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 するとそんな中、父が急な病に倒れこの世を去った。

 そして俺は、予定よりもかなり早く当主を継ぐ事となり……と同時に、俺は婚約者のマリアージュを妻に迎える事になった。



 だがその頃には、俺はすっかりエリザベートに夢中になって居て……また彼女も、メイドでは無く当主の妻と言うものに憧れるようになって居た。



 勿論、俺はエリザベートのその望みを叶えてあげたかった。

 だがそれを実現するには、まずマリアージュと別れなければならない。



 しかし、マリアージュは俺を深く愛して居て……父が死んで以降は、当主となったばかりの俺を妻として支えて行こうと益々張り切って居る始末──。


 
 そんなあいつに別れを切り出しても、絶対に受け入れてくれないだろう。

 それどころか、何故そんな事を言い出すのか……余程の事があるのだろうと、その理由を探って来るに違いない。



 そうなったら、俺とエリザベートの禁断の関係が知られてしまう。

 俺が前々からエリザベートと浮気をして居た事をマリアージュが知ったら、きっと怒り狂った挙句にとんでもない慰謝料を請求して来るだろう。



 父の遺産が入ったからと言っても、好きでもない女に俺は一銭もやりたくはないのだ──。



 すると思い悩んで居る俺を見たエリザベートが、ある事を提案して来た。



『……俺が子を産めない身体だと、マリアージュに偽るだって──?』

『そうよ。』

『そんな突拍子もない話、いくら間抜けなあいつでも流石に信じるかどうか──』

『口だけならね。でも、証拠があったらどうかしら。』

『証拠?』

『あなたの主治医にお金を払って、偽の診断書を作って貰うのよ。それを目にしたら、流石に本当だってあの女も思うでしょう?愛する人との子を一生授かれないんじゃ……いくらあなたが好きだと言っても、諦めが付くんじゃないかしら。』

『成程、それは名案だな──!』



 そして俺は渋る主治医に無理矢理金を押し付け、偽の診断書を書かせ……その後それをマリアージュに突き付けたが、あいつと来たらそんな俺をあっさり受け入れた挙句に婚約を無かった事にするのを拒否して来た。

 せっかくエリザベートが良い案を出してくれたと言うのに……マリアージュめ、思い通りにならない女だ──!



 そうこうする内に、あいつとの結婚式を挙げる日は次第に近づいて来てしまうし……俺は、内心大層焦って居た。


 
 するとそんな中……俺ではなく、マリアージュの身体の方に問題があると言う根も葉もない噂が立ったのだ。

 
 
 マリアージュが俺以外の男と、しかも複数の男達と肉体関係を持った事で病気に罹り……その状態で婚約者の俺と関係を持った事で、俺を苦しめて居ると言うそれは酷い内容だった。
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