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三章 ギルド
解決!?
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スージィが手のひらに生成した魔法陣から出現したのは、クロスボウ用のボルトと瓜二つの見た目をしたナニカ。
「結構な魔力を込めたから、強度もかなりのものよ?」
マリアンヌがスージィお手製のボルトに似せたナニカを受け取り何やら吟味し始めた。普通の鋼鉄製のボルトとスージィが魔法で生み出したボルト的ななにかを持ち比べて重さを確かめたり、指先に乗せてバランスを確かめたり。
「重さやバランス、見た目の大きさとかは殆ど変わらないみたい。細かい寸法までは分からないけどね! 凄いよスージィ!」
吟味を終えたマリアンヌがスージィを称賛する。これだけ正確に複製するとは、魔法使いという人種は一体どれだけの集中力を込めているのか尊敬の念すら抱く。
「チューヤ、これに纏魔って……」
「おう、ちょっと貸してみろ」
マリアンヌがスージィお手製のボルトをチューヤに手渡すと、受け取るなり彼は体内の魔力をボルトに流し始める。
「……こりゃすげえ」
「なになに?」
「魔力の流れが恐ろしくスムーズだ。魔法で作られたものに纏魔させるのって、こんなに楽に出来るモンなのか」
今までは自分の身体、または魔力が通っていない無機質のものにしか纏魔を施した事がないチューヤが驚いている。その反応を疑問に思ったマリアンヌに答えたのが今の言葉だ。
「なあスージィ。これってその辺の石ころより硬ぇんだろ?」
「もちろんよ! 硬度は鉄以上なのは保証するわ!」
チューヤはそれすら確認出来ればいいと言いたげな、満足した笑みを浮かべて言った。
「それなら問題ねえ。こいつがあの魔族の横っ面に命中してたら、あの野郎の頭は木端微塵だったろうぜ」
ただの石ころに纏魔を施し、普通にブン投げただけで魔族にはダメージを与えられていた。それが投石以上の威力を持つクロスボウから発射されたこの纏魔ボルトが直撃したらどうなるか。チューヤの脳裏にはあの魔族の頭が弾け飛ぶ映像が浮かんでいた。
「纏魔ボルトとクロスボウの威力はお墨付き。あとはその纏魔をチャージしたボルトがどれくらいの期間その状態を保持できるのかを検証だね。今日のところはそろそろ屋敷に戻ろうか。全員揃っているところで私から話もあるのでね」
元々ジルがアストレイズの屋敷に来たのはマリアンヌにクロスボウを届ける為でもあるが、他にも用向きがあった。しかし生憎カールとスージィは依頼を受けて外出中であったため、そちらの方の用事はまだ済んでいない。
こうして一同はアストレイズの拠点である屋敷へと帰還した。
▼△▼
屋敷に戻り、全員が食堂のテーブルに着いたタイミングで、ミラがテーブルに軽食を並べていく。パンや焼き菓子などをつまみながら少しばかりの空腹を落ち着かせると、ジルがこれからが本題だと前置きして一同を見渡した。
「魔族の件だ」
全員の視線がジルに集まる。控えていたマンセルやミラも彼女を注視した。
「スナイデル男爵と私の連名で上げた報告書を読んだ国王陛下の反応だが、魔法が効かないという点については危機感を抱かれたようだ」
ジルの話によれば、スナイデル男爵とジルの、貴族が二人で出した報告と言う事で、国王はそれを事実として受け止めたらしい。何より、バーサク・シープの群れが作戦行動らしきものを取った。この証言が決め手になったらしい。
「このミナルディ王国はスクーデリアとは違い、戦力はそれほど魔法使いに偏った編成にはなっていない。個々の練度も高いし、今の状態で強化していく事を決断なされたようだ」
魔族を脅威としてとらえ、何等かの対応を講じるというミナルディ王の答えに、一同は安堵の吐息を漏らした。しかし、ジルだけは表情が険しい。
「シンシアのヤツにも情報を送ったんだがね」
ジルには他国であるスクーデリアに、国を動かす程の太いパイプがある訳ではない。そうであれば、最も親しい人物であるシンディに知らせるの一番だろう。幸い、シンディには良くも悪くも国を動かす力がある。
しかし、ジルの表情を見る限り、あまり状況は芳しくないらしい事が分かる。
「アイツが懇意にしてる軍部の連中経由で上に報告を上げたそうなんだが……まるで話にならないそうだ。なまじ強力な魔法使いを多く抱えてるせいで、自国の軍事力には絶対の自信を持っている」
アストレイズのメンバーの思想は師であるシンディから受け継いでいる。魔法を使えない者は魔法使いの肉の盾ではないが、その身体を張る者がいなければ魔法使いは単なる砲台に過ぎない事を理解している。故に、時間を掛けて大魔法を放つよりは、発動スピードと応用に重きを置いている。
何より、攻撃魔法を使えない者の重要性について、スクーデリアの上層部とは考え方が全く違う。魔力による身体強化を使えない者はともかく、身体強化によって超人的な能力を発揮できる者は、それだけで戦局を左右するピースになり得る。そういった運用をすべきという意見を黙殺されているのが今のスクーデリア王国であり、魔法戦士養成学校なのだ。
「で、君達の師匠からの伝言だ」
ジルがテーブルの上に一枚の紙きれを差し出した。アストレイズの四人が身を乗り出してそれを見る。そこにはいつものように、短い分が一行で認められていた。
【魔族を余裕でブッ殺せるくらい強くなっとけ】
一同はそれを見て、『らしいな』と笑わずにはいられなかった。
「結構な魔力を込めたから、強度もかなりのものよ?」
マリアンヌがスージィお手製のボルトに似せたナニカを受け取り何やら吟味し始めた。普通の鋼鉄製のボルトとスージィが魔法で生み出したボルト的ななにかを持ち比べて重さを確かめたり、指先に乗せてバランスを確かめたり。
「重さやバランス、見た目の大きさとかは殆ど変わらないみたい。細かい寸法までは分からないけどね! 凄いよスージィ!」
吟味を終えたマリアンヌがスージィを称賛する。これだけ正確に複製するとは、魔法使いという人種は一体どれだけの集中力を込めているのか尊敬の念すら抱く。
「チューヤ、これに纏魔って……」
「おう、ちょっと貸してみろ」
マリアンヌがスージィお手製のボルトをチューヤに手渡すと、受け取るなり彼は体内の魔力をボルトに流し始める。
「……こりゃすげえ」
「なになに?」
「魔力の流れが恐ろしくスムーズだ。魔法で作られたものに纏魔させるのって、こんなに楽に出来るモンなのか」
今までは自分の身体、または魔力が通っていない無機質のものにしか纏魔を施した事がないチューヤが驚いている。その反応を疑問に思ったマリアンヌに答えたのが今の言葉だ。
「なあスージィ。これってその辺の石ころより硬ぇんだろ?」
「もちろんよ! 硬度は鉄以上なのは保証するわ!」
チューヤはそれすら確認出来ればいいと言いたげな、満足した笑みを浮かべて言った。
「それなら問題ねえ。こいつがあの魔族の横っ面に命中してたら、あの野郎の頭は木端微塵だったろうぜ」
ただの石ころに纏魔を施し、普通にブン投げただけで魔族にはダメージを与えられていた。それが投石以上の威力を持つクロスボウから発射されたこの纏魔ボルトが直撃したらどうなるか。チューヤの脳裏にはあの魔族の頭が弾け飛ぶ映像が浮かんでいた。
「纏魔ボルトとクロスボウの威力はお墨付き。あとはその纏魔をチャージしたボルトがどれくらいの期間その状態を保持できるのかを検証だね。今日のところはそろそろ屋敷に戻ろうか。全員揃っているところで私から話もあるのでね」
元々ジルがアストレイズの屋敷に来たのはマリアンヌにクロスボウを届ける為でもあるが、他にも用向きがあった。しかし生憎カールとスージィは依頼を受けて外出中であったため、そちらの方の用事はまだ済んでいない。
こうして一同はアストレイズの拠点である屋敷へと帰還した。
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屋敷に戻り、全員が食堂のテーブルに着いたタイミングで、ミラがテーブルに軽食を並べていく。パンや焼き菓子などをつまみながら少しばかりの空腹を落ち着かせると、ジルがこれからが本題だと前置きして一同を見渡した。
「魔族の件だ」
全員の視線がジルに集まる。控えていたマンセルやミラも彼女を注視した。
「スナイデル男爵と私の連名で上げた報告書を読んだ国王陛下の反応だが、魔法が効かないという点については危機感を抱かれたようだ」
ジルの話によれば、スナイデル男爵とジルの、貴族が二人で出した報告と言う事で、国王はそれを事実として受け止めたらしい。何より、バーサク・シープの群れが作戦行動らしきものを取った。この証言が決め手になったらしい。
「このミナルディ王国はスクーデリアとは違い、戦力はそれほど魔法使いに偏った編成にはなっていない。個々の練度も高いし、今の状態で強化していく事を決断なされたようだ」
魔族を脅威としてとらえ、何等かの対応を講じるというミナルディ王の答えに、一同は安堵の吐息を漏らした。しかし、ジルだけは表情が険しい。
「シンシアのヤツにも情報を送ったんだがね」
ジルには他国であるスクーデリアに、国を動かす程の太いパイプがある訳ではない。そうであれば、最も親しい人物であるシンディに知らせるの一番だろう。幸い、シンディには良くも悪くも国を動かす力がある。
しかし、ジルの表情を見る限り、あまり状況は芳しくないらしい事が分かる。
「アイツが懇意にしてる軍部の連中経由で上に報告を上げたそうなんだが……まるで話にならないそうだ。なまじ強力な魔法使いを多く抱えてるせいで、自国の軍事力には絶対の自信を持っている」
アストレイズのメンバーの思想は師であるシンディから受け継いでいる。魔法を使えない者は魔法使いの肉の盾ではないが、その身体を張る者がいなければ魔法使いは単なる砲台に過ぎない事を理解している。故に、時間を掛けて大魔法を放つよりは、発動スピードと応用に重きを置いている。
何より、攻撃魔法を使えない者の重要性について、スクーデリアの上層部とは考え方が全く違う。魔力による身体強化を使えない者はともかく、身体強化によって超人的な能力を発揮できる者は、それだけで戦局を左右するピースになり得る。そういった運用をすべきという意見を黙殺されているのが今のスクーデリア王国であり、魔法戦士養成学校なのだ。
「で、君達の師匠からの伝言だ」
ジルがテーブルの上に一枚の紙きれを差し出した。アストレイズの四人が身を乗り出してそれを見る。そこにはいつものように、短い分が一行で認められていた。
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