9 / 10
9
しおりを挟む
「……おいおい、今迄どこに行ってたんだ?せっかく俺が早く帰って来てやったのに、二人仲良くお出かけか?エリザベス、お前の娯楽に付き合う為に護衛を雇った訳ではないんだからな。」
「ダミアン……今日は、随分とお早い帰りだったのね。」
「まぁ、偶にはそう言う日もあるさ。」
何だ、可愛げのない態度だな──。
以前なら、俺が早く帰って来ると尻尾を振り喜んで飛びついて来たのに。
それどころか、俺の帰りを大人しく家で待って居たのにな。
俺だってな、好きでお前の居る家に早く帰って来た訳じゃない。
ミラージュの家で逢瀬を楽しんで居たら、顔を青くした物騒な男達がいきなり飛び込んで来て……命を落とすほど危ない仕事を受けた訳じゃないとか、話が違うと彼女を責め立てせっかくの時間を滅茶苦茶にされてしまったんだ。
ミラージュの奴も、今日はもう帰ってと俺を追い立てるように家から追い出すし……全く、どうなって居るのだか。
でもまぁ良い。
早く帰って来たおかげで、エリザベスが護衛といちゃついて居る所が見れたのだから。
それが浮気かどうかは知らんが……契約成立まで待たずとも、こいつの不貞を理由に離縁を言い渡してしまおうか。
そうだ、その方が慰謝料だって請求できるし……後々になって、俺がこいつを一方的に捨てたと世間から非難される事も無いしな──。
「エリザベス、お前が夫の帰りを無視し男と遊ぶようなふしだらな女だとは思わなかったよ。お前との間には子も居ない事だし……いっその事、もう離縁しないか?そうしたら、俺はもっと仕事に打ち込めるし……お前だって新しい男と一緒になり、念願の子作りに励む事が出来るだろう?互いに良い事だらけじゃ無いか。」
「仕事に励む、ね。そんな事言って、あなたはあのミラージュとか言う元婚約者と一緒になるのでしょう?」
「な、何を言って……あいつは、元婚約者で──」
「確かに元婚約者ですが、今も密かに関係を持って居るのでしょう?どうせ、今日も会って来たのではないですか?彼女が私に離縁を求め現れた際に身に付けて居た独特の香水の香りが、あなたから僅かにしますから。因みに、今日だけでなくその前にも何度か同じ事がありましたよ。」
「うッ!?」
エリザベスの言葉に、俺は思わず声を詰まらせてしまった。
な、何だ……こいつ、何時から気付いて──!?
「お、俺は仕事一筋の真面目な男だ!現に、俺は隣国のある金持ちと事業契約を──」
「その契約なら、私が先に結びましたけど?」
「はぁ!?」
エリザベスが付き出して来た紙を見て、俺は驚きで目を見開いた。
***
「こ、この契約書のサインは、確かにあちらの──。な、何だ……何が起きて居るんだ!?」
「……実はこちらの事業主の奥様が、あなたの愛するミラージュにかつて酷い目に遭わされましてね。それを知ったお二人は、そんな悪女と親しくするあなたは信用できない、契約の話は無かった事にすると仰いまして……。その代わり、私の方と契約を結ぶと仰ってくれて──。今日私が留守にして居たのも、こちらのお二人に会う為に隣国を訪ねて居たからなのです。」
「お、お前などと契約しても、お前に事業を継続して行く力など──」
「ご存じないの?私はあなたのお父様に、かなり信頼されて居ましてね。それこそ、我儘な息子のあなたより──。私に何か困った事があれば、自身の友人や知人を頼るよう教えられて居ました。その方達には、皆私に力を貸すよう話を付けてあると言って。最初こそ、どうして私をそこまで大事にしてくれるのかと思って居ましたが……ミラージュなどと言う悪女を愛したあなたが、余程信頼できなかったのでしょうね。それに、私には頼りになる父や兄も居ますし、その父からある程度事業の事を学んで来て居ますから──。あなたは、私を少々馬鹿にしすぎです。そして馬鹿にして居るから、私や彼女への想いを綴った過去の日記を平気で残しておけるんですよ。」
「クソッ、日記まで見られて居るのか!」
私の言葉に、ダミアンは悔しそうにこちらを睨み付けて来た。
「ダミアン……今日は、随分とお早い帰りだったのね。」
「まぁ、偶にはそう言う日もあるさ。」
何だ、可愛げのない態度だな──。
以前なら、俺が早く帰って来ると尻尾を振り喜んで飛びついて来たのに。
それどころか、俺の帰りを大人しく家で待って居たのにな。
俺だってな、好きでお前の居る家に早く帰って来た訳じゃない。
ミラージュの家で逢瀬を楽しんで居たら、顔を青くした物騒な男達がいきなり飛び込んで来て……命を落とすほど危ない仕事を受けた訳じゃないとか、話が違うと彼女を責め立てせっかくの時間を滅茶苦茶にされてしまったんだ。
ミラージュの奴も、今日はもう帰ってと俺を追い立てるように家から追い出すし……全く、どうなって居るのだか。
でもまぁ良い。
早く帰って来たおかげで、エリザベスが護衛といちゃついて居る所が見れたのだから。
それが浮気かどうかは知らんが……契約成立まで待たずとも、こいつの不貞を理由に離縁を言い渡してしまおうか。
そうだ、その方が慰謝料だって請求できるし……後々になって、俺がこいつを一方的に捨てたと世間から非難される事も無いしな──。
「エリザベス、お前が夫の帰りを無視し男と遊ぶようなふしだらな女だとは思わなかったよ。お前との間には子も居ない事だし……いっその事、もう離縁しないか?そうしたら、俺はもっと仕事に打ち込めるし……お前だって新しい男と一緒になり、念願の子作りに励む事が出来るだろう?互いに良い事だらけじゃ無いか。」
「仕事に励む、ね。そんな事言って、あなたはあのミラージュとか言う元婚約者と一緒になるのでしょう?」
「な、何を言って……あいつは、元婚約者で──」
「確かに元婚約者ですが、今も密かに関係を持って居るのでしょう?どうせ、今日も会って来たのではないですか?彼女が私に離縁を求め現れた際に身に付けて居た独特の香水の香りが、あなたから僅かにしますから。因みに、今日だけでなくその前にも何度か同じ事がありましたよ。」
「うッ!?」
エリザベスの言葉に、俺は思わず声を詰まらせてしまった。
な、何だ……こいつ、何時から気付いて──!?
「お、俺は仕事一筋の真面目な男だ!現に、俺は隣国のある金持ちと事業契約を──」
「その契約なら、私が先に結びましたけど?」
「はぁ!?」
エリザベスが付き出して来た紙を見て、俺は驚きで目を見開いた。
***
「こ、この契約書のサインは、確かにあちらの──。な、何だ……何が起きて居るんだ!?」
「……実はこちらの事業主の奥様が、あなたの愛するミラージュにかつて酷い目に遭わされましてね。それを知ったお二人は、そんな悪女と親しくするあなたは信用できない、契約の話は無かった事にすると仰いまして……。その代わり、私の方と契約を結ぶと仰ってくれて──。今日私が留守にして居たのも、こちらのお二人に会う為に隣国を訪ねて居たからなのです。」
「お、お前などと契約しても、お前に事業を継続して行く力など──」
「ご存じないの?私はあなたのお父様に、かなり信頼されて居ましてね。それこそ、我儘な息子のあなたより──。私に何か困った事があれば、自身の友人や知人を頼るよう教えられて居ました。その方達には、皆私に力を貸すよう話を付けてあると言って。最初こそ、どうして私をそこまで大事にしてくれるのかと思って居ましたが……ミラージュなどと言う悪女を愛したあなたが、余程信頼できなかったのでしょうね。それに、私には頼りになる父や兄も居ますし、その父からある程度事業の事を学んで来て居ますから──。あなたは、私を少々馬鹿にしすぎです。そして馬鹿にして居るから、私や彼女への想いを綴った過去の日記を平気で残しておけるんですよ。」
「クソッ、日記まで見られて居るのか!」
私の言葉に、ダミアンは悔しそうにこちらを睨み付けて来た。
333
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました
当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。
リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。
結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。
指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。
そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。
けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。
仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。
「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」
ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
元婚約者が愛おしい
碧桜 汐香
恋愛
いつも笑顔で支えてくれた婚約者アマリルがいるのに、相談もなく海外留学を決めたフラン王子。
留学先の隣国で、平民リーシャに惹かれていく。
フラン王子の親友であり、大国の王子であるステファン王子が止めるも、アマリルを捨て、リーシャと婚約する。
リーシャの本性や様々な者の策略を知ったフラン王子。アマリルのことを思い出して後悔するが、もう遅かったのだった。
フラン王子目線の物語です。
形だけの妻ですので
hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。
相手は伯爵令嬢のアリアナ。
栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。
形だけの妻である私は黙認を強制されるが……
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
婚約者の初恋を応援するために婚約解消を受け入れました
よーこ
恋愛
侯爵令嬢のアレクシアは婚約者の王太子から婚約の解消を頼まれてしまう。
理由は初恋の相手である男爵令嬢と添い遂げたいから。
それを聞いたアレクシアは、王太子の恋を応援することに。
さて、王太子の初恋は実るのかどうなのか。
彼女が望むなら
mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。
リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる