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青い顔をしてそんな言葉を口にするエリザベートに、アデル様は訳が分からないと言った顔をして居る。
するとそんな彼女に対し、私の左隣に居た男……ジャンの古き友人は、冷たい目で彼女を睨むとこう言った。
「確かに、あの事件以降俺は長い事引き籠って居たが……親友からお前が漸く見つかったと知らせを受け、立ち直るなら今しかないと思い行動に出たんだ。全く……お前はまたも同じような事をして、人を傷付けて──。今後お前には、俺と彼女の人生を壊した罪を償って貰う。その為に、俺と国に帰って貰うからな。」
そう言って、彼は逃げようとするエリザベートの腕を掴み上げた。
「い、嫌!助けて、アデルさまぁ!」
「た、助けたいが……その男の胸に光る、その紋章は確か──」
「そうだ。俺は最近ある新薬を開発し、その功績を称えられ自国の王に勲章を与えられた。そんな俺に楯突く勇気が、お前にはあるのか?」
「た、楯突くなど滅相も無いです!」
ジャンの友人に睨まれたアデル様は、あっさりとエリザベートから手を引き……そんな彼を見た彼女は、絶望の表情を浮かべるのだった。
そして目に一杯涙を滲ませながら……彼女はジャンの友人に引き摺られ、屋敷を後にするのだった。
すると、それを呆然と見送って居たアデル様だったが……私の視線に気付くと漸く我に返り、焦ったようにこう言った。
「よ、よく分からんが……彼女が、あの写真をばら撒いた犯人だったんだな。気付かなくて悪かったよ。彼女、何やらあの男に悪事を働いたようだし……俺も、知らない内に毒されて居たみたいだ。俺は、お前を裏切る気は無かったんだが……彼女が、お前と別れるようしつこく迫って来てな。この家を売りに出したのも、新しい家を用意してやったのも、全て彼女が企み実行した事で──」
「嘘を付くな!俺は、お前の身辺をずっと探って居たんだ。お前が新居の完成まで率先して動いて居た事は、調べで明らかになって居る!」
言い訳ばかりするアデル様に、私の右隣に控えて居たジャンは我慢ならないと言った様子で怒鳴り……その余りの気迫に、アデル様はその身体をビクリと揺らした。
そしてそれを見た私は……どうしてこんな男を一途に想って居たのだろうと、自身の気持ちが急激に冷め行くのを感じた。
「職人達から、家の建設に関し全てあなたからの命で動いたのだと聞かされて居ます。ですから、今のあなたの言葉には疑問しかないわ。私は、そんな嘘付きなあなたとはとてもやっては行けません。あなたとはもう、婚約破棄させて頂きます。そしてあなた有責で婚約破棄するので、婚約当初に結ばれた約束通りこの家の権利と……慰謝料として、あなたの財産を頂きますから。」
「は!?」
「かつて私の父は、事業が傾き借金を抱えたあなたのお父様を救いました。それを恩に感じたあなたのお父様は、もし息子のあなたが私を裏切り傷つける事があれば……自身の遺産の半分と、この家の権利、そしてあなたの財産を慰謝料として差し出す事を約束しました。あなただって、それに納得して居たでしょう?あぁ、でもあなたは小難しい話などどうでも良い、つまらないと言った様子で外を眺めて居ましたし……もしかして、話の内容をよく聞いて居なかったとか?」
「そ、そんな事は……。」
そう言って、アデル様は視線を泳がせたが……どうやら、私の行った事は図星だったらしい。
するとそんな彼女に対し、私の左隣に居た男……ジャンの古き友人は、冷たい目で彼女を睨むとこう言った。
「確かに、あの事件以降俺は長い事引き籠って居たが……親友からお前が漸く見つかったと知らせを受け、立ち直るなら今しかないと思い行動に出たんだ。全く……お前はまたも同じような事をして、人を傷付けて──。今後お前には、俺と彼女の人生を壊した罪を償って貰う。その為に、俺と国に帰って貰うからな。」
そう言って、彼は逃げようとするエリザベートの腕を掴み上げた。
「い、嫌!助けて、アデルさまぁ!」
「た、助けたいが……その男の胸に光る、その紋章は確か──」
「そうだ。俺は最近ある新薬を開発し、その功績を称えられ自国の王に勲章を与えられた。そんな俺に楯突く勇気が、お前にはあるのか?」
「た、楯突くなど滅相も無いです!」
ジャンの友人に睨まれたアデル様は、あっさりとエリザベートから手を引き……そんな彼を見た彼女は、絶望の表情を浮かべるのだった。
そして目に一杯涙を滲ませながら……彼女はジャンの友人に引き摺られ、屋敷を後にするのだった。
すると、それを呆然と見送って居たアデル様だったが……私の視線に気付くと漸く我に返り、焦ったようにこう言った。
「よ、よく分からんが……彼女が、あの写真をばら撒いた犯人だったんだな。気付かなくて悪かったよ。彼女、何やらあの男に悪事を働いたようだし……俺も、知らない内に毒されて居たみたいだ。俺は、お前を裏切る気は無かったんだが……彼女が、お前と別れるようしつこく迫って来てな。この家を売りに出したのも、新しい家を用意してやったのも、全て彼女が企み実行した事で──」
「嘘を付くな!俺は、お前の身辺をずっと探って居たんだ。お前が新居の完成まで率先して動いて居た事は、調べで明らかになって居る!」
言い訳ばかりするアデル様に、私の右隣に控えて居たジャンは我慢ならないと言った様子で怒鳴り……その余りの気迫に、アデル様はその身体をビクリと揺らした。
そしてそれを見た私は……どうしてこんな男を一途に想って居たのだろうと、自身の気持ちが急激に冷め行くのを感じた。
「職人達から、家の建設に関し全てあなたからの命で動いたのだと聞かされて居ます。ですから、今のあなたの言葉には疑問しかないわ。私は、そんな嘘付きなあなたとはとてもやっては行けません。あなたとはもう、婚約破棄させて頂きます。そしてあなた有責で婚約破棄するので、婚約当初に結ばれた約束通りこの家の権利と……慰謝料として、あなたの財産を頂きますから。」
「は!?」
「かつて私の父は、事業が傾き借金を抱えたあなたのお父様を救いました。それを恩に感じたあなたのお父様は、もし息子のあなたが私を裏切り傷つける事があれば……自身の遺産の半分と、この家の権利、そしてあなたの財産を慰謝料として差し出す事を約束しました。あなただって、それに納得して居たでしょう?あぁ、でもあなたは小難しい話などどうでも良い、つまらないと言った様子で外を眺めて居ましたし……もしかして、話の内容をよく聞いて居なかったとか?」
「そ、そんな事は……。」
そう言って、アデル様は視線を泳がせたが……どうやら、私の行った事は図星だったらしい。
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