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大陸の闇編
セリカを旅に連れ出すには
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翌日、俺達は女帝ボーラに会うために都へと向かった。ちなみに昨夜のライムはムチャクチャ可愛かったぞ。ライムは独占欲とかそういうのはあんまりない。共に死地を潜り抜けてきたパーティーの女子たちならハーレムもOKというか、むしろ推奨している節もある。まだ出会って間もない頃にはセリカと二人で風呂に押しかけてきて籠絡しようとした事もあったしな。
「でも、邪魔をされるのはイヤなの…」
なんて瞳を潤ませながら迫られたら、いろいろと無理だろ。
「うわぁ~、随分と活気が戻ったんじゃない?あ!ほら!あの赤備えってソレイユのみんなじゃない?おーい!みんなー!」
そんな訳でご機嫌マックス状態のライムは都の警備に当たっているバンドー軍の中にソレイユの連中を見つけて手を振っている。向こうもこっちに気付いて手を振って来た。
「私達オーシュー軍は沿岸警備の任に就きましたがバンドー軍も都の警備で随分と名を上げたみたいですよ?」
俺達がチンゼイに渡った後の事を竜車の御者を務めているサニーが教えてくれた。ポンティアックをはじめとした不穏分子を一掃したのはいいが、やっぱり抑えが効かなくなった部分があり都の治安は一時的に乱れたらしい。そこに上洛してきたバンドー軍が見事に治安を回復させたと。
「あいつらも民の目線で動くからな。理不尽に苦しむ連中を放っておける筈もないか」
「そうですね。なので赤備えは都の民衆の人気が高いんですよ」
そうしているうちに内裏へと入り、帝へ拝謁する事になる。なんかボーラの顔が上気してるように見えるけど大丈夫か?
「みな、大儀であった。楽にしてよいぞ? カズト殿、よくぞ無事で戻って来てくれた。セリカ殿も自ら先陣に立ち敵を薙ぎ払ったとか。その働き、見事である」
「「は!」」
「では、詳細を聞きたいがこんな堅苦しい場所ではつまらん。宴席を設ける故しばし待つが良いぞ」
形式上俺は臣下の礼を取っているが、その実精霊王の主である俺にはボーラは頭が上がらない。更に精霊王が増えたと知れば色々と面倒になりそうなので黙っていよう。
宴席の場でセリカから昨日の一戦の報告が、俺からチンゼイ解放の顛末の報告がなされたんだが内容が凄すぎてボーラは暫く茫然自失。それでも復活した後は滅茶苦茶感謝された。
「褒賞は何か望みのものはあるか?」
ボーラの申し出にセリカが『勿体なきお言葉…』などとお約束のセリフを吐きそうになったので俺はそれを遮った。
「褒賞として女王セリカに対しては勅令を発して頂きたい。俺には船を整備する資金並びに素材の提供を」
俺の発言にセリカもボーラもきょとんとしている。
「カズト?」
「勅令?船?素材?」
今一つ繋がらないようなので説明してあげよう。
「取り敢えずのゲンの脅威は去りました。しかし大陸の動向次第では第二次、第三次と襲来してくる可能性は否定出来ません。なのでセリカに命じて欲しいのです。大陸の動向を探って来いと。そして俺は大陸に渡る為に船をグレードアップさせる必要性を感じます。資金や素材はその為に必要なものです」
その手があったか!って顔だな、セリカ。勅令ともなればオーシューの留守を預かるコロナさんもダメとは言えないだろ。大手を振って旅に出られる訳だ。船の改装の件は昨夜のうちにガイアのおっちゃんとローレルには話してある。もうノリノリだったよ。
「なるほど…ではそのように取り計らおう」
◇◇◇
「これに乗って、またみんな一緒に旅が出来るのですね」
願いが叶い、感慨深げにイセカイ号を見ながらセリカが呟く。
ボーラへの報告が終わり、海辺の要塞へと戻って来た俺達はイセカイ号を海に浮かべてお披露目をしていた。結局、チンゼイへ出征していた戦力が帰還するまではこの要塞と都の警備をお願いしたいとボーラに懇願され、規模は縮小するものの沿岸警備の任は継続する事になった。残す戦力はこの要塞に1000、都の警備にはバンドーが200、エツリアが300程だそうだ。それならばイセカイ号をここで改装しながら俺達も警備に付き合おうって事になった。
「ほう…こんな斬新な…」
「へえ、凄いな!魔石に蓄えた魔力を動力源にして外の水車を動かしているんだねぇ。でもまだ術式が甘いね。もっと効率化出来るはずだよ」
船の各所を見て回っているおっちゃんとローレルは目を輝かせている。錬金術の達人、ローレルに言わせればまだまだ改良の余地ありらしい。
「そんで坊主よぉ、これだけの船をこれ以上どうしたいってんだ?」
「ん、火力と速度を強化したい」
「はあ!?こいつはこのままでも常識外れの速度が出るんじゃねえのか?火力ってお前、クロスボウにこんなでけえバリスタまで積んでるのにか!?」
アタマ大丈夫か?そんな顔でガイアのおっちゃんが捲し立てて来る。でもこれはテル大先生と事前に打ち合わせしたもので決して単なる思い付きじゃないのだ。
「今まではクルーが少なかったからな。これでも良かったんだ。けど今後はクルーが増えるだろ?遊ばせておくのは勿体ねえから武装を追加する。速度に関しては速くて何か問題あるか?出来るなら空を飛ばせたいくらいだぜ?」
「……詳細を聞かせてくれや」
おし!食い付いた。それにおっちゃんには絶対に断れなくなるお土産があるしな。
「でも、邪魔をされるのはイヤなの…」
なんて瞳を潤ませながら迫られたら、いろいろと無理だろ。
「うわぁ~、随分と活気が戻ったんじゃない?あ!ほら!あの赤備えってソレイユのみんなじゃない?おーい!みんなー!」
そんな訳でご機嫌マックス状態のライムは都の警備に当たっているバンドー軍の中にソレイユの連中を見つけて手を振っている。向こうもこっちに気付いて手を振って来た。
「私達オーシュー軍は沿岸警備の任に就きましたがバンドー軍も都の警備で随分と名を上げたみたいですよ?」
俺達がチンゼイに渡った後の事を竜車の御者を務めているサニーが教えてくれた。ポンティアックをはじめとした不穏分子を一掃したのはいいが、やっぱり抑えが効かなくなった部分があり都の治安は一時的に乱れたらしい。そこに上洛してきたバンドー軍が見事に治安を回復させたと。
「あいつらも民の目線で動くからな。理不尽に苦しむ連中を放っておける筈もないか」
「そうですね。なので赤備えは都の民衆の人気が高いんですよ」
そうしているうちに内裏へと入り、帝へ拝謁する事になる。なんかボーラの顔が上気してるように見えるけど大丈夫か?
「みな、大儀であった。楽にしてよいぞ? カズト殿、よくぞ無事で戻って来てくれた。セリカ殿も自ら先陣に立ち敵を薙ぎ払ったとか。その働き、見事である」
「「は!」」
「では、詳細を聞きたいがこんな堅苦しい場所ではつまらん。宴席を設ける故しばし待つが良いぞ」
形式上俺は臣下の礼を取っているが、その実精霊王の主である俺にはボーラは頭が上がらない。更に精霊王が増えたと知れば色々と面倒になりそうなので黙っていよう。
宴席の場でセリカから昨日の一戦の報告が、俺からチンゼイ解放の顛末の報告がなされたんだが内容が凄すぎてボーラは暫く茫然自失。それでも復活した後は滅茶苦茶感謝された。
「褒賞は何か望みのものはあるか?」
ボーラの申し出にセリカが『勿体なきお言葉…』などとお約束のセリフを吐きそうになったので俺はそれを遮った。
「褒賞として女王セリカに対しては勅令を発して頂きたい。俺には船を整備する資金並びに素材の提供を」
俺の発言にセリカもボーラもきょとんとしている。
「カズト?」
「勅令?船?素材?」
今一つ繋がらないようなので説明してあげよう。
「取り敢えずのゲンの脅威は去りました。しかし大陸の動向次第では第二次、第三次と襲来してくる可能性は否定出来ません。なのでセリカに命じて欲しいのです。大陸の動向を探って来いと。そして俺は大陸に渡る為に船をグレードアップさせる必要性を感じます。資金や素材はその為に必要なものです」
その手があったか!って顔だな、セリカ。勅令ともなればオーシューの留守を預かるコロナさんもダメとは言えないだろ。大手を振って旅に出られる訳だ。船の改装の件は昨夜のうちにガイアのおっちゃんとローレルには話してある。もうノリノリだったよ。
「なるほど…ではそのように取り計らおう」
◇◇◇
「これに乗って、またみんな一緒に旅が出来るのですね」
願いが叶い、感慨深げにイセカイ号を見ながらセリカが呟く。
ボーラへの報告が終わり、海辺の要塞へと戻って来た俺達はイセカイ号を海に浮かべてお披露目をしていた。結局、チンゼイへ出征していた戦力が帰還するまではこの要塞と都の警備をお願いしたいとボーラに懇願され、規模は縮小するものの沿岸警備の任は継続する事になった。残す戦力はこの要塞に1000、都の警備にはバンドーが200、エツリアが300程だそうだ。それならばイセカイ号をここで改装しながら俺達も警備に付き合おうって事になった。
「ほう…こんな斬新な…」
「へえ、凄いな!魔石に蓄えた魔力を動力源にして外の水車を動かしているんだねぇ。でもまだ術式が甘いね。もっと効率化出来るはずだよ」
船の各所を見て回っているおっちゃんとローレルは目を輝かせている。錬金術の達人、ローレルに言わせればまだまだ改良の余地ありらしい。
「そんで坊主よぉ、これだけの船をこれ以上どうしたいってんだ?」
「ん、火力と速度を強化したい」
「はあ!?こいつはこのままでも常識外れの速度が出るんじゃねえのか?火力ってお前、クロスボウにこんなでけえバリスタまで積んでるのにか!?」
アタマ大丈夫か?そんな顔でガイアのおっちゃんが捲し立てて来る。でもこれはテル大先生と事前に打ち合わせしたもので決して単なる思い付きじゃないのだ。
「今まではクルーが少なかったからな。これでも良かったんだ。けど今後はクルーが増えるだろ?遊ばせておくのは勿体ねえから武装を追加する。速度に関しては速くて何か問題あるか?出来るなら空を飛ばせたいくらいだぜ?」
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