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50.第一波

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「そもそも遺跡で追剥ぎするような奴らってさ、実力差を見極めて、あぶねえ相手には手を出さないんだろ?」

 追跡者を油断させるために、敢えてのんびりと休憩しているコンタ達。
 その中で、コンタが疑問を呈する。尚、周囲には杏子が遮音結界を張っており、死角から見張っているであろう追跡者には聞こえない。

「そうだな。俺達を自分達より弱いと見たか、あるいは数の力にモノを言わせて圧し潰すつもりか……」
「そうでなければ、本職・・ではないか、かしら?」
「雇われ者なら、その可能性もあるかしらね。雇用主の命令には逆らえないって事情もあるかもだしね」

 コンタの疑問に、ハンターの先輩たる、トーマス、アニー、クララの三人が順番に答えていく。それを聞いた杏子は、どれもありそうだな。そう思う。
 しかし。

「ん。問題ない」

 そんな杏子の言葉に、一同の視線が集まる。

「……凍らせる」

 すっと立ち上がり、人差し指を突き出し、にぃっと口端を釣り上げ不敵に笑う杏子に一同は苦笑いだ。



 そうして休憩しているコンタ達に近付く一団があった。杏子は遮音結界を解き、他のメンバーも武器に手をかけ臨戦態勢をとる。加えて、コンタと杏子は額にかけていたアナライザーゴグルを装着した。

「ま、待ってくれ! 怪しい者じゃない」

 近付く集団は六人。その中でただ一人の女が両手を上げながら近づいてそう言う。

「実はさっき、角ウサギとの戦闘を見かけてさ。あんた達、見たところまだ若いのに随分腕が立つじゃないか。そういう実力者とはお近付きになりたいじゃないか?  だからちょっと挨拶を、と思ってさ」

 女はもっともらしい理由を付け、連れの男たちに目配せをした。

「そうそう、すげえじゃねえか、あんたら! どうやったらあんなに素早く魔物をみつけられるんだ?」
「それそれ! 俺達にひとつ、コツを教えてもらえねえかな~?」

 人懐こそうな笑みを浮かべながら他の男たちも近づいてくる。その中で、一人の男がバックパックの中から瓶を取り出した。

「ほら、お近付きの印だ。一杯どうだい?」


 すかさずアナライザーゴグル越しに、瓶の中身を鑑定・・する杏子とコンタ。そしてお互いに視線を交わし、頷きあう。
 そしてコンタは、いつの間にか取り出したトカレフを構え、瓶を持った男の足元に威嚇射撃をした。

「それ以上近付くな。おっと、全員動くなよ? 試しにあんた、その瓶の中身、飲んでみろよ?」

 コンタがそう言う間にも、マーリ、アニー、クララは魔法を発動させるべく魔力を練り上げ、トーマスとデイジーは愛剣を抜く。

「ちょっと! あんまりじゃないのかい!? こっちは友好的に接してるっていうのにさ!」

 女が激高して叫ぶ。しかしコンタはどこ吹く風だ。

「いいからお前ら全員でそれ飲んでみろって。話はそれからだ。あ、飲めねえか? そうだよなぁ。毒入りじゃ飲めねえよなぁ?」

 言うまでもない事だが、アナライザーゴグル越しの彼らは敵性反応を示していた。明らかに悪意を持って近付いてきている事は明白だ。それに、瓶の中身も猛毒である。即効性が高く、尚且つ致死性とくれば、もう情け容赦は必要ないだろう。

「ど、どうして……」

 自分達の企みを看破され、脂汗を滴らせながら女が呟く。

「敵に秘密を教えるバカがいるか。杏子、やってくれ」

 コンタがトカレフを構えながら、杏子へ指示を出す。すると、右手人差し指に装着したMDDマルチパーパス・ダークデバイスから五条の光が放たれた。

 
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