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≪本編≫

【本編6】

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【十夜side】

俺は電話を掛けに行く振りをして駐車場に向かった。

は~。呼び出された時は何かと思ったけど、まさかの再会&お仕事依頼。

くっそダサいコンセプトに感謝だな♪

ってか、YORUが憧れの人って…じゃぁ、何であの時来なかったんだよ…。

いや、今は急ぐか。

俺は撮影所の駐車場に止まっている一台のハイエースに近付いて窓をノックする。

「…何だ?忘れ物か?」

竜也が顔を出しながら鍵を開けてくれる。

俺は後部座席のドアをスライドして開けると、車に乗り込んだ。

「眼鏡はどうした?」

「あ。んと、取り敢えず」

今回は俺を捜す連絡網が竜也に回ってきて、そのまま配達された。

前回同様こうして車で待っていてくれる。

「カクカクシカジカでYORU出動案件。隊員は速やかに集合せよ!」

「解った」

竜也は全く説明してないのに電話をかけ始めた。

『もしもーし?』

電話の相手はちぃ、佐倉高千穂。

こっちも遠い親戚に当たる、大事な幼馴染み。

「YORU案件、詳細はこれから」

竜也はそれだけ言って携帯を置いた。

『は~い』

「で?」

「うん。実はね…」

俺は呼ばれてからの一連の流れを話した。

『社長さん、昔のままいい人だね』

「だな」

「うん。探してるのがYORUなら助けたい。じぃちゃんの教えに従って“困ってる女性は出来る範囲で助ける!”を実行しようと思う! 」

『僕は賛成だよ。近いからそっち向かうけど、移動中だから連絡はそっちでよろ~』

そう言ってちぃは電話を切った。

「爺さんの教えには従わないとな。一応聞くが、あいつに避けられる可能性もあるが…いいんだな?」

俺達3人は秀臣が8歳の時に全員会っている。

もちろん、その時に母親である社長さんにも会っていた。

社長さんは秀臣と仲良くしていた俺達に「いつも、秀臣と遊んでくれてありがとう」ってよく差し入れをくれた。

「…うん。きっと大丈夫な気がするから。頼んでもいい?」

「お前が決めたなら問題無い。その事務所の連絡先は解るか?」

「ん、これ社長さんの名刺」

竜也に名刺を渡すと、後部座席に移って電話を始めた。

俺も車の一番後ろのトランクルームに行って、YORUになる為に車の四方のカーテンを閉める。

幻でもツチノコでもCGでもねぇよ?

高校の卒業祝いだと言ってじぃちゃんにプレゼントされたのは、意味不明な事に女性用下着1ダースだった…。

そして、専門学校に入学した時にじぃちゃんが祝いだと言ってプレゼントしてくれたのがゴシックロリータと呼ばれる女性用衣装が一式…いや、段ボール一箱…。

じぃちゃんに頭が上がらない俺は、言われるまま女装するしかなかった…。

いや、途中から全員ノリノリだったけどさ…。

その女装写真をじぃちゃんが冗談で広めたせいで、YORUとゆー名前でモデルをやる羽目になったのは18歳の時だ。

それ以来、時々女装してモデルをしていた。

何故かモデルをやった商品が馬鹿売れするという偶然が重なり、YORUを使うと商品が売れるという意味不明なジンクスが付いてしまい、依頼が殺到。

幻だと言われたのは、もちろん素性が明らかにならない事もあったが、中々連絡が取れない事が要因だった。

俺の携帯がパンクして繋がり難くなり、面倒になった俺がそのまま携帯を解約したせいだろう。

…だからって、CGは無いわww

今は伝を辿って竜也か、ちぃに辿り着かない限り、依頼は受けない事にしている。

2人が居ないとYORUは不完全だから。

俺達は3人でYORUになる。

今回は特例だ。

昔お世話になった人に恩を返せるなら、女装だって何だってするさ。
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