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告白
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「それにしてもみんなタフだよな…」
普段の落ち着きを取り戻した『森の梟亭』の食堂のカウンター席。ストラト、テル、ユキと並んで座り、カウンターの中にはスタインだ。宴の片付けも終え一息つきながらテルが呟いた言葉だ。
「冒険者ってのは依頼を終えた後に使う体力は普段使わねえ脳みそから搾り出してるって話だぜ?」
何気に失礼な事を言うスタイン。テルの両脇の少女2人はフムフムと真面目に聞いている。
「おやっさん。それ、他の冒険者がいるトコで言っちゃダメだぞ?依頼中だってちゃんと頭使ってるんだからさ。」
「なんだと!?ゼマティスの野郎、騙しやがって!」
いやいや、真に受けるなよ、と思いながらもあのおっさんならやりかねない、とゼマティスの人物像を思い出して納得してしまうテル。
「くっくっく。あのゼマティスという御仁、面白いな。私は好きだよ。」
「あれ?ユキちゃんはゼマティスさんみたいのがタイプなの? へぇ?じゃあテル君は私が貰っちゃおうかn「ちっちちちち違うのだ!ゼマティス殿はよく茶菓子をくれるのだ…それで… 私が好いているのはテルだけだぞ!?」
「「「………へ?」」」
「う……うわわわあぁぁぁぁぁ!」
なぜか話の流れの中で盛大に自爆してしまったユキは悲鳴を上げて部屋へ退避してしまった。残された3人は微妙な雰囲気だ。
「テル君。テル君はどうなの?」
意を決してストラトが尋ねた。こういう聞き方でテルの気持ちを測るのは卑怯かもしれないと思いつつも。
「ユキの事は…好きだよ。」
「それは恋愛感情として?」
「そう、だな。」
「!ごめんなさい、私も今日はもう休むね!」
ストラトも小走りに自室へと駆けて行った。目に光るものを浮かべて。
「へっへへ。モテる男は辛えな、テル。」
「おやっさん、怒らないのか?」
「ん?なんでだ?」
「だって俺今ストラトを泣かしちまったじゃねえか。」
「ああ。今のお前は誠実だったからな。だがよ。」
ふと、スタインの視線が鋭くなる。
「あいつは親の俺から見ても分かりやすいくらいお前に対する好意を隠していなかっただろ?ストラトの何が不足だ?」
「不足なんかある訳ないだろ。」
対してテルの視線は悲し気なものになる。
「おやっさんも聞いてただろ?俺は前世では傭兵だった。たくさん人を殺した。もちろん自分が生きる為だがそれでも人殺しは人殺しだ。そしてエツリアからここに逃れて来る時もたくさん殺した。家臣20人と両親と弟、妹。」
黙ってテルの話を聞いているスタインの瞳はなんとも言えない悲しみをたたえている。
「こんな俺が人の好意を受け入れる事が出来る訳ないだろ。」
「それじゃあユキにはなんで…」
「おやっさん。ユキの前の世界での仕事を知ってるか?」
「たしか『シノビ』とか言ってたな。」
「そうだ。忍びってのはな。戦場に出る事はもちろんだが諜報や暗殺とか言う裏の仕事や汚れ仕事を専門に扱う職業なんだ。華々しさや栄誉とは無縁のな。恐らくユキが潜った修羅場は俺なんかが及ぶ所ではないよ。」
テルとユキの壮絶すぎる経歴。しばし絶句するスタイン。目の前の優し気な男が躊躇なく人を殺す姿が想像出来ない。あの小さな可憐な少女が闇社会を生き抜いて来たなど信じられない。
しかし。
「それでもよ。おめえやユキが見せる優しい眼差しは悪人のものじゃねえ。それくらいは分かるぜ?つまりはよ、おめえやユキは自分や自分の大事なものを守る為なら敵を殺す事には躊躇しない。それだけの事なんじゃねえのか?それなら俺もおめえらと一緒だな。ストラトに害を及ぼす奴ぁ迷わず殺す。どうだ?一緒だろ?はっはっは!」
そんな単純でもないだろうと思いつつ、スタインの言葉に救われた気持ちになるテル。
「でもよ、テル。おめえがそんな気遣いが出来る奴でよかったよ。そのうちストラトも分かってくれるだろうぜ?」
「…だといいけどな。」
「ほらほら、今日はもうしめえだ。おめえは部屋に戻ってする事があんだろ。」
「あ。」
最後の最後で自爆したユキを復活させるという高難易度ミッションが残っていた事を思い出して泣きたくなるテルだった。
『コンコン』
自分が借りている部屋ノックする。
「ユキー? 入るぞー?」
暗い部屋のベッドの上で1人ユキは佇んでいた。
「…あんな皆の前で…私ははしたない女だ。済まぬな、テル。」
周りの人間から見れば何を今更、と言った話である。街中の通りで桃色空間を作り出すような2人なのだ。テルにしても21世紀を生きていた訳で、好きな男の名前を口走った程度ではしたないとはオーバーだろうと思う。しかしそれも戦国の女の奥ゆかしさという奴なのかも知れないと思えば愛しくもある。
「俺もさ、2人に言って来た。ユキが好きだって。おかげでストラトは泣かせちまったけどね。」
「!!」
はっとした顔でテルを見るユキ。忍びの彼女は夜目が利く。テルの表情は照れているように見えた。
「テルとてストラトがテルを好いているのは分かっていただろうに。」
「ああ。でもその場しのぎの誤魔化しとかは良くないんじゃないかな。俺はユキがいいんだ。それに…」
「それに?」
「おそらく俺のこの先は戦いばかりの人生だと思う。相手は人か魔物か分からないけどさ。」
「なるほど…」
(ストラトにはあくまでも普通の少女として暮らして欲しいという事か。確かに私の手は血に塗れているからな。テルと共に歩むには丁度良い。)
「不器用で、優しくて、強いお人だ。流石は御館様の血を引くだけの事はある。」
「いや。直系じゃないからそれ止めて。」
心の距離だけは着々と縮めていく2人だった。
普段の落ち着きを取り戻した『森の梟亭』の食堂のカウンター席。ストラト、テル、ユキと並んで座り、カウンターの中にはスタインだ。宴の片付けも終え一息つきながらテルが呟いた言葉だ。
「冒険者ってのは依頼を終えた後に使う体力は普段使わねえ脳みそから搾り出してるって話だぜ?」
何気に失礼な事を言うスタイン。テルの両脇の少女2人はフムフムと真面目に聞いている。
「おやっさん。それ、他の冒険者がいるトコで言っちゃダメだぞ?依頼中だってちゃんと頭使ってるんだからさ。」
「なんだと!?ゼマティスの野郎、騙しやがって!」
いやいや、真に受けるなよ、と思いながらもあのおっさんならやりかねない、とゼマティスの人物像を思い出して納得してしまうテル。
「くっくっく。あのゼマティスという御仁、面白いな。私は好きだよ。」
「あれ?ユキちゃんはゼマティスさんみたいのがタイプなの? へぇ?じゃあテル君は私が貰っちゃおうかn「ちっちちちち違うのだ!ゼマティス殿はよく茶菓子をくれるのだ…それで… 私が好いているのはテルだけだぞ!?」
「「「………へ?」」」
「う……うわわわあぁぁぁぁぁ!」
なぜか話の流れの中で盛大に自爆してしまったユキは悲鳴を上げて部屋へ退避してしまった。残された3人は微妙な雰囲気だ。
「テル君。テル君はどうなの?」
意を決してストラトが尋ねた。こういう聞き方でテルの気持ちを測るのは卑怯かもしれないと思いつつも。
「ユキの事は…好きだよ。」
「それは恋愛感情として?」
「そう、だな。」
「!ごめんなさい、私も今日はもう休むね!」
ストラトも小走りに自室へと駆けて行った。目に光るものを浮かべて。
「へっへへ。モテる男は辛えな、テル。」
「おやっさん、怒らないのか?」
「ん?なんでだ?」
「だって俺今ストラトを泣かしちまったじゃねえか。」
「ああ。今のお前は誠実だったからな。だがよ。」
ふと、スタインの視線が鋭くなる。
「あいつは親の俺から見ても分かりやすいくらいお前に対する好意を隠していなかっただろ?ストラトの何が不足だ?」
「不足なんかある訳ないだろ。」
対してテルの視線は悲し気なものになる。
「おやっさんも聞いてただろ?俺は前世では傭兵だった。たくさん人を殺した。もちろん自分が生きる為だがそれでも人殺しは人殺しだ。そしてエツリアからここに逃れて来る時もたくさん殺した。家臣20人と両親と弟、妹。」
黙ってテルの話を聞いているスタインの瞳はなんとも言えない悲しみをたたえている。
「こんな俺が人の好意を受け入れる事が出来る訳ないだろ。」
「それじゃあユキにはなんで…」
「おやっさん。ユキの前の世界での仕事を知ってるか?」
「たしか『シノビ』とか言ってたな。」
「そうだ。忍びってのはな。戦場に出る事はもちろんだが諜報や暗殺とか言う裏の仕事や汚れ仕事を専門に扱う職業なんだ。華々しさや栄誉とは無縁のな。恐らくユキが潜った修羅場は俺なんかが及ぶ所ではないよ。」
テルとユキの壮絶すぎる経歴。しばし絶句するスタイン。目の前の優し気な男が躊躇なく人を殺す姿が想像出来ない。あの小さな可憐な少女が闇社会を生き抜いて来たなど信じられない。
しかし。
「それでもよ。おめえやユキが見せる優しい眼差しは悪人のものじゃねえ。それくらいは分かるぜ?つまりはよ、おめえやユキは自分や自分の大事なものを守る為なら敵を殺す事には躊躇しない。それだけの事なんじゃねえのか?それなら俺もおめえらと一緒だな。ストラトに害を及ぼす奴ぁ迷わず殺す。どうだ?一緒だろ?はっはっは!」
そんな単純でもないだろうと思いつつ、スタインの言葉に救われた気持ちになるテル。
「でもよ、テル。おめえがそんな気遣いが出来る奴でよかったよ。そのうちストラトも分かってくれるだろうぜ?」
「…だといいけどな。」
「ほらほら、今日はもうしめえだ。おめえは部屋に戻ってする事があんだろ。」
「あ。」
最後の最後で自爆したユキを復活させるという高難易度ミッションが残っていた事を思い出して泣きたくなるテルだった。
『コンコン』
自分が借りている部屋ノックする。
「ユキー? 入るぞー?」
暗い部屋のベッドの上で1人ユキは佇んでいた。
「…あんな皆の前で…私ははしたない女だ。済まぬな、テル。」
周りの人間から見れば何を今更、と言った話である。街中の通りで桃色空間を作り出すような2人なのだ。テルにしても21世紀を生きていた訳で、好きな男の名前を口走った程度ではしたないとはオーバーだろうと思う。しかしそれも戦国の女の奥ゆかしさという奴なのかも知れないと思えば愛しくもある。
「俺もさ、2人に言って来た。ユキが好きだって。おかげでストラトは泣かせちまったけどね。」
「!!」
はっとした顔でテルを見るユキ。忍びの彼女は夜目が利く。テルの表情は照れているように見えた。
「テルとてストラトがテルを好いているのは分かっていただろうに。」
「ああ。でもその場しのぎの誤魔化しとかは良くないんじゃないかな。俺はユキがいいんだ。それに…」
「それに?」
「おそらく俺のこの先は戦いばかりの人生だと思う。相手は人か魔物か分からないけどさ。」
「なるほど…」
(ストラトにはあくまでも普通の少女として暮らして欲しいという事か。確かに私の手は血に塗れているからな。テルと共に歩むには丁度良い。)
「不器用で、優しくて、強いお人だ。流石は御館様の血を引くだけの事はある。」
「いや。直系じゃないからそれ止めて。」
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