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≪本編≫

【本編50】

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事件が解決してから1ヶ月が経った。

十夜さんはカツラをやめ、俺の専属ヘアメイクとモデルのYORUとして正式に事務所と契約した。

俺がソロの時は、十夜さんとして眼鏡はかけたままだけどね。

よくよく話を聞くと、元々YORUは最初から“女装モデル”としてやり始めたハズなのに、いつの間にか“女性モデル”に間違えられてしまったらしい。

まぁ、元が可愛いから間違えられてもしょうがない。

現在はその間違いを訂正したけど、それでもYORUを採用したいクライアントがいるので、俺とペア以外仕事はしないと事務所から再度正式に発表した。

十夜さんはYORUとしての仕事を辞める気でいたけど、せっかく可愛いのに勿体無いと言って引き留めたのは母さんだった。

そして、竜也さんも正式にヘアメイクとして契約した。

もちろんYORUが最優先なんだけど、俺達の撮影が無い時に新人モデルを担当したりしていたら、腕が良いと話題になって既存のモデルからも依頼が来たりするようになった。

仕事中にうっかり顔がバレてしまい、今では男女問わず露骨な熱烈アプローチを受けていて、高千穂さんをヤキモキさせている。

ヘアメイク中以外は結婚指輪してるのにね。

高千穂さんだけは学生って事と、やりたい事があるからって事で契約は解除された。

高千穂さんは夜弌さんの接骨院を継ぎたいからと、柔道整復師の国家試験に向けて勉強中だ。

ただ、俺やYORUの撮影がある時でクライアントが信用出来ない時だけは、アルバイトとしてマネージャーをやってくれる事になった。

とても心強いですw

それから、俺は高校を卒業したら、養子縁組という方法で十夜さんと家族になろうとしている。

まぁ、全て教えてもらった事なんだけど。

法律上、年上の養子にしかなれないから、俺は“小野田秀臣”から“葉月秀臣”になるんだけど、母さんは何も言わずに承諾してくれた。

寧ろ、うきうきしているのは気のせいじゃないだろう…。

父さんは電話口で「自分の人生なんだから本気で決めたなら好きにしなさい。応援はするよ」と、言ってくれた。

忙しい父さんだけど、事件の時には母さんから連絡を受けてすぐに帰国してくれた。

病室に着いた途端に夜弌さんに土下座されてびっくりしてた。

父さんも母さんも、お互いに命に別状は無かったし、後遺症も無かった事、元はと言えば俺が連絡を怠った事や、木村さんという護衛を詳しく調べずに雇ったこちらの落ち度でもあるので、これ以上の謝罪は必要無いと夜弌さんに話したらしい。

他の細かい事は大人達で話し合ったので、その辺は良く解らなかったけど…。

話し合いが終わってすぐに旅立って行ったけど、心配して駆け付けてくれた事は素直に嬉しかった。

その後の十夜さんとの事は母さんから報告されていたみたい。

ちなみに、養子縁組の情報源の竜也さんと高千穂さんは周囲を説得して、既に夜弌さんの子として養子縁組を済ませた。

なので、2人は既に“葉月”姓だ。

羨ましい…。

2人はちゃんと兄弟としての証が欲しかったってのもあるけど、正式に十夜さんと家族になりたかったからと教えてくれた。

養子縁組の仕組みを教わっておいて何ですけど、先を越された感満載ですよ?

今では、竜也さんと高千穂さんと十夜さんの関係は、叔父2人と甥になる。

本当は十夜さんとも兄弟として養子縁組したかったらしいけど、十夜さんのお母さんは既に亡くなってるので養子縁組は出来ないそうだ。

十夜さんも小夜さんの子供のままでいたいと言って夜弌さんの養子には入らなかった。

竜也さん達は夜弌さんを説得するのが一番大変だったみたいだけど、最終的には夜弌さんも祝福してくれたみたい。

俺と十夜さんの話も既にしてある。

夜弌さんは十夜さんが幸せならそれで良いと言って受け入れてくれた。

養子縁組は15歳から本人の意思で出来るらしいけど、俺は十夜さんに言われて高校卒業まで待ったをかけられた。

在籍中に名前が変わると大変じゃないかと危惧してくれたみたい。

早く卒業して十夜さんと同じ姓を名乗りたいなぁ。

そんな俺達は、前みたいに片方の部屋に溜まる事が日常になっていた。

時々母さんと長瀬さん(この人も貴腐人だった)が乱入して、倒錯的な撮影会が始まるけどね。

それから、十夜さんが母さん達のアニメコレクションを見て、コスプレにハマったのには驚いた。

大量に布を買ってきて、毎日何か作ってるなぁと思ったらコスプレ衣装だった。

ちなみに、4人分…。

母さん達が狂喜乱舞したのは言うまでもないだろう…。

母さんは「嫁とアニメの話が出来る~♪」って喜んでるけど、程々にね?

最近は4人でコスプレした写真をネットにアップして遊んでいる。

竜也さんが意外とノリノリなのは見ていて楽しいw

ちなみに一番格好いいのでアップ当初から人気が高い。

高千穂さんは模造刀とかの小道具をどっかから仕入れてくるし、スタジオ撮影とか本格的にやりすぎだと思う。

カメラマンの山田さんがギャラも発生しないのに嬉々として参加してるのは、YORUを撮れるからだけじゃなく、彼もまた腐男子でカメコと呼ばれる人種だったから。

山田さんには「YORUちゃんが男の娘なのは解ってたよ~w」と言われた。

意外と侮れないな。

後、十夜さんとの仲を根掘り葉掘り聞いてくれるので、めちゃくちゃ語らせて貰ったw

ぶっちゃけ、他人に語れるのは嬉しい。

いや、学校でも一部の仲の良い友達には話したけども。

まぁ、それ以外は普通に平和だ。

寝る時は殆ど4人で801号室の寝部屋で寝ている。

時々、全員でテレビを見ながらリビングのリクライニングソファーで寝落ちするのはご愛敬w

お察しな気分の時は高千穂さんが自己申告してくれるので、ラッキーとばかりに十夜さんを連れて自分の部屋に戻り、美味しく頂いていますw

今日は久々の何もない休日で、4人で十夜さんの作ったお菓子をお供に母さんお薦めのアニメを見る。

キャラの性格とセリフを覚えてコスプレするんだって。

そんな訳で、まったり観賞会。

食い入るようにテレビを見ている十夜さんを抱き締めながら掠めるようにキスをすると、微笑んでお返しをしてくれた。

竜也さんと高千穂さんは見ないふりをしてくれる。

と言うか、そっちはそっちでイチャイチャしているw

こんなまったりした時間がすごく幸せだ。

長かったような短かったような8年間の片想いは実った。

実った果実は、一度もぎ取られて叩き落とされたけれど、拾われて大切に保管されている。

十夜さんを抱き締めながらしみじみ思う。

【俺は期間限定だった幸せを掴み取ったらしい】

<完>
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