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弐
52.薬草採取
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追跡していた遺跡強盗の一団を一グループごとに呼び出させ、杏子の『氷結』で心を折る。女の場合は杏子の拘束魔法で行動不能にする。
それを繰り返し、やがて全員を拘束したコンタ達。
「この魔法を解除できるのはコイツだけだ。努々逃げ出そうとか思うなよ? もげるぞ?」
このコンタの一言で遺跡強盗達が抵抗する事はなくなった。何より、コンタの背後で人差し指のMDDを光らせながらほくそ笑む、杏子の姿に戦慄した。
遺跡強盗が大人しくなったところで、コンタ達は本来の目的の為に行動する事にした。何しろ、自分達の命を狙う連中に追跡されながらでは、薬草採取どころの話ではない。
そうして、コンタ、杏子、マーリ、デイジー、そしてトーマス、アニー、クララの合同パーティは、遺跡強盗の一団を引き連れながら探索を開始した。
「ところでさ、依頼の薬草ってどんなやつ?」
コンタが何気なく放ったその一言に、杏子以外の全員が凍り付いた。
『普通は遺跡に突入する前に確認するだろ、そんなモン!』。そんな呆れと哀れみが混じった視線でトーマスが答えた。
「お前らが、腕は立ってもニュービーだって事を改めて思い知らされたぜ。いいか? ハンターが依頼を受ける時は、入念に下調べをするのが鉄則だ」
そんな言葉から始まるトーマスの講義……という体を借りた説教が小一時間ほど続く。
「いやあ、採取なんて依頼、その辺に生えてるヤツを毟ってくるだけかと思ってたぜ……」
「そりゃそういうのもある。けど、今回の『毒消し草』は高難度だぜ?」
トーマスの説明によれば、毒消し草の入手方法は二種類あるとの事。
一つは、遺跡の内部にランダムにある宝箱の中から入手する方法。こちらは完全に運任せであり、しかも肝心の宝箱も遺跡内部にランダムに出現する性質を持っているらしく、宝箱に出会えるかも運任せ。
そしてもう一つは魔物の頭に生えているものを収穫する方法。
「ちょっと待て。魔物の頭に生えているのが植物なのか?」
コンタの素朴な疑問だ。これは杏子も同じである。そもそも、魔物を『動物』であると認識しているコンタと杏子には不思議に思えてならないのだが、植物にも魔物は存在する。
「厄介なのが、その魔物が生きている状態で、頭の毒消し草を刈り取らないとダメだって事だ。死んでから刈り取ったんじゃただの草になっちまう」
ふむふむと頷くコンタと杏子。
「つまり、動けなくして刈り取ればいい訳だ。楽勝だな、杏子?」
「ん」
「つーかよ、こんな面倒な事をしなくても、魔法使いに治してもらえばいいんじゃねえのか? レベッカサマはよ」
これもコンタの素朴な疑問だ。杏子は魔法で治せるという。それならば、こんな採取依頼を出さずとも、侯爵家ともなれば魔法使いの伝手くらいはあるだろう。
「あー、うん。それは難しいかな……」
治癒系の魔法が得意なクララが、少し言いづらそうに口を開く。
クララが言うには、治癒魔法の中にも分類があり、怪我を治癒させるもの。そして状態異常を治すもの。さらに病気を治すものに大別されるという。中でも病気を治すには高度な医学知識が必要であり、医学を修めながら魔法も使える者は極めて少数らしい。
「病気による苦痛を抑える事は出来ても、完治させるのは一般の魔法使いには無理ね」
杏子のようにイメージさえ掴めれば、最適な魔法を放てるMDDというアーティファクトが、如何に規格外の性能をもっているか、コンタは思い知る。
(コイツのアーティファクトの性能はぶっ飛びすぎだろ。世界最強じゃねえのか?)
改めて杏子が持つアーティファクトの恐ろしさを認識し、ゴクリと生唾を飲み込むコンタ。
「ん? 欲情した?」
そう宣う杏子に、コンタはデコピンを喰らわせた。
「でこッ!?」
「してねえよ」
「お二人とも、仲が良いの分かりました。でも今はアレをどうにかしませんと」
じゃれる二人に対し、マーリが視線で促す。その先には。
「へっへー。噂をすれば何とやらだぜ。あれが毒消し草の魔物、『パイナポ』だ」
ニヤリと笑いながらトーマスが剣を抜き構えた。
それを繰り返し、やがて全員を拘束したコンタ達。
「この魔法を解除できるのはコイツだけだ。努々逃げ出そうとか思うなよ? もげるぞ?」
このコンタの一言で遺跡強盗達が抵抗する事はなくなった。何より、コンタの背後で人差し指のMDDを光らせながらほくそ笑む、杏子の姿に戦慄した。
遺跡強盗が大人しくなったところで、コンタ達は本来の目的の為に行動する事にした。何しろ、自分達の命を狙う連中に追跡されながらでは、薬草採取どころの話ではない。
そうして、コンタ、杏子、マーリ、デイジー、そしてトーマス、アニー、クララの合同パーティは、遺跡強盗の一団を引き連れながら探索を開始した。
「ところでさ、依頼の薬草ってどんなやつ?」
コンタが何気なく放ったその一言に、杏子以外の全員が凍り付いた。
『普通は遺跡に突入する前に確認するだろ、そんなモン!』。そんな呆れと哀れみが混じった視線でトーマスが答えた。
「お前らが、腕は立ってもニュービーだって事を改めて思い知らされたぜ。いいか? ハンターが依頼を受ける時は、入念に下調べをするのが鉄則だ」
そんな言葉から始まるトーマスの講義……という体を借りた説教が小一時間ほど続く。
「いやあ、採取なんて依頼、その辺に生えてるヤツを毟ってくるだけかと思ってたぜ……」
「そりゃそういうのもある。けど、今回の『毒消し草』は高難度だぜ?」
トーマスの説明によれば、毒消し草の入手方法は二種類あるとの事。
一つは、遺跡の内部にランダムにある宝箱の中から入手する方法。こちらは完全に運任せであり、しかも肝心の宝箱も遺跡内部にランダムに出現する性質を持っているらしく、宝箱に出会えるかも運任せ。
そしてもう一つは魔物の頭に生えているものを収穫する方法。
「ちょっと待て。魔物の頭に生えているのが植物なのか?」
コンタの素朴な疑問だ。これは杏子も同じである。そもそも、魔物を『動物』であると認識しているコンタと杏子には不思議に思えてならないのだが、植物にも魔物は存在する。
「厄介なのが、その魔物が生きている状態で、頭の毒消し草を刈り取らないとダメだって事だ。死んでから刈り取ったんじゃただの草になっちまう」
ふむふむと頷くコンタと杏子。
「つまり、動けなくして刈り取ればいい訳だ。楽勝だな、杏子?」
「ん」
「つーかよ、こんな面倒な事をしなくても、魔法使いに治してもらえばいいんじゃねえのか? レベッカサマはよ」
これもコンタの素朴な疑問だ。杏子は魔法で治せるという。それならば、こんな採取依頼を出さずとも、侯爵家ともなれば魔法使いの伝手くらいはあるだろう。
「あー、うん。それは難しいかな……」
治癒系の魔法が得意なクララが、少し言いづらそうに口を開く。
クララが言うには、治癒魔法の中にも分類があり、怪我を治癒させるもの。そして状態異常を治すもの。さらに病気を治すものに大別されるという。中でも病気を治すには高度な医学知識が必要であり、医学を修めながら魔法も使える者は極めて少数らしい。
「病気による苦痛を抑える事は出来ても、完治させるのは一般の魔法使いには無理ね」
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(コイツのアーティファクトの性能はぶっ飛びすぎだろ。世界最強じゃねえのか?)
改めて杏子が持つアーティファクトの恐ろしさを認識し、ゴクリと生唾を飲み込むコンタ。
「ん? 欲情した?」
そう宣う杏子に、コンタはデコピンを喰らわせた。
「でこッ!?」
「してねえよ」
「お二人とも、仲が良いの分かりました。でも今はアレをどうにかしませんと」
じゃれる二人に対し、マーリが視線で促す。その先には。
「へっへー。噂をすれば何とやらだぜ。あれが毒消し草の魔物、『パイナポ』だ」
ニヤリと笑いながらトーマスが剣を抜き構えた。
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