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第四章 スクーデリア争乱
シンディのアドバイス
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模擬戦の結果という意味では、カールはシンディに一矢も報いる事が出来なかった。しかしシンディが取り敢えずの合格を出したのはそれなりの理由がある。
発雷という魔法は、雷という系統が存在しない以上、複数の系統の複合魔法という事になる。それはまさにシンディがチューヤとの模擬戦で見せた高度な技に他ならない。
「水系統の上位である氷魔法で細かい氷の粒を無数に作り、風系統魔法で上空に送り込む。そしてその氷の粒が互いにぶつかり合うように風系統魔法でさらにかき混ぜるんだ。そうして出来上がったのが雷雲だね」
シンディがそのメカニズムについて解説を始めたので、一同はそれに聞き入った。
「まず、雲を発生させる程の大量の氷の粒を作るだけで大量の魔力が必要だ。それに加えてその氷をぶつかり合わせるための運動を生み出す風の魔法。それを組み合わせると、氷がぶつかり合う事で雲の中で雷が発生する」
ふむふむと頷く一同。中でも魔法の心得があるスージィ、さらにはジルも身を乗り出して聞いている。
「発雷に必要な系統は水と風の二つって事ですよね? でも師匠がチューヤにぶつけたのは土、火、風の三系統の複合魔法なので、そちらの方が難易度が高いのでは?」
そんなスージィの質問に、シンディは首を横に振りながら言った。
「そんな事はないさ。まずは発雷にブッ込む魔力の量が桁違いに多い事。そしてカールはアタシを迎撃しながら発雷を構築していた。その難易度はアタシが放った三系統の複合魔法を超えている」
それを聞いてハッと息を飲むスージィを見ながらシンディは続ける。
「ただ、精度がまだまだだったけどな。雷ってのはその性質上、どこに落ちるか運任せな要素があるのと、高い所に落ちやすい」
「……」
それはカールも分かっていた。仲間が近くにいる状態での訓練で発雷を行使するのは誤爆の危険があったので、今回が初のお披露目だった為、明らかに練度不足である。
ただし、そんなぶっつけ本番同然できっちりと魔法を成功させたのは、カールの非凡さを示すものである。故に、シンディは取り敢えずの合格判定を出した訳だ。
「まあ、そんなに気落ちするような話でもないさ。お前には仲間がいるだろ。スージィ、ちょっと来な」
「はい!」
「その辺に土人形を作ってくれるかい?」
「はい」
スージィが少し離れた拓けた場所に、土系統魔法で人間と同縮尺の人形を作る。
「あの土人形を魔人と仮定しよう」
シンディはそう言うと、杖も使わずにいくつかの魔法陣を浮かべた。
「水の柱で人形を囲んだ?」
土人形の周囲をぐるりと囲むように、高さ三メートル程の水の柱が出現した
「別に敵の動きを止めるだけさ。土でも火でもなんでもいいんだ。この状態なら精度を上げて当てられるだろ。要はスージィがカールが発雷を確実に当てられるまでの時間を稼ぎなって事だね」
「しかし師匠……」
少し不服そうなカールがシンディに異議を申し立てる。
「私は魔人を単騎で倒したい」
「……それは魔人の動きを止め、尚且つ発雷の魔法を完璧に制御し、絶対に当てる。それを一人で出来るようになってからだな。まあ、お前ならいずれ出来るだろう」
今はまだ、魔人と一対一の勝負を考えるべきではない。強力なアタッカーであるチューヤと、纏魔をボルトにチャージさせたクロスボウという強力な武器を手に入れたマリアンヌ。二人がコンビネーションを組む事でその戦闘力は数倍にもなるだろう。
カールとスージィに関しても同様だ。多彩な魔法を操り、面制圧が可能な二人は魔人を孤立させるのに絶対必要だ。
(そしてこの四人が一つとなって動けば、一軍にも匹敵する戦力となる)
近い将来の四人の姿を思い浮かべて、シンディはわずかにだが笑みを浮かべた。
「ひとつ、ヒントをやろう」
シンディは右の太もものホルダーにあった一本のナイフを取り出した。
「コイツはちょっと希少なナイフでね。こんな事が出来る」
彼女は頭上にナイフを掲げたまま、発雷の魔法を行使した。すると発生した雷はシンディが手にしたナイフを直撃する。
「師匠!!」
発雷の威力を知るカールが叫ぶ。しかしシンディは何食わぬ顔でナイフを手にしたまま。
「希少なナイフって言っただろ」
そして刃がバチバチと帯電しているナイフを縦横無尽に振り回した。すると、帯電した刃からまるで鞭のように雷がしなり、先程スージィが作った土人形を焦がしながらズタズタに切り裂いた。
「こういう使い方もあるって事さ。カール。こいつはお前にやろう」
ナイフを鞘にしまったシンディは、そのままカールに向かって放り投げる。全く希少なものを扱うという感じではない。
「そろそろお前もそいつを使いこなせるだろうからな」
そう言ってウインクするシンディに、受け取ったカールは静かに頭を下げた。
発雷という魔法は、雷という系統が存在しない以上、複数の系統の複合魔法という事になる。それはまさにシンディがチューヤとの模擬戦で見せた高度な技に他ならない。
「水系統の上位である氷魔法で細かい氷の粒を無数に作り、風系統魔法で上空に送り込む。そしてその氷の粒が互いにぶつかり合うように風系統魔法でさらにかき混ぜるんだ。そうして出来上がったのが雷雲だね」
シンディがそのメカニズムについて解説を始めたので、一同はそれに聞き入った。
「まず、雲を発生させる程の大量の氷の粒を作るだけで大量の魔力が必要だ。それに加えてその氷をぶつかり合わせるための運動を生み出す風の魔法。それを組み合わせると、氷がぶつかり合う事で雲の中で雷が発生する」
ふむふむと頷く一同。中でも魔法の心得があるスージィ、さらにはジルも身を乗り出して聞いている。
「発雷に必要な系統は水と風の二つって事ですよね? でも師匠がチューヤにぶつけたのは土、火、風の三系統の複合魔法なので、そちらの方が難易度が高いのでは?」
そんなスージィの質問に、シンディは首を横に振りながら言った。
「そんな事はないさ。まずは発雷にブッ込む魔力の量が桁違いに多い事。そしてカールはアタシを迎撃しながら発雷を構築していた。その難易度はアタシが放った三系統の複合魔法を超えている」
それを聞いてハッと息を飲むスージィを見ながらシンディは続ける。
「ただ、精度がまだまだだったけどな。雷ってのはその性質上、どこに落ちるか運任せな要素があるのと、高い所に落ちやすい」
「……」
それはカールも分かっていた。仲間が近くにいる状態での訓練で発雷を行使するのは誤爆の危険があったので、今回が初のお披露目だった為、明らかに練度不足である。
ただし、そんなぶっつけ本番同然できっちりと魔法を成功させたのは、カールの非凡さを示すものである。故に、シンディは取り敢えずの合格判定を出した訳だ。
「まあ、そんなに気落ちするような話でもないさ。お前には仲間がいるだろ。スージィ、ちょっと来な」
「はい!」
「その辺に土人形を作ってくれるかい?」
「はい」
スージィが少し離れた拓けた場所に、土系統魔法で人間と同縮尺の人形を作る。
「あの土人形を魔人と仮定しよう」
シンディはそう言うと、杖も使わずにいくつかの魔法陣を浮かべた。
「水の柱で人形を囲んだ?」
土人形の周囲をぐるりと囲むように、高さ三メートル程の水の柱が出現した
「別に敵の動きを止めるだけさ。土でも火でもなんでもいいんだ。この状態なら精度を上げて当てられるだろ。要はスージィがカールが発雷を確実に当てられるまでの時間を稼ぎなって事だね」
「しかし師匠……」
少し不服そうなカールがシンディに異議を申し立てる。
「私は魔人を単騎で倒したい」
「……それは魔人の動きを止め、尚且つ発雷の魔法を完璧に制御し、絶対に当てる。それを一人で出来るようになってからだな。まあ、お前ならいずれ出来るだろう」
今はまだ、魔人と一対一の勝負を考えるべきではない。強力なアタッカーであるチューヤと、纏魔をボルトにチャージさせたクロスボウという強力な武器を手に入れたマリアンヌ。二人がコンビネーションを組む事でその戦闘力は数倍にもなるだろう。
カールとスージィに関しても同様だ。多彩な魔法を操り、面制圧が可能な二人は魔人を孤立させるのに絶対必要だ。
(そしてこの四人が一つとなって動けば、一軍にも匹敵する戦力となる)
近い将来の四人の姿を思い浮かべて、シンディはわずかにだが笑みを浮かべた。
「ひとつ、ヒントをやろう」
シンディは右の太もものホルダーにあった一本のナイフを取り出した。
「コイツはちょっと希少なナイフでね。こんな事が出来る」
彼女は頭上にナイフを掲げたまま、発雷の魔法を行使した。すると発生した雷はシンディが手にしたナイフを直撃する。
「師匠!!」
発雷の威力を知るカールが叫ぶ。しかしシンディは何食わぬ顔でナイフを手にしたまま。
「希少なナイフって言っただろ」
そして刃がバチバチと帯電しているナイフを縦横無尽に振り回した。すると、帯電した刃からまるで鞭のように雷がしなり、先程スージィが作った土人形を焦がしながらズタズタに切り裂いた。
「こういう使い方もあるって事さ。カール。こいつはお前にやろう」
ナイフを鞘にしまったシンディは、そのままカールに向かって放り投げる。全く希少なものを扱うという感じではない。
「そろそろお前もそいつを使いこなせるだろうからな」
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