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≪本編≫
【本編4】
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葉月さんが来てくれるのはいいが、今度は相手モデルで問題が起きた。
小柄でスレンダーな女性モデルはウチの事務所には居ない。
今から探しても見つけられるかどうか…。
「「…YORU」」
俺と母さんは同時に呟いた。
YORUは小柄でスレンダーな超美少女モデルで、余程の伝が無い限り依頼出来ないという幻のモデル。
一部ではCGだとまで言われていて、彼女を使うと商品が売れるというジンクスまで持っている。
中澤さんも山田さんも彼女を知っているのか食いついた。
彼女に依頼出来たなら今回の事は水に流してくれるし、帰っていったモデル事務所にも事情を説明して、波風が立たないようにしてくれるとまで言われた。
撮影所はペアの撮影が終わった後に、俺だけソロで撮影するつもりでいたから元々貸しきりだったけど、俺が未成年だからリミットは今日の22時までだ。
今は15時28分。
朝から順調に撮影出来ていれば、相手のモデルは帰っていて当たり前の時間だ。
そんな中、葉月さんが到着した。
「すみません、葉月です。呼ばれていると聞いたんですが、前回の事で問題でもありましたか?」
すごく急いでくれたらしく、髪のボサボサ加減が前回より酷かった。
「貴方が葉月さんね。小野田モデル事務所、社長の小野田です。急に呼びつけてごめんなさい。ウチのヘアメイクじゃどうしてもクライアントの中澤様のリクエストにお応え出来なくて困っているの。前回の話を聞いて、是非貴方にお願いしたくて連絡を取らせて頂きました」
母さんは説明を混ぜて自己紹介をし、名刺を手渡していた。
「…そうですか」
葉月さんはほっとして名刺を受け取っていた。
「貴方さえ良ければ今回も仕事を引き受けて貰えないかしら?…いいえ、違うわね。貴方にしか頼れないの。どうか、引き受けて下さいお願いします」
母さんは上から目線で言ってしまった言葉を言い直して、葉月さんに頭を下げた。
「事情は解りました。頭を上げて下さい。俺で良ければお受けします」
葉月さんの顔は相変わらず解らなかったが“俺”って事は男なんだな。
やっと性別が解った。
「こんにちは。今回もよろしくお願いします」
俺も挨拶しておく。
「こんにちは。お願いします」
葉月さんも返してくれた。
「慌ただしくて申し訳ないけれど、何としても探さなきゃならないモデルがいるの!私は一旦失礼するわね」
そう言って母さんは朝倉さんを連れて帰っていった。
「葉月さん、今日のコンセプトと流れを説明します。控え室にお願いします」
「はい」
取り残された俺達は取り敢えずヘアメイクをする為に控え室に向かった。
「商品はこのリップ3本ね。こっちのコンセプトは人形のような少女に恋している冴えない少年ね。少年は彼女にキスして貰いたくて段々垢抜けていく、と…」
中澤さんから渡されたコンセプトの紙を葉月さんに渡すと、声を出して読み始めた。
…最初に聞いた時も思ったけど、これ考えたの誰だ?ベタすぎないか?
「…ベタすぎだろww」
葉月さん、同じ事思ってたw
「うーん、相手の人見てからのがイメージ湧きやすいんだけど、相手の人はどこにいます?」
「それが…」
俺は今日の出来事を全て葉月さんに話した。
「…なるほど。じゃあ、社長さんはYORUを捜しに行ったんだ?」
「葉月さん、YORUの事知ってるんですか?」
「あ~、一応?」
あ、ヘアメイクやってるんだから噂の人気モデルはチェックしてるよね。
「まぁ、見つかればクライアントさんもカメラマンさんも喜んでくれるし、俺も憧れの人なんで、共演出来たらラッキーなんですけどね。何せ幻のモデルと言われてますから、見つけるのは難しいでしょうね」
俺はかつての病院を思い出す。
モデルとしての可憐なイメージより、元気に走り回る彼女。
会えるなら会いたい…。
小柄でスレンダーな女性モデルはウチの事務所には居ない。
今から探しても見つけられるかどうか…。
「「…YORU」」
俺と母さんは同時に呟いた。
YORUは小柄でスレンダーな超美少女モデルで、余程の伝が無い限り依頼出来ないという幻のモデル。
一部ではCGだとまで言われていて、彼女を使うと商品が売れるというジンクスまで持っている。
中澤さんも山田さんも彼女を知っているのか食いついた。
彼女に依頼出来たなら今回の事は水に流してくれるし、帰っていったモデル事務所にも事情を説明して、波風が立たないようにしてくれるとまで言われた。
撮影所はペアの撮影が終わった後に、俺だけソロで撮影するつもりでいたから元々貸しきりだったけど、俺が未成年だからリミットは今日の22時までだ。
今は15時28分。
朝から順調に撮影出来ていれば、相手のモデルは帰っていて当たり前の時間だ。
そんな中、葉月さんが到着した。
「すみません、葉月です。呼ばれていると聞いたんですが、前回の事で問題でもありましたか?」
すごく急いでくれたらしく、髪のボサボサ加減が前回より酷かった。
「貴方が葉月さんね。小野田モデル事務所、社長の小野田です。急に呼びつけてごめんなさい。ウチのヘアメイクじゃどうしてもクライアントの中澤様のリクエストにお応え出来なくて困っているの。前回の話を聞いて、是非貴方にお願いしたくて連絡を取らせて頂きました」
母さんは説明を混ぜて自己紹介をし、名刺を手渡していた。
「…そうですか」
葉月さんはほっとして名刺を受け取っていた。
「貴方さえ良ければ今回も仕事を引き受けて貰えないかしら?…いいえ、違うわね。貴方にしか頼れないの。どうか、引き受けて下さいお願いします」
母さんは上から目線で言ってしまった言葉を言い直して、葉月さんに頭を下げた。
「事情は解りました。頭を上げて下さい。俺で良ければお受けします」
葉月さんの顔は相変わらず解らなかったが“俺”って事は男なんだな。
やっと性別が解った。
「こんにちは。今回もよろしくお願いします」
俺も挨拶しておく。
「こんにちは。お願いします」
葉月さんも返してくれた。
「慌ただしくて申し訳ないけれど、何としても探さなきゃならないモデルがいるの!私は一旦失礼するわね」
そう言って母さんは朝倉さんを連れて帰っていった。
「葉月さん、今日のコンセプトと流れを説明します。控え室にお願いします」
「はい」
取り残された俺達は取り敢えずヘアメイクをする為に控え室に向かった。
「商品はこのリップ3本ね。こっちのコンセプトは人形のような少女に恋している冴えない少年ね。少年は彼女にキスして貰いたくて段々垢抜けていく、と…」
中澤さんから渡されたコンセプトの紙を葉月さんに渡すと、声を出して読み始めた。
…最初に聞いた時も思ったけど、これ考えたの誰だ?ベタすぎないか?
「…ベタすぎだろww」
葉月さん、同じ事思ってたw
「うーん、相手の人見てからのがイメージ湧きやすいんだけど、相手の人はどこにいます?」
「それが…」
俺は今日の出来事を全て葉月さんに話した。
「…なるほど。じゃあ、社長さんはYORUを捜しに行ったんだ?」
「葉月さん、YORUの事知ってるんですか?」
「あ~、一応?」
あ、ヘアメイクやってるんだから噂の人気モデルはチェックしてるよね。
「まぁ、見つかればクライアントさんもカメラマンさんも喜んでくれるし、俺も憧れの人なんで、共演出来たらラッキーなんですけどね。何せ幻のモデルと言われてますから、見つけるのは難しいでしょうね」
俺はかつての病院を思い出す。
モデルとしての可憐なイメージより、元気に走り回る彼女。
会えるなら会いたい…。
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