5 / 69
≪本編≫
【本編5】
しおりを挟む
「そんな、ツチノコじゃないんだから…」
「…ツチノコってwww」
俺は葉月さんの言葉に笑った。
「まぁ、確かに幻と言われる存在ですけどね。…実はCGだとまで言われてますよ?w」
実際に会った事が無いモデル仲間やスタッフからはそんな声が出ていた。
「ぶっはwどんだけだよww」
あれ?会話続いてる。
それにこの人、段々敬語が取れちゃってる。
こっちが素かな?
声じゃ判断出来無いけど、喋ってると確かに男の人…かな?
「…じゃあ、無名の新人に向かって真摯に頭を下げてくれた社長さんに、敬意を表するか」
「え?」
葉月さんはそう言って部屋を見渡すと、女性の衣装のハンガーラックの方に歩いて行った。
「女性側の衣装はここにあるので全部?」
「はい」
「ふ~ん。並び順でペアになってるのかな?」
「たぶん。今日はさっきの朝倉さんって言うヘアメイクがスタイリスト込みで全部仕切っていたので…葉月さん?」
葉月さんは丹念に女性用の衣装を一つづつ丁寧に持ち上げてはラックに戻すを繰り返す。
「全部で3着ね。よし、ヘアメイクやろう。鏡の前座って」
葉月さんは前回同様てきぱきと準備を始めて、約30分で俺の支度を整えた。
やっぱりこの人の手、気持ちいい。
短時間で施された技術は流石で、朝倉さんがやってくれたヘアメイクとは全然違った。
前回の時みたく目元の印象を変えて、髪型も少し落ち着いた感じに仕上げられた。
小道具とばかりに自分が着けていたダサい黒縁眼鏡を掛けてくれる。
「あれ?」
「伊達だよ。違和感あるなら外して」
これ、伊達眼鏡だったのか。
鏡に写る自分を見る。
ああ、確かにこれなら“冴えない少年”だ。
「どう?」
朝倉さんのメイクはどうやっても“俺”だった。
「凄い…俺、超ダサいw」
「だろ?ww」
近くにいた葉月さんの顔がチラッと見えたけど、すぐに離れてしまって素顔は確認出来なかった。
何か、今、変な感じした…。
何だろ?
葉月さんはそのままノートと色鉛筆?を取り出して、何やら書き込んでいた。
それが終わるのを待って、一緒に控え室から出る。
「ちょっと電話してくるから、先に撮影所に戻ってて」
「あ、電話なら俺の携帯をどうぞ?」
確かこの人携帯持ってなかったよね?
「あ~、いや、知らない番号だと出てもらえないからいい。公衆電話なら俺だって解ってくれるから、気持ちだけありがとう」
控え室に戻ろうとした俺を止めて、葉月さんは言い辛そうに苦笑いした。
「なるほど。そうですか、それじゃあ先に戻ってますね」
途中で別れて、俺はスタジオに向かう。
「時間かかるかもしれないから撮影始まっても気にしないでくれ。メイクとか髪型はさっきのノートに書いてあるから!」
「えっ?」
そう言って葉月さんは公衆電話がある入り口の方に向かって行った。
いや、相手居ないんだから撮影始まらないですよ?
そう思いながらスタジオに戻ると、カメラマンの山田さんが気付いて近寄ってきた。
「すみません。ご迷惑をおかけ…「おお!いいね!全然違うよ!」…あの?」
俺の謝罪を遮って大声で絶賛してくれたので、クライアントの中澤さんやその秘書、山田さんのアシスタントさん達も見に来た。
「本当だ。さっきと全然違うじゃないか!これこれ、これだよ!」
「確かに、冴えない少年だ!」
「これ、さっきの子がやったのかい?」
「はい」
「いい腕だね。先日のフレグランスの撮影もあの子がやったとか言ってたね?」
「はい。ピンチヒッターで急な話だったんですが、理想的に仕上げて頂きました」
「へぇ、言っちゃなんだが、本人はパっとしないのにな~」
「それは言っちゃ駄目だろう?」
「いや、だからこそこのOMIくんが出来上がったんじゃないのか?」
「…確かに」
皆がクスクス笑いながら仕上がりを誉めてくれる。
葉月さん、ホントすごいよ!
メイク一つで、さっきまでのピリピリイライラムードが緩和されるなんて!
…若干、貴方の容姿で笑いが起こってますけどねw
「…ツチノコってwww」
俺は葉月さんの言葉に笑った。
「まぁ、確かに幻と言われる存在ですけどね。…実はCGだとまで言われてますよ?w」
実際に会った事が無いモデル仲間やスタッフからはそんな声が出ていた。
「ぶっはwどんだけだよww」
あれ?会話続いてる。
それにこの人、段々敬語が取れちゃってる。
こっちが素かな?
声じゃ判断出来無いけど、喋ってると確かに男の人…かな?
「…じゃあ、無名の新人に向かって真摯に頭を下げてくれた社長さんに、敬意を表するか」
「え?」
葉月さんはそう言って部屋を見渡すと、女性の衣装のハンガーラックの方に歩いて行った。
「女性側の衣装はここにあるので全部?」
「はい」
「ふ~ん。並び順でペアになってるのかな?」
「たぶん。今日はさっきの朝倉さんって言うヘアメイクがスタイリスト込みで全部仕切っていたので…葉月さん?」
葉月さんは丹念に女性用の衣装を一つづつ丁寧に持ち上げてはラックに戻すを繰り返す。
「全部で3着ね。よし、ヘアメイクやろう。鏡の前座って」
葉月さんは前回同様てきぱきと準備を始めて、約30分で俺の支度を整えた。
やっぱりこの人の手、気持ちいい。
短時間で施された技術は流石で、朝倉さんがやってくれたヘアメイクとは全然違った。
前回の時みたく目元の印象を変えて、髪型も少し落ち着いた感じに仕上げられた。
小道具とばかりに自分が着けていたダサい黒縁眼鏡を掛けてくれる。
「あれ?」
「伊達だよ。違和感あるなら外して」
これ、伊達眼鏡だったのか。
鏡に写る自分を見る。
ああ、確かにこれなら“冴えない少年”だ。
「どう?」
朝倉さんのメイクはどうやっても“俺”だった。
「凄い…俺、超ダサいw」
「だろ?ww」
近くにいた葉月さんの顔がチラッと見えたけど、すぐに離れてしまって素顔は確認出来なかった。
何か、今、変な感じした…。
何だろ?
葉月さんはそのままノートと色鉛筆?を取り出して、何やら書き込んでいた。
それが終わるのを待って、一緒に控え室から出る。
「ちょっと電話してくるから、先に撮影所に戻ってて」
「あ、電話なら俺の携帯をどうぞ?」
確かこの人携帯持ってなかったよね?
「あ~、いや、知らない番号だと出てもらえないからいい。公衆電話なら俺だって解ってくれるから、気持ちだけありがとう」
控え室に戻ろうとした俺を止めて、葉月さんは言い辛そうに苦笑いした。
「なるほど。そうですか、それじゃあ先に戻ってますね」
途中で別れて、俺はスタジオに向かう。
「時間かかるかもしれないから撮影始まっても気にしないでくれ。メイクとか髪型はさっきのノートに書いてあるから!」
「えっ?」
そう言って葉月さんは公衆電話がある入り口の方に向かって行った。
いや、相手居ないんだから撮影始まらないですよ?
そう思いながらスタジオに戻ると、カメラマンの山田さんが気付いて近寄ってきた。
「すみません。ご迷惑をおかけ…「おお!いいね!全然違うよ!」…あの?」
俺の謝罪を遮って大声で絶賛してくれたので、クライアントの中澤さんやその秘書、山田さんのアシスタントさん達も見に来た。
「本当だ。さっきと全然違うじゃないか!これこれ、これだよ!」
「確かに、冴えない少年だ!」
「これ、さっきの子がやったのかい?」
「はい」
「いい腕だね。先日のフレグランスの撮影もあの子がやったとか言ってたね?」
「はい。ピンチヒッターで急な話だったんですが、理想的に仕上げて頂きました」
「へぇ、言っちゃなんだが、本人はパっとしないのにな~」
「それは言っちゃ駄目だろう?」
「いや、だからこそこのOMIくんが出来上がったんじゃないのか?」
「…確かに」
皆がクスクス笑いながら仕上がりを誉めてくれる。
葉月さん、ホントすごいよ!
メイク一つで、さっきまでのピリピリイライラムードが緩和されるなんて!
…若干、貴方の容姿で笑いが起こってますけどねw
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
不幸体質っすけど役に立って、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
気になるあの子は隅っこに
あむ
BL
「気になるあの子は隅っこに」 颯太はクラスの中心的存在だが、静かに本を読んでいる文也にひそかに興味を持っています。ある日、思い切って文也に話しかけたことをきっかけに、二人の距離は少しずつ縮まっていきます。友情が芽生え、互いに影響を与え合う二人のやり取りが描かれる物語です。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる