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≪本編≫
【本編17】
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葉月さんを見送った後、母さんはまだ仕事があるからと言ってタクシーチケットをくれた。
どうせ今日も事務所近くのマンションに泊まって帰ってこないんだろう。
俺は素直にそれを受けとり、呼んであったタクシーに乗った。
ちょっと遠いけど、行き先は昔入院していた病院。
2人で草むしりした裏庭。
かなり遅くなっちゃったけど、待っていてくれるだろうか?
気ばかりが焦るが、意外と降車場から遠かった。
たどり着くと、あの頃のようによるが草むしりしていた。
懐かしい。
うん。
でもね。
「…懐かしいけどその格好だと軽くホラーだよ?」
いや、ホント。
暗闇の中でゴスロリが草むしりってww
「「ぶはっww」」
暗がりにいたから気付かなかったけど、ちゃんと高千穂さんと竜也さんもいた。
《祝ってやる~》
「何をだ?祝ってどうする?」
「字間違ってるからw」
懐かしいやり取り。
大体よるか高千穂さんがバカをやって、竜也さんが突っ込みをする。
バカをやらなかった方が追い討ちをかける。
「さて、バカは放っておいて本題に入るぞ」
竜也さんが急に声色を変えた。
「YORUに付き纏う奴がいる。障害沙汰を起こして逮捕された程ヤバイ奴だ。だから、お前は誰に何を聞かれても俺達の事は知らないと通してくれ。…今後も関わりは持たない。この場を離れたら俺達の事は忘れろ」
竜也さんが一気に言った言葉が頭に入って来なくて混乱する。
「え?」
「関わり合いにならない方がお前の為だ」
「僕達の事は忘れて幸せになって欲しい」
忘れろ?
関わるな?
「…嫌です。せっかく会えたのに。忘れろなんて…」
突き放された感覚に胸が痛くなったが、泣くつもりはない。
寧ろ腹が立った。
「でもね、君の為なんだよ?」
高千穂さんの真剣な眼差しに怯みそうになるけど、負けてられない。
「ずっと皆に会いたかった…。あの時出来なかったお礼だって言いたかった。いつか会えるかもしれないって、何度もここに来た!」
ずっとよるが好きだった。
…これはまだ秘密。
「今更無かった事には出来ません。二度と会わないって言うなら、昔仲良くしていたって関係者各所に言いふらしてやる!」
俺はまるで駄々っ子のように拙い脅し文句を言うしかなかった。
「自ら危険に足を突っ込むのか?」
「…え?…その…声」
さっきまで一緒だった人の声が…。
葉月さん?
よるから?
いや、それよりも。
「昔、困っていたのを助けてもらって、今、また助けてもらったのに…」
とにかく、答える。
考えるのは後だ。
「はい、さようなら。なんて言えない」
黙ったら終わる。
「よるなら言える?」
そんな気がした。
「…言えない。降参だ」
やっぱり、よるから葉月さんの声がする。
「こら。ルール違反だ」
「そうだよ?喋っちゃ駄目じゃん」
「ん…」
よるはばつが悪そうに俯いた。
「で、よる…葉月さんなの?」
「しかも、盛大にバレてるぞ?」
「どうする?今ならまだ誤魔化せるかなぁ?」
恐る恐る聞いてみるけど、2人は誤魔化そうとしていた。
「いや、無理ですよ?そう言えば、メイク前にも控え室で喋りましたよね?」
「ちっ、バレたか。殴ったら忘れない?」
「ちょっ?舌打ち!?殴るって、よる!?」
よるは意外と男前のようだ…じゃなくて、男性‥って事なんだよね?
「だから賭けにならないって言っただろ?」
「絶対、聞き分けないって解ってたもんね~」
《ばかなこほどかわいい?》
「は?え?何?いや、今更筆談しないで下さい!」
何でまた筆談?
にこやかにメモ帳を差し出すのやめて!
「悪いな、試した。障害野郎の事は本当の話だ」
「いや、竜也さん?賭けにならないって思いっきり言ってますよ?」
「駄目じゃんww」
《だめじゃんww》
「いや、だから筆談しないで!ちゃんと説明して?って、あ!葉月さんのメモの違和感解った!よく見たら筆跡一緒!」
やっと解った。
あの時の違和感の正体。
「そこは盲点だったな」
「ありゃ。今からでも女の子が使うような丸文字練習する?」
《それはかんべんして♡》
いや、だから何で筆談するの…。
もう、意味が解らない。
でも、さっきの突き放された時の胸の痛みはもう無かった。
代わりに暖かいものが込み上げてきたが、またすぐに違う意味で胸が痛くて苦しくなった。
…初恋は実らないと言うけど、なんだか、実った果実をもぎ取られて叩き落とされた気分だ。
よる…ホントに男性なの?
どうせ今日も事務所近くのマンションに泊まって帰ってこないんだろう。
俺は素直にそれを受けとり、呼んであったタクシーに乗った。
ちょっと遠いけど、行き先は昔入院していた病院。
2人で草むしりした裏庭。
かなり遅くなっちゃったけど、待っていてくれるだろうか?
気ばかりが焦るが、意外と降車場から遠かった。
たどり着くと、あの頃のようによるが草むしりしていた。
懐かしい。
うん。
でもね。
「…懐かしいけどその格好だと軽くホラーだよ?」
いや、ホント。
暗闇の中でゴスロリが草むしりってww
「「ぶはっww」」
暗がりにいたから気付かなかったけど、ちゃんと高千穂さんと竜也さんもいた。
《祝ってやる~》
「何をだ?祝ってどうする?」
「字間違ってるからw」
懐かしいやり取り。
大体よるか高千穂さんがバカをやって、竜也さんが突っ込みをする。
バカをやらなかった方が追い討ちをかける。
「さて、バカは放っておいて本題に入るぞ」
竜也さんが急に声色を変えた。
「YORUに付き纏う奴がいる。障害沙汰を起こして逮捕された程ヤバイ奴だ。だから、お前は誰に何を聞かれても俺達の事は知らないと通してくれ。…今後も関わりは持たない。この場を離れたら俺達の事は忘れろ」
竜也さんが一気に言った言葉が頭に入って来なくて混乱する。
「え?」
「関わり合いにならない方がお前の為だ」
「僕達の事は忘れて幸せになって欲しい」
忘れろ?
関わるな?
「…嫌です。せっかく会えたのに。忘れろなんて…」
突き放された感覚に胸が痛くなったが、泣くつもりはない。
寧ろ腹が立った。
「でもね、君の為なんだよ?」
高千穂さんの真剣な眼差しに怯みそうになるけど、負けてられない。
「ずっと皆に会いたかった…。あの時出来なかったお礼だって言いたかった。いつか会えるかもしれないって、何度もここに来た!」
ずっとよるが好きだった。
…これはまだ秘密。
「今更無かった事には出来ません。二度と会わないって言うなら、昔仲良くしていたって関係者各所に言いふらしてやる!」
俺はまるで駄々っ子のように拙い脅し文句を言うしかなかった。
「自ら危険に足を突っ込むのか?」
「…え?…その…声」
さっきまで一緒だった人の声が…。
葉月さん?
よるから?
いや、それよりも。
「昔、困っていたのを助けてもらって、今、また助けてもらったのに…」
とにかく、答える。
考えるのは後だ。
「はい、さようなら。なんて言えない」
黙ったら終わる。
「よるなら言える?」
そんな気がした。
「…言えない。降参だ」
やっぱり、よるから葉月さんの声がする。
「こら。ルール違反だ」
「そうだよ?喋っちゃ駄目じゃん」
「ん…」
よるはばつが悪そうに俯いた。
「で、よる…葉月さんなの?」
「しかも、盛大にバレてるぞ?」
「どうする?今ならまだ誤魔化せるかなぁ?」
恐る恐る聞いてみるけど、2人は誤魔化そうとしていた。
「いや、無理ですよ?そう言えば、メイク前にも控え室で喋りましたよね?」
「ちっ、バレたか。殴ったら忘れない?」
「ちょっ?舌打ち!?殴るって、よる!?」
よるは意外と男前のようだ…じゃなくて、男性‥って事なんだよね?
「だから賭けにならないって言っただろ?」
「絶対、聞き分けないって解ってたもんね~」
《ばかなこほどかわいい?》
「は?え?何?いや、今更筆談しないで下さい!」
何でまた筆談?
にこやかにメモ帳を差し出すのやめて!
「悪いな、試した。障害野郎の事は本当の話だ」
「いや、竜也さん?賭けにならないって思いっきり言ってますよ?」
「駄目じゃんww」
《だめじゃんww》
「いや、だから筆談しないで!ちゃんと説明して?って、あ!葉月さんのメモの違和感解った!よく見たら筆跡一緒!」
やっと解った。
あの時の違和感の正体。
「そこは盲点だったな」
「ありゃ。今からでも女の子が使うような丸文字練習する?」
《それはかんべんして♡》
いや、だから何で筆談するの…。
もう、意味が解らない。
でも、さっきの突き放された時の胸の痛みはもう無かった。
代わりに暖かいものが込み上げてきたが、またすぐに違う意味で胸が痛くて苦しくなった。
…初恋は実らないと言うけど、なんだか、実った果実をもぎ取られて叩き落とされた気分だ。
よる…ホントに男性なの?
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