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 それから、一週間後─。

 長期休暇に入った私は、それを利用し自国に戻る事にした。


 私を裏切ったガルディア様とリリララと、キッパリ縁を切る為と…そして、ある報告をする為にだ─。



 すると久しぶりに帰って来た私を見て、ガルディア様とリリララはまだ浮気がバレて居ないと思って居るらしく…今まで通り、良き婚約者と姉を慕う可愛い妹として私との再会を喜んだ。



 あらそう…そう言う態度で来るのね?
 
 本当は、何もかも知って居るけれど…じゃあ、私も何も知らないと言った顔で再会の一時を過ごしましょう─。
 


「お姉様、留学の方はどうです?やりたい事はやれて居ますか?」

「えぇ、それはもう毎日が楽しくて─。向こうで仲の良い友人も出来たし…長期休暇が終われば、一緒に学園に通える事にもなったのよ。」

「フン、ここに居た時よりも生き生きした顔をして居るじゃないか。ロリアンナ学園はド田舎にあると聞く。毎日のように土いじりや石ころを追い回していたお前には、相性のいい場所だったんだろう。で?お前がそこまでして追い求めて居た物は見つかったのか?あの、ほら…身体が善くなる石だったが?まぁ、そんな夢のような石などある訳が─」

「あぁ、その魔石なら無事発見しました。しかもその採掘量が過去最高で…あれだけの量があれば、アルカディアに百年病人は不在だと、隣国の王様に大層喜ばれましたよ。」

「な、何だって!?」



 隣国の王の名が出た途端、ガルディア様は急に目の色を変えて立ち上がった。

「お、お前…王族と繋がりが出来たのか!?」

「はい。その石を発見後、すぐに知らせを受けたお城の者が駆けつけ…私をそのままお城へと招待して下さったのです。」



 あの時、ロベルトが指を差した先には私がいつも魔石を探して居た斜面があったが…そこは連日の雨であちこちが崩れ落ち、岩肌が丸見えになって居るような状態だった。



 するとその岩の中に、一際大きな岩があったのだが…それは周りの石とは明らかに違って居て、表面が七色の光を放って居た。



 そしてその美しい輝きを見た瞬間…私はその石、否…岩は、自分が長年探し求めて居た万病に効く魔石であるとすぐに理解したのだった─。



「それでお喜びになった王様は、私に褒美を授けて下さるとも仰って…。今後の学費はタダですし、このまま隣国で暮らして行くならば一生お金がかからない生活をさせてくれると迄仰ったんですよ。」

「褒美、一生金がかからない…それは魅力的だな!」


 
 褒美と言う言葉が出ると、益々ガルディア様は興奮し鼻息を荒くし…下卑た笑みを浮かべ、リリララの隣から私の隣へと移動して来た。



 するとそれを見たリリララは、あからさまに不機嫌な顔になり…私をジロリと睨み付けて来た。


 だが私はそれに気づかない振りをし、ガルディア様に顔をよせこう言った。



「それで、近く隣国のお城で奇跡の魔石発見を祝うパーティーが開かれるのですが…発見者の私はそれに招待されましてね。そこには、是非私の大事な人を伴い参加して欲しいと言われて居るのです。」

「大事な人って…そんな者は、婚約者であるこの俺しか居ないだろう!でかしたぞ、アメリア!そうと分かったら、俺に似合うとっておきの衣装を用意しないとな…。アメリア、お前にも新しいドレスを用意してやるから楽しみにして居ろ!」



 するとそんなガルディア様の言葉に…リリララは、もう我慢ならないと言った様子で立ち上がった。



「酷いです、ガルディア様!お姉様が帰って来る迄は、あんなに私に夢中だった癖に!あなたは、私の事がお好きなのでしょう?婚約者のお姉様より、私の方が可愛くて好きだって…お姉様を捨て、私を新しい婚約者にしてくれると約束したのに─!」

 そう言って、リリララは顔を真っ赤にして号泣…ガルディア様に詰め寄った。
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