上 下
48 / 69
≪本編≫

【本編48】

しおりを挟む
朝、目が覚めると、腕の中で安心しきって寝ている十夜さんがいる。

いつも抱えて寝ている竜也さんや高千穂さんが羨ましくて堪らなかったけど、やっぱり可愛い♡

気持ちが通じ合うとこんなに幸せな気持ちになるんだな。

十夜さんの頭を撫でながら考える。

ねぇ、十夜さん。

俺、気付いちゃったんですよ。

貴方のお母さん、小夜さんが何で十夜さんを産んだのか。

だって、いくら宿った命とはいえ世間にバレたら子供が何を言われるかぐらい解るでしょう?

普通はおろした方が子供の為だと思うでしょう?

14歳という若さで生むにはリスクがありすぎるでしょう?

なのに小夜さんは十夜さんを産んだ。

周りの反対を押しきってまで。

確かに、優しい人なら宿った命を散らせないだろうけど、一番の理由は貴方が愛する人の子供だったからなんですよ。

小夜さんとあの男は、ちゃんと愛し合っていたんだ。

ただ、子供が出来てしまったから、年齢が幼かったから、兄妹だったから、どっかでねじ曲がってしまったんじゃないのかな?

竜也さんと高千穂さんが言っていた「俺達は同じ血の俺達しか愛せない」って、あの男と小夜さんにも当てはまる事だったんじゃないかな?

たまたま十夜さんには兄弟が居なかったから解らなかっただけで、もし、兄弟がいたら俺は選ばれなかったんだと思うよ?

まぁ、その辺は憶測でしかないけど、愛し合っていたのは真実なんだと思う。

あの男は、十夜さんの父親が誰か知らなかったんだろう。

無理矢理引き離されたまま小夜さんが亡くなって、亡くなった事を認められないまま十夜さんを見付けてしまった。

自分の子供だと知らないあの男の中で、同じ顔の十夜さんが小夜さんに刷り変わってしまってもおかしくはない。

“小夜、どうしたんだい?”
“今日はいつものように抱きついてくれないのかい?”
“なぜ、兄さん愛してると言ってキスしてくれないんだ?”
“それに、俺のあげた指輪はどうしたんだい?”

あの時、十夜さんは気絶していたから知らないだろうけど、あの男が捨てられたような顔で十夜さんの頭を撫でて呟いていた言葉。

退院する時に夜弌さんに聞いてみた。

「小夜さんが大事にしていた物の中に指輪はありませんでしたか?」と。

夜弌さんは驚きながらも、首に下げていた二つの指輪を見せてくれた。

一つは妻、八重さんの物。

もう一つは小夜さんがどこで手に入れたのか解らないが、いつも身に付けていた物だと聞いた。

小夜さんはあの男からもらった指輪を大事にしていた。

それが決定的な証拠。

だって、あの男も同じ指輪を嵌めていたから…。

何度も首を絞められる度に見たから間違いない。

同じデザインだった。

あの男のした事はとても許せる事じゃないけれど、真実を知ってしまうと切なくなる。

…もしも、2人の仲が引き裂かれなかったら?

もしも、子供が出来た事をあの男に伝えていたら?

もしも、小夜さんが生きていたら?

たぶん、いくつ“もしも”をあげても意味は無いだろう。

十夜さんが辛い目に合わなかったら俺達は出会っていないから…。

それに、あの男は無意識に十夜さんを小夜さんじゃないと認識していたハズだ。

その証拠に前から犯す事は無かった。

前からだとどうしても男の証が見えるからね。

その分、口でさせていたんだろう。

…いつか真実を伝えた方が良い日は来るんだろうか?

それとも、誰にも言わない方が良いんだろうか?

俺には判断がつかない…。

「…う‥ん」

頭を撫でながら寝顔を眺めていたら、十夜さんが目を覚ました。

「おはようございます」

「…はよ‥」

まだ寝ぼけていて、意識がはっきりしないのか、すり寄ってきてめちゃくちゃ可愛い。

俺は気持ちを切り替えて、十夜さんを見つめる。

暫くそのままやりたいようにさせて、軽く抱き締める。

…って、誰だと思ってすり寄ってます?

「…ひで‥おみ」

「はい?」

あ、ちゃんと解ってますね。

「…今更だけど、お前は…こんな俺で‥ホントに…いいのか?」

また、この人は…。

「こんなじゃないです!俺はこの十夜さん以外欲しくありません」

確認するように聞かれたから即答する。

今更無かった事にはしないから!

「いいんですよ。十夜さんは俺に甘やかされて、でろっでろに依存してれば」

顔を覗き込むように額同士をくっつけて言い切ってやる。

「おまっ…それもどうなんだ?」

「最高に幸せですが、何か?」

俺、間違ってない!

キリリッ!!

「…それなら、めちゃくちゃ甘えてやるからな!覚悟しろよ?」

十夜さんは言いながらキスをしてくれる。

ちょっと、ほほを染めて涙目なのが可愛い。

「大歓迎です♪何度でも言いたい。十夜さん、大好き」

「…ん。俺‥も…はぁ‥んっ…ちょ、ま‥ん‥待てって‥」

何度かキスをしていたら、待ったがかかった。

「十夜さん?」

「…ちゃん‥と、聞いて?」

「はい」

十夜さんは1回息を思いっきり吸うと、俺の目をしっかり見つめた。

「俺も秀臣が好き。好きになってくれてありがとう。だぃ‥す‥き…」

最後は涙声になっちゃったけど、しっかり伝わりましたよ。

「も、ホント可愛くて堪らない!愛してる!」

俺は十夜さんに覆い被さるように抱き付いて、唇を奪いながら時間をかけて十夜さんの中に侵入していく。

「んぁ‥んん‥はぁ…ぁ‥ひ‥でぉ…みぃ…」

舌を絡めとりながらとろっとろに溶けた顔の十夜さんを見る。

縋ってくれる背中の爪痕が幸せの証だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

貧乏貴族の末っ子は、取り巻きのひとりをやめようと思う

まと
BL
色々と煩わしい為、そろそろ公爵家跡取りエルの取り巻きをこっそりやめようかなと一人立ちを決心するファヌ。 新たな出逢いやモテ道に期待を胸に膨らませ、ファヌは輝く学園生活をおくれるのか??!! ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。

幼なじみ祭

葉津緒
BL
親衛隊による制裁の現場で、意外な出来事が。 王道・脇役・平凡・嫌われ→?

【BL】齢1200の龍王と精を吸わないオタ淫魔

三崎こはく
BL
人間と魔族が共存する国ドラキス王国。その国の頂に立つは、世にも珍しいドラゴンの血を引く王。そしてその王の一番の友人は…本と魔法に目がないオタク淫魔(男)! 友人関係の2人が、もどかしいくらいにゆっくりと距離を縮めていくお話。 【第1章 緋糸たぐる御伽姫】「俺は縁談など御免!」王様のワガママにより2週間限りの婚約者を演じることとなったオタ淫魔ゼータ。王様の傍でにこにこ笑っているだけの簡単なお仕事かと思いきや、どうも無視できない陰謀が渦巻いている様子…? 【第2章 無垢と笑えよサイコパス】 監禁有、流血有のドキドキ新婚旅行編 【第3章 埋もれるほどの花びらを君に】 ほのぼの短編 【第4章 十字架、銀弾、濡羽のはおり】 ゼータの貞操を狙う危険な男、登場 【第5章 荒城の夜半に龍が啼く】 悪意の渦巻く隣国の城へ 【第6章 安らかに眠れ、恐ろしくも美しい緋色の龍よ】 貴方の骸を探して旅に出る 【第7章 はないちもんめ】 あなたが欲しい 【第8章 終章】 短編詰め合わせ ※表紙イラストは岡保佐優様に描いていただきました♪

管理委員長なんてさっさと辞めたい

白鳩 唯斗
BL
王道転校生のせいでストレス爆発寸前の主人公のお話

【完】僕の弟と僕の護衛騎士は、赤い糸で繋がっている

たまとら
BL
赤い糸が見えるキリルは、自分には糸が無いのでやさぐれ気味です

風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実
BL
名家の子息ばかりが集まる全寮制の男子校、鳳凰学園。 俺、佐倉伊織はその学園で風紀“副”委員長をしている。 そう、“副”だ。あくまでも“副”。 だから、ここが王道学園だろうがなんだろうが俺はモブでしかない────はずなのに! BL王道学園に入ってしまった男子高校生がモブであろうとしているのに、主要キャラ達から逃げられない話。

元会計には首輪がついている

笹坂寧
BL
 【帝華学園】の生徒会会計を務め、無事卒業した俺。  こんな恐ろしい学園とっとと離れてやる、とばかりに一般入試を受けて遠く遠くの公立高校に入学し、無事、魔の学園から逃げ果すことが出来た。  卒業式から入学式前日まで、誘拐やらなんやらされて無理くり連れ戻されでもしないか戦々恐々としながら前後左右全ての気配を探って生き抜いた毎日が今では懐かしい。  俺は無事高校に入学を果たし、無事毎日登学して講義を受け、無事部活に入って友人を作り、無事彼女まで手に入れることが出来たのだ。    なのに。 「逃げられると思ったか?颯夏」 「ーーな、んで」  目の前に立つ恐ろしい男を前にして、こうも身体が動かないなんて。

処理中です...