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二つの月
しおりを挟む急いでうどん屋を出た三人は…
「ふうっ……」
「あ、あのっ!!」
「は、はい……」
「私達……これからも優也様のこと……
陰ながらお護りさせて頂きたいのですが…」
迷惑に思われるかもしれない……
サブリナもマーブルも伏目がちになってしまったのだが……
「うん!!
本当に感謝してます!!
二人ともありがとう!!」
微笑みながら二人に頭を下げる優也……
「お、おやめください…」
「そうです!!これは私達がそうしたくて勝手にしている事なので…
優也様が気に病まれる事ではありませんわ!!」
「でも……一つだけ約束してくれないかい…?」
「………⁉︎」
「い、一体…何ですか…⁇」
「絶対に危険な事だけはして欲しくないんだ。
君達にもしもの事があったら…僕はどうしたらいいか…」
キュゥゥゥン…
甘い甘い痛みが二人の胸を締めつける…
ああ…本当に…
なんてお優しい…
あんなに美しくて聡明な奥方様がおられるのに…
勝手に押しかけて迷惑だと思われても仕方ないのに…
こんな私達にも心を砕いてくださって…
流石は各国の王女様達が夢中になる殿方…
最初は…一体どんなお方なのかと興味本位だったけれど…
清々しい朝にあなたと初めて触れ合って…
お昼には色々お話しして…
お別れした夕べにはあなたの事を考え始め…
そう…いつの間にか……
もう次の朝には…
私の心はあなたのことでいっぱいに…
ああ優也様……
「理解りました…」
「ご心配をおかけするような事は決してしないと心に誓います…」
そう言って跪いた二人にホッとした表情を見せた優也は何げなく時計に目を遣る…
「うわわっ!!もうこんな時間!!
会社に帰って日報を纏めないと……!!
じゃ、じゃあね…本当に今日はありがとう…」
そう言って走り去って行く優也の背中を二人は甘い眼差しでいつまでも見つめていた…
ウットリ……
———湖面に浮かぶ月。
今夜は風も無く…鏡のように真円を描き、
魔界の色とは違い、黄金色に輝いている…
そんな二つの月の明かりは…
湖のほとりに建てられた木造の小さな水質観測所の小屋の窓にも差し込まれていた。
静寂と闇に包まれた部屋の中に佇む…二つの影。
その静寂を破ったのは女性二人の小さな話し声だった…
「……作戦は失敗だわ。一度戻って立て直さないと…」
「ハァ…何悠長な事言ってるの…⁉︎
手ぶらで帰れるワケないでしょ……
私達の肩にはどれだけのモノが乗っかってるのか…アンタも分かってる筈よ…」
「………」
口を紡いだ女性は外の景色…二つの月を眺めに窓の方へと歩み寄る…
月明かりに照らされ浮かび上がった表情は…
哀しげに佇んでいる弓であった…
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