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これが恋だ
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(普段は優しげなのに…あんな目もするのだな… あれは…人斬りの目だ。私を守る為に…?)
ユキはふと思い出した。テルの前世は傭兵だったと言う事を。普段自分に向けられる優しい眼差しと今の視線で殺さんばかりの冷たい瞳。どちらが彼の本性なのか。何か、一つ踏み出す方向を間違えば彼は簡単に壊れてしまいそうな。そんな危うさと、側にいたい愛しさを感じたユキは無意識にテルの服を摘んでしまっていた。
テルとユキの技量と殺気にすっかり怯えた残りの1人。
「す、すまない、勘弁してくれ!この通りだ!」
90°に腰を曲げて謝る男。それを見ても尚テルは一歩踏み出そうとするが…
「テル、もういいのだ。私なら何もされておらぬよ。そもそもこの程度の連中が3人で囲んだくらいでどうにかされる私ではないよ。」
ユキはにっこり微笑んでテルを制した。
「はあぁ〜…もういい。そこに転がってる奴ら連れてとっとと行けよ。次下らねえ真似したら…気絶じゃすまさねえ。」
「わ、わかった!」
男は倒れていた2人を叩き起してそそくさと去っていった。
「ごめん、ユキ。俺がユキを1人にしたばっかりにイヤな思いさせちゃって…」
「全くだな。私のような可憐な娘を1人放っておくとは言語道断。」
「うぁ…ホントにごめん。」
テルはユキの冗談(半分位は本気だが)を間に受けてしょんぼりしながらユキに謝罪を繰り返す。
「テル…私は先程、テルに離れて欲しく無かったのだ。なんなのだろうな、この気持ちは…」
「……奇遇だな。俺も今そう思っている。さっきさ、ユキが男共に囲まれているのを見た時…いろんな感情が流れてきた。一番強く思ったのは大事なものが汚されそうな、奪われそうな、焦燥?それと怒りとか。そして今はホッとしてるよ。」
少しはにかみながらテルが言う。ずっとテルから視線を離さずに聞いていたユキはどんどん表情を蕩けさせていく。
「そっ、それはつまり!わ、わわ私の事が大事で他の者には奪われたくないと!そ、そういう事で良いのか?そして、いつも共に有りたいと、そういう解釈でよいのだろうか!?」
瞑らな黒い瞳を輝かせながら余りにも真っ直ぐ見上げてくるユキ。ああ、全くその通りだな、とテルは思う。
「うん。どうもそうみたいだ。俺はユキの事が大事で、誰にも奪われたくなくて、そしていつも側にいて欲しいと思ってる。」
「ふふっ。ふふふふっ。」
(忍びとして裏の世界でこの手を汚して来た自分がまるで街娘のように…)
木陰に並んで腰掛けていた2人はどちらともなく距離を詰めて行った。肩が触れ合う距離で並んで座る2人。ただそうするだけで心が満たされ、交わす言葉も必要ない。しかしテルは思い出した。
(あ、買って来た飲み物!空に浮かべたままだった!)
屋台で飲み物を買って来た帰り、ユキが男たちに囲まれてるのを見て邪魔にならない様に空中に浮かべていた。【念動力】だ。軽い物を浮かべながらチンピラをぶちのめすくらいは『電話をしながらメモを取る』くらいの感覚で出来る。
「そう言えば、これ。」
テルはゆっくりと果実水の入った木製のカップを降下させる。ユキと、自分の目の前に。
「ほわぁ…すごいな!これがテルの【能力】か! 糸も何もないのに浮いているぞ? あはははっ!すごいすごい!」
どちらかと言えば堅苦しい口調のユキが今は無邪気に笑っている。そんなユキを見てムラムラとサービス精神が沸き起こってきたテル。浮いたままのカップをユキの周囲をくるくる旋回させたり逆さにしても零さないようにして少しだけ脅かしてみたり。
「もう、脅かさないでくれ。見かけによらずテルは悪戯好きなのだな。ふふふ。」
ユキの手の上にカップを下ろしてテルはふと気付いた。
「俺の【能力】で喜んでくれたのか?」
「ああ、楽しかったよ。こんなに楽しい思いをしたのはいつ以来だろう…」
昔を懐かしむように少しだけ視線を上げて遠くを見るユキ。今までは忌むべき力。他人を傷つけるための力。自分を守る為の力。それだけだと思っていた自分の【能力】。
「俺のこの力はユキを笑顔に出来るんだな…」
「そうだな。それどころか私を救ってくれたではないか?」
そう言いユキは両手でカップを持ちちびちびと果実水を飲んでいた。そんなユキをテルは眩しいものでも見るように見つめていた。初めて、自分の力があって良かった、そう思わせてくれた少女を。
「ユキ、ありがとうな。」
ユキは不思議な物でもみるような目で見つめ返して来るのだった。
ユキはふと思い出した。テルの前世は傭兵だったと言う事を。普段自分に向けられる優しい眼差しと今の視線で殺さんばかりの冷たい瞳。どちらが彼の本性なのか。何か、一つ踏み出す方向を間違えば彼は簡単に壊れてしまいそうな。そんな危うさと、側にいたい愛しさを感じたユキは無意識にテルの服を摘んでしまっていた。
テルとユキの技量と殺気にすっかり怯えた残りの1人。
「す、すまない、勘弁してくれ!この通りだ!」
90°に腰を曲げて謝る男。それを見ても尚テルは一歩踏み出そうとするが…
「テル、もういいのだ。私なら何もされておらぬよ。そもそもこの程度の連中が3人で囲んだくらいでどうにかされる私ではないよ。」
ユキはにっこり微笑んでテルを制した。
「はあぁ〜…もういい。そこに転がってる奴ら連れてとっとと行けよ。次下らねえ真似したら…気絶じゃすまさねえ。」
「わ、わかった!」
男は倒れていた2人を叩き起してそそくさと去っていった。
「ごめん、ユキ。俺がユキを1人にしたばっかりにイヤな思いさせちゃって…」
「全くだな。私のような可憐な娘を1人放っておくとは言語道断。」
「うぁ…ホントにごめん。」
テルはユキの冗談(半分位は本気だが)を間に受けてしょんぼりしながらユキに謝罪を繰り返す。
「テル…私は先程、テルに離れて欲しく無かったのだ。なんなのだろうな、この気持ちは…」
「……奇遇だな。俺も今そう思っている。さっきさ、ユキが男共に囲まれているのを見た時…いろんな感情が流れてきた。一番強く思ったのは大事なものが汚されそうな、奪われそうな、焦燥?それと怒りとか。そして今はホッとしてるよ。」
少しはにかみながらテルが言う。ずっとテルから視線を離さずに聞いていたユキはどんどん表情を蕩けさせていく。
「そっ、それはつまり!わ、わわ私の事が大事で他の者には奪われたくないと!そ、そういう事で良いのか?そして、いつも共に有りたいと、そういう解釈でよいのだろうか!?」
瞑らな黒い瞳を輝かせながら余りにも真っ直ぐ見上げてくるユキ。ああ、全くその通りだな、とテルは思う。
「うん。どうもそうみたいだ。俺はユキの事が大事で、誰にも奪われたくなくて、そしていつも側にいて欲しいと思ってる。」
「ふふっ。ふふふふっ。」
(忍びとして裏の世界でこの手を汚して来た自分がまるで街娘のように…)
木陰に並んで腰掛けていた2人はどちらともなく距離を詰めて行った。肩が触れ合う距離で並んで座る2人。ただそうするだけで心が満たされ、交わす言葉も必要ない。しかしテルは思い出した。
(あ、買って来た飲み物!空に浮かべたままだった!)
屋台で飲み物を買って来た帰り、ユキが男たちに囲まれてるのを見て邪魔にならない様に空中に浮かべていた。【念動力】だ。軽い物を浮かべながらチンピラをぶちのめすくらいは『電話をしながらメモを取る』くらいの感覚で出来る。
「そう言えば、これ。」
テルはゆっくりと果実水の入った木製のカップを降下させる。ユキと、自分の目の前に。
「ほわぁ…すごいな!これがテルの【能力】か! 糸も何もないのに浮いているぞ? あはははっ!すごいすごい!」
どちらかと言えば堅苦しい口調のユキが今は無邪気に笑っている。そんなユキを見てムラムラとサービス精神が沸き起こってきたテル。浮いたままのカップをユキの周囲をくるくる旋回させたり逆さにしても零さないようにして少しだけ脅かしてみたり。
「もう、脅かさないでくれ。見かけによらずテルは悪戯好きなのだな。ふふふ。」
ユキの手の上にカップを下ろしてテルはふと気付いた。
「俺の【能力】で喜んでくれたのか?」
「ああ、楽しかったよ。こんなに楽しい思いをしたのはいつ以来だろう…」
昔を懐かしむように少しだけ視線を上げて遠くを見るユキ。今までは忌むべき力。他人を傷つけるための力。自分を守る為の力。それだけだと思っていた自分の【能力】。
「俺のこの力はユキを笑顔に出来るんだな…」
「そうだな。それどころか私を救ってくれたではないか?」
そう言いユキは両手でカップを持ちちびちびと果実水を飲んでいた。そんなユキをテルは眩しいものでも見るように見つめていた。初めて、自分の力があって良かった、そう思わせてくれた少女を。
「ユキ、ありがとうな。」
ユキは不思議な物でもみるような目で見つめ返して来るのだった。
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