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 すると自分の身にそんな悪い噂が立ったマリアージュは、日に日に気落ちして行った。

 でも俺に心配をかけまいと、あいつは俺の前では気丈に振舞って居た。



 と同時にマリアージュは、自分は婚約者のアデル様一筋である事……噂は全くの出鱈目だと周囲に必死に訴えて居たが……元は田舎の出で、しかも両親を亡くし後ろ盾がない彼女に味方する者はほとんど居なかった。



 更にマリアージュの立場を不利にしたのは、彼女が男達と乱交して居る現場だと言う写真が街中にばら撒かれた事だった。



 実際に俺も、表通りの塀に貼られて居た写真を目にしたが……そこに写って居たマリアージュの裸体を見て、これは果たして本物かと首を傾げた。
 
 と言うのも、マリアージュの胸はこんなに豊かではないからだ。



 だがそんな事を知らない周りの者達は、先に広まった噂もあってアッサリそれを本物だと信じ……より一層、マリアージュの事を非難するようになった。



 そして俺はと言うと……涙にくれるマリアージュを慰めながら、内心ではこれでこいつと縁が切れそうだとほくそ笑んで居たのだった。



 勿論、マリアージュに約束した犯人を捜すと言うのは全くの出まかせで……俺はそんな事はせず、それどころかその写真が一層世に広まるようにより人目の付く所に張り替えたりもした。



 一方、エリザベートはと言うと……どこの誰がやった事かは知らないが、いずれにせよそんな恥を周りに晒してはもうあの女はあなたの傍に居る事は出来ないだろう──。

 これで私達は、漸く心置きなく愛し合う事が出来るだろうと微笑むのだった──。



***



 その後……悪評にもめげる事無く妻としてこの家に住む予定でやって来たマリアージュを、俺は人里離れた別荘へと隔離する事にした。

 表向きは、悪い噂から彼女を守ると言うものだったが……本当の目的は別にあった。



 実は少し前から、俺はエリザベートに新しい家を強請られて居た。



『この家は立派だけれど、年季が入って居るわね。今時の造りでは無いわ。』

『確かにそうだな……。』

『あの女を別荘に追放している間に、この家を売りに出しちゃいましょうよ!その間に、お父様の遺産で新しい屋敷を別の土地に建てましょう?それでその屋敷が完成する迄の間、私達は二人きりで旅行にでも行きましょうよ!』

『それは良いな!マリアージュには、事業が忙しくなるから顔を出す事が難しくなると言っておけば良いだろう。もし俺に会えない事にあいつが痺れを切らしここにやって来ても、当の俺はここに居らず家も売りに出されて居てはどうにも出来ないだろうしな。そうなったら、いい加減流石のあいつも俺を諦めざるを得ないだろう──!』
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