上 下
24 / 60

査定

しおりを挟む
 多数のゴブリンと3体のオーガ。これらの死骸の処理とオーガからは素材の剥ぎ取り。角や骨などは高い硬度がある為いろいろと使い道があるらしい。テルは後でモーリスの工房に頼んで何か作って貰おうかと考えていた。

 テルもユキもオーガとの戦闘でそれなり消耗した為戦場の後処理は他のみんなに任せている。もう少しすればギルドからの応援も来る筈だ。

 「な、なんだこりゃ!?ゴブリン討伐じゃなかったのかよ!?」

 「おいおい、オーガの死体が3つだぁ?なんでお前ら全員生きてんだよ?」

 ギルドからの応援部隊が到着したのだがこの現場を見て皆騒然とした。それもそうだろう。30人規模の戦力でオーガ3体を相手にしたら普通は犠牲者が出て当然の難易度だ。しかも今回は上位種を含む100以上のゴブリンの群れを相手にしながらだ。

 「ああ、そのオーガ3体は傷面スカーフェイスとユキ嬢ちゃんがやったんだよ。」

 話を聞いた援軍の冒険者はあんぐりと口を開ける。

 (たった2人でオーガ3体だと?しかもあの2人、見たところ全くの無傷じゃねえか。こいつら、Aランク並みの実力があるって事か?)

 他の冒険者達もゴブリンの上位種と渡り合った者は多少の手傷は負っているが動けない程ではない。異常と言っていい戦果だった。

 ともあれ、幾分回復したテル達も手伝い、作業は急ピッチで進む。

 「よーし!こんなモンでいいだろ。みんな!今日はご苦労だった!撤収して報酬山分けすんぞ!」

 《おおーー!!》

 リーダーの号令で全員が馬車を待たせている場所まで動き出す。ただし逃げたゴブリンがいるかも知れないので警戒は怠らない。

 森を突き抜け街道に出ると漸く冒険者達の緊張が緩む。ガヤガヤと今日の武勇伝を語る者たち。皆一様に明るい表情だ。

 街に入りギルドに到着するとゼマティスと受付嬢さんが出迎えてくれた。リーダーの冒険者はゼマティスと話があるようでギルマスの執務室に行った様だ。

 「査定が済むまでお待ちください。」

 との事なので残ったテル達を含む冒険者はギルド内の酒場で軽く喉を潤している。査定が終了した者から受付に呼ばれて報酬を受け取って行くがテル達の名前はなかなか呼ばれない。オーガの件もあるからそれも仕方ないとはテルもユキも思っていた。しかし事態は2人の予想の斜め上を行く。

 「テルさん、ユキさん、ギルドマスターがお呼びです。執務室までおいで下さいますか?」
 
 オーガの件の詳細を聞きたいのかな?などと軽く考えながら執務室をノックするテル。

 「テルとユキです。入ります。」

 「おう、待ってたぞ。まあこれでも食いながら話そうや。」

 テーブルにはこの間とは違う茶菓子が用意されていた。もうユキの視線は茶菓子に釘付けだ。

 「ユキ。よだれ。」

 「はっ!?」じゅるり。

 「ふっ、ほら、ユキは遠慮しねえで食ってていいぜ?話は傷面スカーフェイスから聞くからよ。」

 ゼマティスの言葉にユキは瞳をキラキラさせて

 「そ、そうか!かたじけない。では頂こう。」

 なぜかソファの上に正座で食べている。日本の習慣はそう簡単には抜けないらしい。

 「あー、それでだな。オーガの話を詳しく聞かせて欲しいんだが。」

 ユキは茶菓子に夢中なのでテルが苦笑しながら対応する。

 「詳しくと言っても大した事は話せませんけどね。奴らの集落に近付いた辺りでゴブリンがわらわら飛び出して来たんです。初めは俺達を発見して迎撃に出て来たかと思ったんですがどうも様子がおかしくて。」

 「ふむ。」

 「何かから逃げているような、そんな感じでした。それで俺とユキは集落の中に様子を見に行ったんですがそこでオーガが3体、ゴブリンを蹂躙していました。」

 「じゃあ中に入ったのはお前ら2人だけって事か。」

 「おそらくそうだと思います。最初の1体をユキが、残り2体を俺が。俺が2体を相手にしている間にユキはゴブリンを駆逐していましたよ。」

 「俺達が外のゴブリン共を片付けて内部に突入した際の状況から見てもこいつの話は間違いないと思うぜ?オーガの死体の状況を見ても1体は焼死。残り2体は物理。確か傷面スカーフェイスは魔法のスキルはねえんだよな?」

 「そうですね。」

 リーダーをやっていた男の補足説明が入る。テルに対して魔法が使えない事を確認する際には蔑みの色はない。ただ事実を確認している。それだけに見えた。

 (この国は本当に、魔法がどうとか関係ないんだな。)

 テルは魔法スキルの有無による差別のないこの国を好ましく感じた。今更になってかよ、とテルは思うが人々からその差別のなさを実感できる程テルは人々に心を開いていなかった。

 「なるほどな。恐らくゴブリン共はそのオーガに縄張りを追われて廃村に住み着いたんだろう。そしてオーガはそこまでゴブリンを追って来たと。そんな所だろうな。」

 なるほど、とテルは真面目に話を聞いているがユキは茶菓子を既に食べ終わり、テルの茶菓子をロックオンしている。その姿が無性に可愛らしく見えたテルは自分の分をユキに手渡す。

 天使のような笑顔で受け取るユキの姿にリーダーもゼマティスも自分の分を分けてやる。

 「うわぁ!すまない!テル、ここの人達はみな親切だな!」

 もうホクホク顔である。この瞬間、ユキのギルドに対しての認識は『お菓子をくれる優しいおじさんがいる所』になった。

 「おほん!あー、それで本題なんだがな。」

 取り繕うようなゼマティスの言葉に意外な顔をするテルだがリーダーの男はうんうんと頷いている。ユキははむはむとお菓子に夢中。

 「実はそこにいるシモンズから推薦があってな。おめでとう!お前さん達は今日からAランク冒険者だ。」

 (これが予想の斜め上を行くってヤツか…)

 テルは我関せずと言った感じで茶菓子を食べているユキにジト目を向けたのだった。 
 
しおりを挟む
感想 62

あなたにおすすめの小説

【完】真実をお届け♪※彷徨うインベントリ※~ミラクルマスターは、真実を伝えたい~

桜 鴬
ファンタジー
スキル無限収納は、別名を亜空間収納といわれているわ。このスキルを所持する人間たちは、底無しとも言われる収納空間を利用出来るの。古の人間たちは誰もが大気中から体内へ無限に魔力を吸収巡回していた。それ故に誰もが亜空間を収納スペースとして利用していた。だけどそれが当たり前では無くなってしまった。それは人間の驕りからきたもの。 やがて………… 無限収納は無限では無く己の魔力量による限りのある収納となり、インベントリと呼ばれるようになった。さらには通常のスキルと同じく、誰もが使えるスキルでは無くなってしまった……。 主を亡くしたインベントリの中身は、継承の鍵と遺言により、血族にのみ継承ができる。しかし鍵を作るのは複雑て、なおかつ定期的な更新が必要。 だから…… 亜空間には主を失い、思いを託されたままの無数のインベントリが……あてもなく……永遠に……哀しくさ迷っている………… やがてその思いを引き寄せるスキルが誕生する。それがミラクルマスターである。 なーんちゃってちょっとカッコつけすぎちゃった。私はミラクルマスター。希少なスキル持ちの王子たちをサポートに、各地を巡回しながらお仕事してまーす!苺ケーキが大好物だよん。ちなみに成人してますから!おちびに見えるのは成長が遅れてるからよ。仕方ないの。子は親を選べないからね。あ!あのね。只今自称ヒロインさんとやらが出没中らしいの。私を名指しして、悪役令嬢だとわめいているそう。でも私は旅してるし、ミラクルマスターになるときに、王族の保護に入るから、貴族の身分は捨てるんだよね。どうせ私の親は処刑されるような罪人だったから構わない。でもその悪役令嬢の私は、ボンキュッボンのナイスバディらしい。自称ヒロインさんの言葉が本当なら、私はまだまだ成長する訳ですね!わーい。こら!頭撫でるな!叩くのもダメ!のびなくなっちゃうー!背はまだまだこれから伸びるんだってば! 【公開予定】 (Ⅰ)最後まで優しい人・㊤㊦ (Ⅱ)ごうつくばりじいさん・①~⑤ (Ⅲ)乙女ゲーム・ヒロインが!転生者編①~⑦ 短編(数話毎)読み切り方式。(Ⅰ)~(Ⅲ)以降は、不定期更新となります<(_ _*)>

マスターズ・リーグ ~傭兵王シリルの剣~

ふりたけ(振木岳人)
ファンタジー
「……あの子を、シリルの事を頼めるか? ……」  騎士王ボードワンが天使の凶刃に倒れた際、彼は実の息子である王子たちの行く末を案じたのではなく、その後の人類に憂いて、精霊王に「いわくつきの子」を託した。 その名はシリル、名前だけで苗字の無い子。そして騎士王が密かに育てようとしていた子。再び天使が地上人絶滅を目的に攻めて来た際に、彼が生きとし生ける者全ての希望の光となるようにと。  この物語は、剣技にも魔術にもまるで秀でていない「どん底シリル」が、栄光の剣を持って地上に光を与える英雄物語である。

とある中年男性の転生冒険記

うしのまるやき
ファンタジー
中年男性である郡元康(こおりもとやす)は、目が覚めたら見慣れない景色だったことに驚いていたところに、アマデウスと名乗る神が現れ、原因不明で死んでしまったと告げられたが、本人はあっさりと受け入れる。アマデウスの管理する世界はいわゆる定番のファンタジーあふれる世界だった。ひそかに持っていた厨二病の心をくすぐってしまい本人は転生に乗り気に。彼はその世界を楽しもうと期待に胸を膨らませていた。

10044年の時間跳躍(タイムリープ)

ハル
ファンタジー
【目が覚めるとそこは1万年後の世界だった】 亜空間物理学者リョウは、翌日にプロポーズするはずだった恋人カレンに見守られながら、12時間の予定で冷凍睡眠カプセルに入る。しかし、目が覚めると、そこは科学を捨て、思わぬ方向に進化していた1万年後の世界だった。 全てを失い孤独に苛まれながらも、彼は発掘隊の考古学者アリシアに支えられ、この時代に目覚めた原因を調べ始める。そして、千年前の伝説に手がかりを見出したとき、彼は恐るべき野望を持つ輩との戦いに巻き込まれる。 果たして、リョウの運命は。そして、アリシアとの恋の行方は?

異世界営生物語

田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。 ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。 目覚めた先の森から始まる異世界生活。 戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。 出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。

常世の守り主  ―異説冥界神話談―

双子烏丸
ファンタジー
 かつて大切な人を失った青年――。  全てはそれを取り戻すために、全てを捨てて放浪の旅へ。  長い、長い旅で心も体も擦り減らし、もはやかつてとは別人のように成り果ててもなお、自らの願いのためにその身を捧げた。  そして、もはやその旅路が終わりに差し掛かった、その時。……青年が決断する事とは。 ——  本編最終話には創音さんから頂いた、イラストを掲載しました!

TRACKER

セラム
ファンタジー
2590年代後半から2600年代初頭にかけてサイクス(超常現象を引き起こすエネルギー)を持つ超能力者が出現した。 生まれつき膨大な量のサイクスを持つ主人公・月島瑞希を中心として心理戦・策略を張り巡らせつつ繰り広げられる超能力バトル/推理小説

絶対婚約いたしません。させられました。案の定、婚約破棄されました

toyjoy11
ファンタジー
婚約破棄ものではあるのだけど、どちらかと言うと反乱もの。 残酷シーンが多く含まれます。 誰も高位貴族が婚約者になりたがらない第一王子と婚約者になったミルフィーユ・レモナンド侯爵令嬢。 両親に 「絶対アレと婚約しません。もしも、させるんでしたら、私は、クーデターを起こしてやります。」 と宣言した彼女は有言実行をするのだった。 一応、転生者ではあるものの元10歳児。チートはありません。 4/5 21時完結予定。

処理中です...