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 それは……もしや不能とか、そう言った──?

 すると私の戸惑った顔から、私が何を思ったか感じ取ったアルカディス様は再度首を振った。



「実は……俺は呪われた身なのだ。故に、女性を……君を抱く事は出来ない──」



 そう言ってアルカディス様は服のボタンを外し、来て居たシャツを床に落とした。

 そして顕わになった彼の上半身を見た私は、思わず息を飲んだ。



 と言うのも、ルカディス様のお腹には妙な痣があり……それが、まるで恐ろしい形相をした女性のように見えからだ。



「な、何ですこれは……?」

「これは……まだ俺が故郷に居た際、俺の妹が闇魔法をかけられそうになったのを庇った際に受けてしまった呪いだ。結局、妹は無事だったんだが……代わりに俺は、こうしてこの呪いの痛みに耐える日々を送る事になってしまった。いや、痛みだけならまだいい。夜になると、この顔のような痣は女の呻き声や泣き声を上げるんだ。恐らく、その闇魔法をかけた女の恨みの声だと思うんだが……。そんな調子だから、故郷に居られなくなりこの田舎の地に越して来たんだ。」

「アルカディス様の身に、そんな事が──。」

「するとこの声を聞いた通りかかりの者達が、俺が毎夜部屋に女を引き入れ虐めて居ると勘違いしてしまったらしく……それを噂で広めてしまい、悪趣味な性癖を持つ男だと誤解されてしまったんだ。だが、そんな俺とて……いつまでも独り身と言うのは余りに寂しい。それで、この呪いを理解し共に立ち向かってくれる者を伴侶にしようと考えたんだ。」

「成程、それで私のい……私を妻に──。」

「君は、大層な魔力持ちだと聞いたからね。姉の方もそうだが……特に、妹の君は強い魔力を持って居ると聞いた。それで、君のお父上に娘さんを妻に欲しいと掛け合ったら……あの家の借金を肩代わりして下さるなら、喜んで娘を嫁に出すと仰ってくれたんだ」

「そう、だったのですね──」



 全てを知った私は、途端にこの場に居る事が申し訳なくなった。


 
 私も魔力はあるが、アイリーンには及ばない。
 
 私では、困って居るアルカディス様の力になれない──。



 すると黙り込んでしまった私に、アルカディス様は笑顔を受かべこう言った。



「君は、とても真面目で誠実で……夜の務めも出来ない俺の事を、夫としていつも立ててくれる。それがとても有難くて、嬉しくて……。妻を迎え共に暮らすと言うのが、こんなにも穏やかで幸せな気持ちなれるものとは夢にも思って居なかった。俺に嫁いで来てくれて、本当にありがとう。」



 そんなアルカディス様の言葉に、私は胸の奥がジンと熱くなった。

 でも、同じくらい罪悪感が湧いてしまう。


 
 アイリーンじゃないって、エスメラルダと言う姉の方だってちゃんとアルカディス様に言わなきゃ。
 
 でもそれで彼に失望され、捨てられてしまうのが怖い。

 だけど……愛する彼を裏切り続ける事の方が、私にはより耐えられないわ──。
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