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第三部 勇者への道
「この悲鳴は!?」
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一方少し前、ロット達二人は探索を開始していた。
アベンは言うまでもなく、ロットの剣技もこの塔の水準を今のところは満たしていたようで襲いかかる魔物は相手にはならなかった。
そのため進みがよく、初めはお互い悪い印象を抱いていたが気がつけば会話も弾んでいた。今は魔力譲渡の方法について話しており、普段は手をつないで魔力譲渡を行っていることを伝えた。
「へー。ということはロットとケイトさんは手を繋ぐことで魔力を譲渡できて、上位の魔法を使えるってことか」
話題はケイトのことが多く、このアベンという男は本当にケイトのことを気に入ったらしかった。なのでロットもケイトの話をしてやる。自分がいかに仲良く旅をしていたかについても混ぜながら。
「うん。魔力がたくさんあるときのケイトはすごいよ」
「ずるい!」
すると突如アベンが怒りだした。ロットは理由もわからず困惑する。
「え? でも僕達はお互いの足らない部分を補ってるだけで」
「ちげーよ!なんだよ手をつないで魔力を譲渡って。そんな合法的にケイトさんと手を繋げるなんてずるいってんだ!」
要するにケイトと手を繋いだりそう言ったスキンシップをすることに嫉妬している。
まさかそこを突っ込まれると思っていなかったロットは慌てて訂正する。
「なな、なにを。そんな邪な気持ちで手なんか繋いでないよ!」
その慌てっぷりが余計にアベンを疑らせるのだが、そうとは知らずにロットもムキになって否定した。
「はーどうだか、繋いだあとの手をこっそりと匂ったりしてんじゃねぇのか」
そんなロットにもはや変態一歩手前の嫉妬を発揮するアベンだった。
「なんでわかっ……1回しかしてないから!」
この2人、最初こそバチバチと敵対するかに思われたがこういった変なところは似たりよったりで、ロットも心当たりがあり口を滑らせた。耳まで真っ赤になった彼をアベンはニヤついて肩に手をやった。
「イッヒッヒ、ロットも男じゃねえか。やっぱりケイトさんかわいいよなぁ」
それはまるで仲の良い友人のようであり、ロットも実のところは少し年上の兄ができたような感覚でむず痒さを感じていたが、アベンの言葉を認めることがどうしても恥ずかしくて手をどける。
「何言ってるんだよ全く馬鹿みたいだ」
あくまで冷静を装ってロットは呟いた。そんな彼をさらにいじってやろうとしていたアベンの表情は一変する。
「なんだぁ!?」
眉をひそめて叫んだ。当然のことにロットは肩をはねさせてすぐに謝罪した。
「わっ? 馬鹿って言ってごめん」
「あぁ?ちげーよい!悲鳴が聞こえるだろうが」
見当違いのロットはそう言われて耳を澄ますと確かに声が聞こえた。それは悲鳴であり、そう遠くないところに同じように挑戦者がいることを示していた。
「ほんとだ。あっちからきこえる」
悲鳴ということは何かしらのピンチに陥っていると思われたが、それがさらに他の挑戦者によるものなのか、それとも魔物によるものなのかは分からなかった。
ただ、二人のように共に探索することになればいいが、戦闘になる場合もあるので気を引き締めながら声の方に向かっていくのだった。
アベンは言うまでもなく、ロットの剣技もこの塔の水準を今のところは満たしていたようで襲いかかる魔物は相手にはならなかった。
そのため進みがよく、初めはお互い悪い印象を抱いていたが気がつけば会話も弾んでいた。今は魔力譲渡の方法について話しており、普段は手をつないで魔力譲渡を行っていることを伝えた。
「へー。ということはロットとケイトさんは手を繋ぐことで魔力を譲渡できて、上位の魔法を使えるってことか」
話題はケイトのことが多く、このアベンという男は本当にケイトのことを気に入ったらしかった。なのでロットもケイトの話をしてやる。自分がいかに仲良く旅をしていたかについても混ぜながら。
「うん。魔力がたくさんあるときのケイトはすごいよ」
「ずるい!」
すると突如アベンが怒りだした。ロットは理由もわからず困惑する。
「え? でも僕達はお互いの足らない部分を補ってるだけで」
「ちげーよ!なんだよ手をつないで魔力を譲渡って。そんな合法的にケイトさんと手を繋げるなんてずるいってんだ!」
要するにケイトと手を繋いだりそう言ったスキンシップをすることに嫉妬している。
まさかそこを突っ込まれると思っていなかったロットは慌てて訂正する。
「なな、なにを。そんな邪な気持ちで手なんか繋いでないよ!」
その慌てっぷりが余計にアベンを疑らせるのだが、そうとは知らずにロットもムキになって否定した。
「はーどうだか、繋いだあとの手をこっそりと匂ったりしてんじゃねぇのか」
そんなロットにもはや変態一歩手前の嫉妬を発揮するアベンだった。
「なんでわかっ……1回しかしてないから!」
この2人、最初こそバチバチと敵対するかに思われたがこういった変なところは似たりよったりで、ロットも心当たりがあり口を滑らせた。耳まで真っ赤になった彼をアベンはニヤついて肩に手をやった。
「イッヒッヒ、ロットも男じゃねえか。やっぱりケイトさんかわいいよなぁ」
それはまるで仲の良い友人のようであり、ロットも実のところは少し年上の兄ができたような感覚でむず痒さを感じていたが、アベンの言葉を認めることがどうしても恥ずかしくて手をどける。
「何言ってるんだよ全く馬鹿みたいだ」
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「ほんとだ。あっちからきこえる」
悲鳴ということは何かしらのピンチに陥っていると思われたが、それがさらに他の挑戦者によるものなのか、それとも魔物によるものなのかは分からなかった。
ただ、二人のように共に探索することになればいいが、戦闘になる場合もあるので気を引き締めながら声の方に向かっていくのだった。
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