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≪本編≫

【本編20】

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「はいっ。被害者その1。殴られて縛られて口では言えない色々な事されました」

十夜さんは勢い良く手をあげた。

明るい被害者ですね。

…ん?

色々?

え?

口では言えない?

は?

ソコントコ詳シク聞キタインデスガ…。

「ん、被害者その2。殴られて縛られて放置され、結果、脱水症状による衰弱と熱中症による意識混濁。地味に死を覚悟した。出会った時入院していた原因な」

続けて竜也さんが手を上げた。

顔や落ち着いた雰囲気の割には結構ノリいい人だよなぁ。

ん?

「ってか、死にかけたとか軽く言い過ぎじゃないですか!?」

「2回目ともなるとなぁ。慣れ?」

慣れって…2回目!?

「いやぁ!竜也死んだら後追うから!」

「「はいはい」」

本気なのかふざけてるのか、今一解らないけど、振り返った高千穂さんが竜也さんに抱きついてそれ以上は聞けなかった。

仲が良いのでちょっと羨ましいとか思ったりして。

…はっ。

だから、よるは十夜さんで男なんだって!

「そういえば、高千穂さんは元気でしたよね?被害には合ってないんですか?」

「あぁ、取り押さえたのこいつ」

「はい!当時、合気道二段。柔道初段。剣道、空手共に一段でっす♪“十夜に何してんだゴラァ”って叫んだら、襲ってきたので遠慮なく叩きのめしました♪」

高千穂さんも勢い良く手を上げた。

「警察の人達に“やり過ぎ”とか言われちゃった♪てへぺろ♪」

「…オツヨインデスネ」

「滅多に怒る事はないけど、怒らせんなよ?怪我するからな」

「やだなぁ、十夜。まるで僕が危険人物みたいじゃない~」

「「みたいじゃなくて、危険人物そのものだから」」

十夜さんと竜也さんは揃って肯定した。

怒らせちゃ駄目な人間って漫画や小説の中の話だけだと思っていました…。

「まぁ、そんな感じで逮捕されて現在留置所にいるんだが、最近仮出所が認められたらしい。って言うのを撮影直前に聞いたんだ」

あ、そういや竜也さんは撮影の時最初いなかったな。

「もちろん保護観察処分で、僕達に接触禁止の処置は取られるし、警察の監視も付くみたいなんだけどねぇ~」

それなら心配ないんじゃないの?

「病的に俺の顔にご執心だから、接触禁止なんて関係無いと思う」

「顔…ですか?」

「「「顔」」」

顔…確かに可愛いですもんね。

喋らなければ美少女…って、あれ?

「そう言えば、入院していた時に筆談だったのは何で?」

「ああ、ショックで一時的に声が出なくなってたんだよ。事件のマスコミ対策の為に名前も偽名で入院してたからな」

「そうだったんですね」

それで、嫌な事があったから草むしりして気をまぎらわせていたんですね?

「今回のYORUとの写真がメディアに流れればお前に接触を図ってくるかもしれない」

「ホントに危険なんだ。“ご都合主義の超非常識な病んでる人”だから…まさか、こんなに早く出て来るとは思ってなくて…わりぃ。巻き込んだ…」

「僕が守るからね!」

3人は真剣な顔でどこか憤りを感じているみたい。

口調はわざと明るくしてるみたいだけど、3人共目が笑ってない。

後、高千穂さんみたいな美人に守られるのも微妙な気分になるけどね。

お強いらしいから、そこは任せよう。

「撮影について、助かったのはこっちなんで気にしないで下さい。多分、撮影が延期や中止になっていたらキャンセル料で莫大な違約金がかかっていたと思うし。寧ろ、俺に何も言わずに無視する事も出来たのに、ちゃんと事情を話してくれるし、心配してくれるし、守ってくれるみたいだし、遠慮無く巻き込んで下さい」

これは本心。

それと半分ぐらいは下心。

楽しかった思い出を思い出で終わらせたくない我が儘な俺の勝手な意見。

「秀臣。お前イケメンだな!」

十夜さんが突進して抱き付いてきた。

「あの、ちょっ!」

思わず抱き止めたけど、手のやり場に困る。

撮影時も葉月さんの時も思ったけど、細いっ!

軽い!

まつげ長い!

素っぴんの方が可愛……。

つい、魅入ってしまう。

「意外と倒れなかったな」

「十夜は猪突猛進だから気を付けてね」

「否定はしない!寧ろ腕を広げて待てっ!」

って事は何度でも抱き付いてくれるって事で…。

どうしよう。

…俺、吹っ切れないかもしれない。

「…畏マリマシタ」

それしか言えない。

十夜さんの無茶振りにどこまで対応出来るかな…。

でも、この人達がどんな経験をしたのか解らないけど、巻き込まれる事で一緒にいられるならと、抱き付いてきた十夜さんにドキドキしながら安易に考えていた。
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