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海と鳥居と桜
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海と鳥居と桜
四月がまた来た。
その度に、私はこの島に来る。
赤いラインが入ったフェリーに乗って、海を渡る。
外に出て新鮮な空気を吸うと、磯の香りが鼻をくすぐる。その度に私は帰ってきたと感じて、嬉しい。心が軽くなる。
海の風は冷たくて、寒い。
周りを見渡さなくても視界に入る観光客。最近は特に外国人の観光客も増えた。
カメラを構える先には、島の象徴の大鳥居。
私はそれを何度見たことか。数え切れないほど、私はこの島に来ている。
あっという間に島に着いた。
島に上陸すると、鹿がのんびりとした姿を見せてくれた。昔に比べると、鹿の性格は穏やかになっている気がする。そして、ずいぶん見かける頭数は減った。落ちているフンの数も。鹿せんべいを売らなくなったことも、一つの要因か。
あの頃はどこを踏んでも靴の裏にフンが付くものだから、お気に入りではない靴を履いて来たものだ。何年前の話だか。
早速向かう場所は神社。
向かう途中、お土産屋が並ぶ商店街で甘い香りが漂っている。
美味しそうな匂いに思わずお店を覗き込んでしまうが、ここは我慢。名物は帰りに買おう。
商店街を抜けると、海に浮かぶ神社の姿が見えた。
「久しぶり」
少し離れた場所から、そっと呟く。
視界に映る桜色。
見上げてみると、そこには春の色を添える桜があった。
海風に揺られて、桜色の花びらが舞う。
私はこの光景が見たかった。
青い海に、朱色の鳥居。そして、5枚の花びらを持つ桜。
海の香りを吸って、鳥居と桜を見て楽しむ。たったこれだけで、私の心が澄んだ気持ちになるのだから不思議だ。一年間溜まった黒いモヤモヤが吹き飛ばされていくのだから。今年も来てよかったと、笑顔になれる。
「おかえりなさい」
声を掛けられて、初めて気がつく。
若い女性がこちらを見て微笑んでいるのを。
「相変わらず、私が見えているのね」
「ふふっ。一人や二人くらい、見えている人がいると退屈しないでしょう?」
「生意気なことで」
私は笑った。
「仕事は? もしかしてサボっているの?」
「そんなまさか! 仕事はもう終わりました」
女性は、私を見て、ほんの僅かに切ないような、悲しいような、そんな色を帯びた目をした。
「露子さん。今年も旦那様に逢いにいらしたんですか?」
私の名前はそんな感じだったかしら。
そんなことを考えていると、女性は苦笑する。
「今年こそ逢えると良いですね」
一度も逢えていない。
ここは私達と深い因縁がある場所でもなんでもない。住んでいたわけでも、死に場所だったわけでもない。それでも私が選んだこの場所は、私達が出会ってから初めて来た場所であり、それは新婚旅行先だった。
「逢えないわよ。もう70年は過ぎたのよ? 逢えるわけがないじゃない。それに……」
「それに?」
「どこで死んだか分からない人が、ここに来ることも、ましてや覚えているとは思えないもの」
風が桜の花びらを運ぶ。
周りを見渡せば、桜の木々があちらこちらに植えられている。
「露子さんは覚えているのに、寂しいですね」
「私もいつか忘れるわ」
そう。
私もいつかは忘れる。名前を忘れ始めたように、今覚えている記憶も少しずつ削り落とされていく。そして、最後は夫のことも、私自身のことも、大切な思い出も、全て消えてしまう。風化という言葉があるように、時間が経てば経つほど、生者も死者も忘れていくことが流れというもの。
「そんな風に言わないでくださいよ」
海に向かっていく花びらを目で追っていると、女性の声が少し震えていたので視線を戻した。
「貴女が忘れてもわたしは覚えていますから。貴女が忘れてもわたしが教えますから。だから」
泣きそうな面を見せている。私の為にそんな表情をしなくてもいい。
「教えてもらわなくて結構。記憶が無くなった時が、私がこの世から消える時よ」
私は勝手に歩き出す。
彼女の横を過ぎた時、彼女の顔はくしゃくしゃと歪めていた。今にでも泣き出しそうな表情に、私も来るものがあった。心にチクッとしたものが。
「シャンとしなさい。今を生きし者よ」
すっと振り返る。
「私の為になにかをしようなんぞ、そんな考えは捨てなさい」
そして、また歩き出す。
「生きし者は、生きし者の為に行きなさい」
彼女は黙って私の後に付いて来る。
それがちょっぴり嬉しくて、心地よい。だからこそ、私にとって毒なのだ。
「前を見て、足を前に出すの。振り返ってはダメよ。振り返っていいのは、私だけだから」
そして、私は振り返る。
「あと、私とお話ししていると、周りの人から変な目で見られるわよ?」
ニッコリ微笑むと、彼女は首を横に振った。これだからこの子は。
「貴女は厄介な目を持ってしまったわね。可哀想に」
伸ばした手が触れるのは、彼女の顔。
彼女はまた首を横に振った。
「そんなことはありません。もちろん怖い思いもしたことがありますが、露子さんに逢えたことを感謝していますから」
「立派なお世辞も言えるようになっちゃって。こんなに小さかったのにね」
私は彼女と初めて会った頃を思い出しながら、子供の背丈を手で再現してみる。大袈裟に低く表現する。
「そんなに小さくないですよっ」
彼女はやっと笑った。
やはり名前を思い出せない。
こうやって思い出話に花が咲くのは、今年で最後になるかもしれない。
そんな気がしてならなかった。
「私、もう行くわ」
「そうですか……」
表情が曇る。
「途中まで、お供したらダメですか?」
眼前で両手を合わせ、懇願する。
私の何が良いんだか、理解不能な娘。
「ごめんなさいね。夫がすぐそこまで来ているの」
なんて、分かりやすい嘘をつく。
それは彼女ももちろん見破っている。
それでも、彼女は私のついた嘘に付き合ってくれる。
私は彼女を背にして歩き出す。
さようなら。
とは、言わない。
私はまたここに来たいと思っているから。
彼の為に来ていたつもりが、回数を重ねすぎて、この場所に愛着を持ってしまった。
吸えば吸うほど安心する、磯の香りを楽しみたい。
堂々と立つ鳥居の姿を見たい。
一年に限られた季節にしか見えない桜を、愛でたい。
三ついっぺんに味わえるなんて、こんな贅沢はない。
その時だった。
遠くから〝音〟が聴こえてくる。
音程が違う、複数の太鼓の音。
力強い笛の音。
そして、男性の掛け声。
「能、かしら」
ゆったりとしたテンポに、芯のある音の掛け合い。
「ああ。良い時に来たわ」
音が聞こえる方へ歩く。
もしなんてないけれど、もし叶うのならば彼と共に能を見ることができたら、忘れられない思い出の一つになっていたことだろう。
一緒に過ごす時間はたった僅かなものであっても、共に居られる幸せを感じたことは人生の宝です。
「あなた」
時代が時代だっただけに、女として綺麗に着飾ることはできなかったけど、あなたとの思い出は胸の中でいつも輝いている。長い月日が経っても色褪せることなく、抱く想いだけは、忘れない。
「私は充分幸せよ」
空を見ながら、にっこりと笑う。
四月がまた来た。
その度に、私はこの島に来る。
赤いラインが入ったフェリーに乗って、海を渡る。
外に出て新鮮な空気を吸うと、磯の香りが鼻をくすぐる。その度に私は帰ってきたと感じて、嬉しい。心が軽くなる。
海の風は冷たくて、寒い。
周りを見渡さなくても視界に入る観光客。最近は特に外国人の観光客も増えた。
カメラを構える先には、島の象徴の大鳥居。
私はそれを何度見たことか。数え切れないほど、私はこの島に来ている。
あっという間に島に着いた。
島に上陸すると、鹿がのんびりとした姿を見せてくれた。昔に比べると、鹿の性格は穏やかになっている気がする。そして、ずいぶん見かける頭数は減った。落ちているフンの数も。鹿せんべいを売らなくなったことも、一つの要因か。
あの頃はどこを踏んでも靴の裏にフンが付くものだから、お気に入りではない靴を履いて来たものだ。何年前の話だか。
早速向かう場所は神社。
向かう途中、お土産屋が並ぶ商店街で甘い香りが漂っている。
美味しそうな匂いに思わずお店を覗き込んでしまうが、ここは我慢。名物は帰りに買おう。
商店街を抜けると、海に浮かぶ神社の姿が見えた。
「久しぶり」
少し離れた場所から、そっと呟く。
視界に映る桜色。
見上げてみると、そこには春の色を添える桜があった。
海風に揺られて、桜色の花びらが舞う。
私はこの光景が見たかった。
青い海に、朱色の鳥居。そして、5枚の花びらを持つ桜。
海の香りを吸って、鳥居と桜を見て楽しむ。たったこれだけで、私の心が澄んだ気持ちになるのだから不思議だ。一年間溜まった黒いモヤモヤが吹き飛ばされていくのだから。今年も来てよかったと、笑顔になれる。
「おかえりなさい」
声を掛けられて、初めて気がつく。
若い女性がこちらを見て微笑んでいるのを。
「相変わらず、私が見えているのね」
「ふふっ。一人や二人くらい、見えている人がいると退屈しないでしょう?」
「生意気なことで」
私は笑った。
「仕事は? もしかしてサボっているの?」
「そんなまさか! 仕事はもう終わりました」
女性は、私を見て、ほんの僅かに切ないような、悲しいような、そんな色を帯びた目をした。
「露子さん。今年も旦那様に逢いにいらしたんですか?」
私の名前はそんな感じだったかしら。
そんなことを考えていると、女性は苦笑する。
「今年こそ逢えると良いですね」
一度も逢えていない。
ここは私達と深い因縁がある場所でもなんでもない。住んでいたわけでも、死に場所だったわけでもない。それでも私が選んだこの場所は、私達が出会ってから初めて来た場所であり、それは新婚旅行先だった。
「逢えないわよ。もう70年は過ぎたのよ? 逢えるわけがないじゃない。それに……」
「それに?」
「どこで死んだか分からない人が、ここに来ることも、ましてや覚えているとは思えないもの」
風が桜の花びらを運ぶ。
周りを見渡せば、桜の木々があちらこちらに植えられている。
「露子さんは覚えているのに、寂しいですね」
「私もいつか忘れるわ」
そう。
私もいつかは忘れる。名前を忘れ始めたように、今覚えている記憶も少しずつ削り落とされていく。そして、最後は夫のことも、私自身のことも、大切な思い出も、全て消えてしまう。風化という言葉があるように、時間が経てば経つほど、生者も死者も忘れていくことが流れというもの。
「そんな風に言わないでくださいよ」
海に向かっていく花びらを目で追っていると、女性の声が少し震えていたので視線を戻した。
「貴女が忘れてもわたしは覚えていますから。貴女が忘れてもわたしが教えますから。だから」
泣きそうな面を見せている。私の為にそんな表情をしなくてもいい。
「教えてもらわなくて結構。記憶が無くなった時が、私がこの世から消える時よ」
私は勝手に歩き出す。
彼女の横を過ぎた時、彼女の顔はくしゃくしゃと歪めていた。今にでも泣き出しそうな表情に、私も来るものがあった。心にチクッとしたものが。
「シャンとしなさい。今を生きし者よ」
すっと振り返る。
「私の為になにかをしようなんぞ、そんな考えは捨てなさい」
そして、また歩き出す。
「生きし者は、生きし者の為に行きなさい」
彼女は黙って私の後に付いて来る。
それがちょっぴり嬉しくて、心地よい。だからこそ、私にとって毒なのだ。
「前を見て、足を前に出すの。振り返ってはダメよ。振り返っていいのは、私だけだから」
そして、私は振り返る。
「あと、私とお話ししていると、周りの人から変な目で見られるわよ?」
ニッコリ微笑むと、彼女は首を横に振った。これだからこの子は。
「貴女は厄介な目を持ってしまったわね。可哀想に」
伸ばした手が触れるのは、彼女の顔。
彼女はまた首を横に振った。
「そんなことはありません。もちろん怖い思いもしたことがありますが、露子さんに逢えたことを感謝していますから」
「立派なお世辞も言えるようになっちゃって。こんなに小さかったのにね」
私は彼女と初めて会った頃を思い出しながら、子供の背丈を手で再現してみる。大袈裟に低く表現する。
「そんなに小さくないですよっ」
彼女はやっと笑った。
やはり名前を思い出せない。
こうやって思い出話に花が咲くのは、今年で最後になるかもしれない。
そんな気がしてならなかった。
「私、もう行くわ」
「そうですか……」
表情が曇る。
「途中まで、お供したらダメですか?」
眼前で両手を合わせ、懇願する。
私の何が良いんだか、理解不能な娘。
「ごめんなさいね。夫がすぐそこまで来ているの」
なんて、分かりやすい嘘をつく。
それは彼女ももちろん見破っている。
それでも、彼女は私のついた嘘に付き合ってくれる。
私は彼女を背にして歩き出す。
さようなら。
とは、言わない。
私はまたここに来たいと思っているから。
彼の為に来ていたつもりが、回数を重ねすぎて、この場所に愛着を持ってしまった。
吸えば吸うほど安心する、磯の香りを楽しみたい。
堂々と立つ鳥居の姿を見たい。
一年に限られた季節にしか見えない桜を、愛でたい。
三ついっぺんに味わえるなんて、こんな贅沢はない。
その時だった。
遠くから〝音〟が聴こえてくる。
音程が違う、複数の太鼓の音。
力強い笛の音。
そして、男性の掛け声。
「能、かしら」
ゆったりとしたテンポに、芯のある音の掛け合い。
「ああ。良い時に来たわ」
音が聞こえる方へ歩く。
もしなんてないけれど、もし叶うのならば彼と共に能を見ることができたら、忘れられない思い出の一つになっていたことだろう。
一緒に過ごす時間はたった僅かなものであっても、共に居られる幸せを感じたことは人生の宝です。
「あなた」
時代が時代だっただけに、女として綺麗に着飾ることはできなかったけど、あなたとの思い出は胸の中でいつも輝いている。長い月日が経っても色褪せることなく、抱く想いだけは、忘れない。
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空を見ながら、にっこりと笑う。
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