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一章 魔法戦士養成学校編
マリアンヌ VS スージィ(決着)
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スージィが土系統の魔法を立て続けに放っていく。
威力よりは速射性を重視した足止め目的の攻撃。しかしそれは悉くマリアンヌに回避され、徐々に間合いを詰められいた。
(いくら身体強化を施しているとは言え……)
「反応が良すぎるのよっ!」
撃っても撃っても当たらない攻撃に業を煮やしたスージィは、心の声がついには口を突いて出てしまう。
しかし彼女はその感想が少々的外れである事に気付いていない。
――先読みの偏差射撃が、その着弾点を更に先読みされているとは。
「くっ!」
まるで着弾点を分かっているかのように避けまくるマリアンヌに、長距離での魔法攻撃を当てるのは困難だと判断したスージィは、ついに作戦を切り替える。
(近距離での高威力魔法なら簡単に回避は!)
スージィは浮かべていた五つの魔法陣を消し去った。そしてすぐさま違う魔法を発動させるための魔力を練り始めた。
「?――そうか!」
突然攻撃が止んだ事に一瞬虚を突かれたマリアンヌだが、すぐさまスージィの思惑に気付いて真っ直ぐに距離を詰めに行く。
(乗ってきた!)
スージィの思惑としてはこうだ。マリアンヌは、自分が攻撃を止めた事で魔力切れと判断するだろう。それならば油断して突っ込んでくるはず。そこへ至近距離か魔法を叩き込む。
果たして、マリアンヌはスージィの思惑通り正面から突っ込んできた。
(よし! 練れた!)
マリアンヌの接近までに魔法の構築が間に合った。
後は目の前二メートル地点の地中に魔法陣を展開して相手が飛び込んで来るのを待つのみ。スージィは如何にも魔力切れを思わせるように杖を構え、接近戦の覚悟を匂わせる。
切羽詰まったような表情の中に僅かに口角を吊り上げるスージィは、ここが好機とばかりに地中の魔法を発動させる。
「え? うそ!?」
しかしスージィが見たものは、自分以上に口角を吊り上げたマリアンヌの姿。
前髪に隠れて普段はあまり見る事のないその双眸は、サイドステップで前髪が靡き、ハッキリとその姿を現した。その白い輝きを。
(なるほど、罠は地中って事か! 残念、全部見えてるよ!)
彼女の魔眼・白は、浅い位置とはいえ、地中の魔法陣すら見通していた。あとはスージィを見据えて魔法発動の兆候を掴むだけ。
マリアンヌは間合いを詰めていく過程で、スージィの表情筋の微々たる変化を見逃さなかった。
(来る!)
タイミングさえ掴めば魔法陣を避けて行けばいいだけ。近距離での奇襲を狙ったものならば、複雑な術式の魔法ではないはずだ。
マリアンヌはそう判断し、地中の魔法陣の直前でサイドステップ。魔法陣を躱してスージィの左側へ回り込んだ。その時極上の笑みを浮かべていた事は、本人は気付いていない。
マリアンヌのサイドステップの直後、地中の魔法陣が魔法を発動させる。直径一メートル、深さ五メートル程の落とし穴が出現した。タイミングは完璧。彼女が真っ直ぐ進んでさえいれば。
しかし、そこに落ちる筈だった者はすでにスージィの真横に迫っており、強かに腹部を蹴り抜いた。
スージィは咄嗟の強化が間に合わず、まともに食らって数メートル吹き飛ばされてしまう。
開始直後の攻防で食らった一撃と同じ場所。蓄積されたダメージは、立ち上がろうとするスージィの意志を身体に伝える事はなかった。
「あ、あなた、見かけによらず容赦がないのね……私の負けよ」
自らの腹を押さえながら蹲るスージィが見上げた先には、魔眼・白を輝かせたマリアンヌが木剣を突き付けていた。
*2020.2.20改稿しました。
威力よりは速射性を重視した足止め目的の攻撃。しかしそれは悉くマリアンヌに回避され、徐々に間合いを詰められいた。
(いくら身体強化を施しているとは言え……)
「反応が良すぎるのよっ!」
撃っても撃っても当たらない攻撃に業を煮やしたスージィは、心の声がついには口を突いて出てしまう。
しかし彼女はその感想が少々的外れである事に気付いていない。
――先読みの偏差射撃が、その着弾点を更に先読みされているとは。
「くっ!」
まるで着弾点を分かっているかのように避けまくるマリアンヌに、長距離での魔法攻撃を当てるのは困難だと判断したスージィは、ついに作戦を切り替える。
(近距離での高威力魔法なら簡単に回避は!)
スージィは浮かべていた五つの魔法陣を消し去った。そしてすぐさま違う魔法を発動させるための魔力を練り始めた。
「?――そうか!」
突然攻撃が止んだ事に一瞬虚を突かれたマリアンヌだが、すぐさまスージィの思惑に気付いて真っ直ぐに距離を詰めに行く。
(乗ってきた!)
スージィの思惑としてはこうだ。マリアンヌは、自分が攻撃を止めた事で魔力切れと判断するだろう。それならば油断して突っ込んでくるはず。そこへ至近距離か魔法を叩き込む。
果たして、マリアンヌはスージィの思惑通り正面から突っ込んできた。
(よし! 練れた!)
マリアンヌの接近までに魔法の構築が間に合った。
後は目の前二メートル地点の地中に魔法陣を展開して相手が飛び込んで来るのを待つのみ。スージィは如何にも魔力切れを思わせるように杖を構え、接近戦の覚悟を匂わせる。
切羽詰まったような表情の中に僅かに口角を吊り上げるスージィは、ここが好機とばかりに地中の魔法を発動させる。
「え? うそ!?」
しかしスージィが見たものは、自分以上に口角を吊り上げたマリアンヌの姿。
前髪に隠れて普段はあまり見る事のないその双眸は、サイドステップで前髪が靡き、ハッキリとその姿を現した。その白い輝きを。
(なるほど、罠は地中って事か! 残念、全部見えてるよ!)
彼女の魔眼・白は、浅い位置とはいえ、地中の魔法陣すら見通していた。あとはスージィを見据えて魔法発動の兆候を掴むだけ。
マリアンヌは間合いを詰めていく過程で、スージィの表情筋の微々たる変化を見逃さなかった。
(来る!)
タイミングさえ掴めば魔法陣を避けて行けばいいだけ。近距離での奇襲を狙ったものならば、複雑な術式の魔法ではないはずだ。
マリアンヌはそう判断し、地中の魔法陣の直前でサイドステップ。魔法陣を躱してスージィの左側へ回り込んだ。その時極上の笑みを浮かべていた事は、本人は気付いていない。
マリアンヌのサイドステップの直後、地中の魔法陣が魔法を発動させる。直径一メートル、深さ五メートル程の落とし穴が出現した。タイミングは完璧。彼女が真っ直ぐ進んでさえいれば。
しかし、そこに落ちる筈だった者はすでにスージィの真横に迫っており、強かに腹部を蹴り抜いた。
スージィは咄嗟の強化が間に合わず、まともに食らって数メートル吹き飛ばされてしまう。
開始直後の攻防で食らった一撃と同じ場所。蓄積されたダメージは、立ち上がろうとするスージィの意志を身体に伝える事はなかった。
「あ、あなた、見かけによらず容赦がないのね……私の負けよ」
自らの腹を押さえながら蹲るスージィが見上げた先には、魔眼・白を輝かせたマリアンヌが木剣を突き付けていた。
*2020.2.20改稿しました。
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