蒼昊の額縁

蒼乃悠生

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 落ちていく中、手を伸ばす。
 なにかを掴めそうな気がして、でも、なにも掴めなくて。体はただ落ちていく。

「このまま消えてしまいたい」

 落ちて落ちて、そのまま誰の目にも分からないような場所に連れて行って。

「なにを頑張ったらいいのか分からない。頑張らなければならない理由が分からない」

 自分は無気力で。
 立っている理由も、手足を動かす理由も分からない。
 朧な目が映すのは過去の記憶。
 あの頃は感覚もあって、心も死んでなくて、生きてるって感じがあった。
 だからだろう。
 あの頃は良かったなぁ、なんて、そんな言葉が出てくるのは。
 今はなにも見えない。なにも感じない。ただぼーっと周りを見て、立っているだけ。自分が自分でないような感覚。
 一層のこと、誰かここから連れ出して。
 消えることが許されず、自分が動く意味を見出せない世界なら。

「空、飛びたいな」

 あの青い空。
 雲の合間を縫って、空を飛んでみたい。
 貴方と一緒に飛べたら、どれだけ幸せなことだろう。

「菅野さん、貴方と一緒に空を飛びたい」

 私の身はただ落ちていくだけ。




 夢を見る。
 貴方が操縦する飛行機に乗って、あの青空を自由に飛ぶことを。

「空を飛ぶということは、きっと自由を意味する」

 私は自由になりたい。
 あらゆる鎖を断ち切って、私が私らしく生きる空へ。大きくて、青い空へ。
 連れて行って。
 私を。

 
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