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第三部 勇者への道

「ぎゃぁぁぁああ!!!」

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塔を攻略したものが勇者になれる性質上足を止めることなく進んでいた。歩きながらもケイトの心配は一つ。

「2人共防御特化なんて珍しいわね。ところで子供っぽい剣士見てないかしら?」

ロットが聞けば怒りそうな表現だが知らない者にとっては的確である。クリスとトリィも若いがやはり最年少はロットで間違いない。しかし二人は顔を見合わせたが心当たりがないらしい。

「仲間ですか?」

「ええ、どうやら別の場所に飛ばされちゃったみたいなのよね」

「ええ!別々になる可能性もあったのか」

「わたしたち運が良かったですぅ」

ここでようやく仲間であっても別の場所に飛ばされていた可能性を知り二人は今こうして離れずにいられていることを安堵する。

ケイトは横目で抱き合う見ながらもロットを心配していた。彼女の中ではまだまだ未熟な剣士のように見えていた。

「うぅ、仲間とはぐれるなんて可哀想です。トリィと離れたら私やっていけましぇん」

感受性が豊かなのか、泣き出して同情するクリス。よくあることなのかトリィは落ち着いた様子で頭を撫でている。

「何も泣かなくても。でもじゃあどうせ行く場所は同じなんだし一緒に行きましょう?」

「いいんですかぁ!」

「私たちとしても遠距離がいると助かるが、その」

ケイトの申し出に喜びをあらわにするクリスだが、トリィは言葉を詰まらせる。なぜならここに来ている理由として皆勇者を目指していた。つまり仲が深まるほど最後にはつらい思いをすることが目に見えている。

「あぁ、私はもとより勇者になるつもりはないわ。仲間の付き添いで来ているだけだから。だからその時はロットと対決してちょうだい。恨みっこ無しで決めましょう」

そういったケイトに二人は目を丸くした。テストに受からず脱落した者たちが聞けば白目を剥いてしまうほどあっさりと勇者になるチャンスを捨てたのだった。

「じゃあケイトさん、よろしく」

「よろしくですぅ」

「さんはいらないわよ。ほら行きましょ」

そんな三人は塔の中を探りさぐり探索する。まるでダンジョンのように階段や部屋が入り乱れており不正解を引くと魔物と戦闘になる仕様だった。

それに気がついてからは慎重になり、順調に上の階へと登っている。

「あ、魔物がでてくるくらいだからダンジョンと一緒で罠には十分気をつけてね」

襲いかかってきた魔物を風刃で貫いたケイトが言った。

いつの間にかこのパーティーではケイトが先頭を歩いている。魔法使いであるケイトとしては前衛を二人に任せたかったが何故か後ろにピッタリついてきたのだ。

前衛としての自覚はあるのだろうか?そんな疑問がケイトを襲ったが、いざ魔物が出てくると一応壁になってくれていたので文句は言わずに進んでいた。

基本的には冒険者をやっていたと言う割におっちょこちょいというか不注意というか、特に小柄なクリスの方はフラフラとしているためあえてそう注意を促した。

「あぁ。流石に私達も伊達に女2人で冒険者をやっていないからそのへんは」

トリィが答えている途中にパキリという明らか床を歩いた時に鳴るでない音が鳴った。

ケイトとトリィは恐る恐る振り返り見るとクリスは踏み出した右足をちょうど引っ込めたところだった。よく見るとその一部分だけ紋様が描かれており、細かく亀裂が入っていた。

「はぇぇ。なんか床が沈みましたぁ」

今にも泣きそうなクリスがそう言った。手をアワアワと空を切っているが発動してしまった罠を防ぐ手立てはない。

「……クリス?」

「あ、あはは、すみません、どうしましょう床が抜けたりしたら」

呆れて絶句するトリィと、なんだか情けなくて笑えてきたクリス。ケイトは
「また落ちるのは勘弁よ」
とだけ言って罠に備えた。

静寂が3人を襲ったが何も起こらなかった。張り詰めていた緊張も緩み始める。不発なこともあるので今回がそれではないかと二人は気を抜いた。

「何も起こらないな」

「よかったですぅ」

その時真上から一雫が落ちてきた。気が付いたケイトが見上げるとそこにはドロドロとした何かがへばりついていて今にも剥がれ落ちそうになっていた。

「うえよ!」

飛び退いたケイトだったがクリスとトリィは落ちてきた粘液に取り込まれて
「きゃぁぁぁあ!!!」
「にゃぁぁぁあ!!!」
悲痛な叫び声が辺り一面に響いた。
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