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弐
50.第一波
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「そもそも遺跡で追剥ぎするような奴らってさ、実力差を見極めて、あぶねえ相手には手を出さないんだろ?」
追跡者を油断させるために、敢えてのんびりと休憩しているコンタ達。
その中で、コンタが疑問を呈する。尚、周囲には杏子が遮音結界を張っており、死角から見張っているであろう追跡者には聞こえない。
「そうだな。俺達を自分達より弱いと見たか、あるいは数の力にモノを言わせて圧し潰すつもりか……」
「そうでなければ、本職ではないか、かしら?」
「雇われ者なら、その可能性もあるかしらね。雇用主の命令には逆らえないって事情もあるかもだしね」
コンタの疑問に、ハンターの先輩たる、トーマス、アニー、クララの三人が順番に答えていく。それを聞いた杏子は、どれもありそうだな。そう思う。
しかし。
「ん。問題ない」
そんな杏子の言葉に、一同の視線が集まる。
「……凍らせる」
すっと立ち上がり、人差し指を突き出し、にぃっと口端を釣り上げ不敵に笑う杏子に一同は苦笑いだ。
そうして休憩しているコンタ達に近付く一団があった。杏子は遮音結界を解き、他のメンバーも武器に手をかけ臨戦態勢をとる。加えて、コンタと杏子は額にかけていたアナライザーゴグルを装着した。
「ま、待ってくれ! 怪しい者じゃない」
近付く集団は六人。その中でただ一人の女が両手を上げながら近づいてそう言う。
「実はさっき、角ウサギとの戦闘を見かけてさ。あんた達、見たところまだ若いのに随分腕が立つじゃないか。そういう実力者とはお近付きになりたいじゃないか? だからちょっと挨拶を、と思ってさ」
女はもっともらしい理由を付け、連れの男たちに目配せをした。
「そうそう、すげえじゃねえか、あんたら! どうやったらあんなに素早く魔物をみつけられるんだ?」
「それそれ! 俺達にひとつ、コツを教えてもらえねえかな~?」
人懐こそうな笑みを浮かべながら他の男たちも近づいてくる。その中で、一人の男がバックパックの中から瓶を取り出した。
「ほら、お近付きの印だ。一杯どうだい?」
すかさずアナライザーゴグル越しに、瓶の中身を鑑定する杏子とコンタ。そしてお互いに視線を交わし、頷きあう。
そしてコンタは、いつの間にか取り出したトカレフを構え、瓶を持った男の足元に威嚇射撃をした。
「それ以上近付くな。おっと、全員動くなよ? 試しにあんた、その瓶の中身、飲んでみろよ?」
コンタがそう言う間にも、マーリ、アニー、クララは魔法を発動させるべく魔力を練り上げ、トーマスとデイジーは愛剣を抜く。
「ちょっと! あんまりじゃないのかい!? こっちは友好的に接してるっていうのにさ!」
女が激高して叫ぶ。しかしコンタはどこ吹く風だ。
「いいからお前ら全員でそれ飲んでみろって。話はそれからだ。あ、飲めねえか? そうだよなぁ。毒入りじゃ飲めねえよなぁ?」
言うまでもない事だが、アナライザーゴグル越しの彼らは敵性反応を示していた。明らかに悪意を持って近付いてきている事は明白だ。それに、瓶の中身も猛毒である。即効性が高く、尚且つ致死性とくれば、もう情け容赦は必要ないだろう。
「ど、どうして……」
自分達の企みを看破され、脂汗を滴らせながら女が呟く。
「敵に秘密を教えるバカがいるか。杏子、やってくれ」
コンタがトカレフを構えながら、杏子へ指示を出す。すると、右手人差し指に装着したMDDから五条の光が放たれた。
追跡者を油断させるために、敢えてのんびりと休憩しているコンタ達。
その中で、コンタが疑問を呈する。尚、周囲には杏子が遮音結界を張っており、死角から見張っているであろう追跡者には聞こえない。
「そうだな。俺達を自分達より弱いと見たか、あるいは数の力にモノを言わせて圧し潰すつもりか……」
「そうでなければ、本職ではないか、かしら?」
「雇われ者なら、その可能性もあるかしらね。雇用主の命令には逆らえないって事情もあるかもだしね」
コンタの疑問に、ハンターの先輩たる、トーマス、アニー、クララの三人が順番に答えていく。それを聞いた杏子は、どれもありそうだな。そう思う。
しかし。
「ん。問題ない」
そんな杏子の言葉に、一同の視線が集まる。
「……凍らせる」
すっと立ち上がり、人差し指を突き出し、にぃっと口端を釣り上げ不敵に笑う杏子に一同は苦笑いだ。
そうして休憩しているコンタ達に近付く一団があった。杏子は遮音結界を解き、他のメンバーも武器に手をかけ臨戦態勢をとる。加えて、コンタと杏子は額にかけていたアナライザーゴグルを装着した。
「ま、待ってくれ! 怪しい者じゃない」
近付く集団は六人。その中でただ一人の女が両手を上げながら近づいてそう言う。
「実はさっき、角ウサギとの戦闘を見かけてさ。あんた達、見たところまだ若いのに随分腕が立つじゃないか。そういう実力者とはお近付きになりたいじゃないか? だからちょっと挨拶を、と思ってさ」
女はもっともらしい理由を付け、連れの男たちに目配せをした。
「そうそう、すげえじゃねえか、あんたら! どうやったらあんなに素早く魔物をみつけられるんだ?」
「それそれ! 俺達にひとつ、コツを教えてもらえねえかな~?」
人懐こそうな笑みを浮かべながら他の男たちも近づいてくる。その中で、一人の男がバックパックの中から瓶を取り出した。
「ほら、お近付きの印だ。一杯どうだい?」
すかさずアナライザーゴグル越しに、瓶の中身を鑑定する杏子とコンタ。そしてお互いに視線を交わし、頷きあう。
そしてコンタは、いつの間にか取り出したトカレフを構え、瓶を持った男の足元に威嚇射撃をした。
「それ以上近付くな。おっと、全員動くなよ? 試しにあんた、その瓶の中身、飲んでみろよ?」
コンタがそう言う間にも、マーリ、アニー、クララは魔法を発動させるべく魔力を練り上げ、トーマスとデイジーは愛剣を抜く。
「ちょっと! あんまりじゃないのかい!? こっちは友好的に接してるっていうのにさ!」
女が激高して叫ぶ。しかしコンタはどこ吹く風だ。
「いいからお前ら全員でそれ飲んでみろって。話はそれからだ。あ、飲めねえか? そうだよなぁ。毒入りじゃ飲めねえよなぁ?」
言うまでもない事だが、アナライザーゴグル越しの彼らは敵性反応を示していた。明らかに悪意を持って近付いてきている事は明白だ。それに、瓶の中身も猛毒である。即効性が高く、尚且つ致死性とくれば、もう情け容赦は必要ないだろう。
「ど、どうして……」
自分達の企みを看破され、脂汗を滴らせながら女が呟く。
「敵に秘密を教えるバカがいるか。杏子、やってくれ」
コンタがトカレフを構えながら、杏子へ指示を出す。すると、右手人差し指に装着したMDDから五条の光が放たれた。
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