身が彼に対して尽くしたいからここに居るのよ…」
王女達は皆、顔を見合わせながら微笑む……
「みんな……」
「さあ……姉ちゃん達……
殿がウチらを待ってるで!!
早いとこ迎えに行こ!!
な!な!な!」
「アハハハハ……」
ドンドンドンドン!!!!!
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