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西国編
総員配置に付け
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テルの瞬間移動でスタリオンをイセカイ号へ移動させ、他のメンバーはタラップを駆け上がりイセカイ号へと乗り込む。
「大掛かりな工事をしてるんだからもっと早く仕掛けてくると思ってたんだけどな。」
船首から沖を眺めながらテルが呟く。
「俺もそう思ったんだけどな。どうも連中、数を集めてて時間が掛かったぽい。」
船はおよそ80艘、兵は2500程。砦を攻めるには少なすぎるが工事中の造船ドックを破壊するだけなら十分だろう。しかも連中の認識ではこちらには水上戦力はない事になっている。砦から迎撃部隊が出たら海に逃げればいい。それでもこっちの工事の規模がデカいんで周辺の戦力を集めてから攻撃を仕掛ける事にしたんだろう。
「それにしても、連中ってどこかの島に拠点を造ってるのかな?これだけ長期に渡ってチンゼイを包囲してるんだからずっと船の上で暮らしてる訳じゃないだろうし。」
ライムの言う通り、何処ぞの島に拠点は持ってるんだろう。補給は朝鮮半島からか。それとも台湾、沖縄経由か。恐らく両方だろうとは思うが。
「全滅させずにいくらか残して泳がそう。で、拠点を掴んだら諸侯会議に出席しているお歴々の前で取り敢えずの軍功を上げさせて貰おうか。」
「泳がすって、追跡は誰が?」
「ん?ああ、この辺のヌシだっていうデカいシャチがいただろ?あいつの仲間にやって貰おうと思ってる。」
精霊達の情報では結構な数の島が占領されているので奴らの本拠地となると今一つ絞り切れない。やっぱり逃げ帰った先が本命だろうと思う。俺達の力を脅威と思うならば敵の司令官に報告するだろうしな。
「アクア、シャチのヤツに今の話を伝えてくれるか?それから戦闘中は海域から退避しとけって。」
「うむ。承ったのじゃ!」
さて、準備はこんなもんか。そろそろ出撃しようかと船首に向かって歩き出す。
「まあまあ、カズト殿。カズト殿はこの船の船長なのだ。船長は船長らしくどっしり構えて指示だけ出していればいいのではないか?」
「そうですわね。カズト様は何でもおひとりでお出来になりますので私達の活躍の場が少ないんですの。」
ふむ。たまには普通の指揮官の真似事をしてみるか。
「そんじゃ、今から指示出すから配置についてくれ。エスプリ、操舵は任せる。サンタナは動力炉の出力調整、アクアは潮の流れをこっちの有利になるように運べ。ランとチェロは両舷で索敵監視。スタリオンは船首に陣取っていつでもブレスを吐けるようにしとけ。ライム、ビート、蘭丸は魔法攻撃、テルとユキは指揮を執ってると思われる船に奇襲だ。スプライトとイオタは今回は見学だ。とりあえず仲間達の連携をじっくり見とけ。」
みんなが俺の指示に頷き配置に散って行く。段蔵爺さんと千代ちゃんはハカタの街へ諜報活動に行っていて残念ながら今回は不参加だ。少しずつ集まり始めている諸侯たちに不審な動きがないか監視して貰っているのだ。ちなみに砦に入った職人達には怪しい者はいなかったらしい。
「サンタナ、微速前進。エスプリ、船首を敵の中央に向けろ。」
外輪がじわじわと回り始め徐々にその速度を増すとイセカイ号が進み始めるとエスプリが思い切り舵輪を回して方向転換させる。実はこのイセカイ号、舵で方向転換する以外にも外輪も若干ではあるが舵を切った方向に角度が付くというハイテク技術が盛り込まれていたりする。これにより高速で航行しながらも小回りが利くという高性能な船になっているのだ。ダッツンのおっちゃんのアイディアと技術に感謝だな。
「さて、闇夜の海じゃなんも見えねえ。照明弾でも打ち上げて視界を確保するかね。敵にしてみりゃ夜襲を仕掛けたかったんだろうが、そのアドバンテージ諸共消し去ってやる。」
もちろんこの世界に文字通りの照明弾なんて有りはしない。けど、そこは魔法が存在するファンタジー世界だ。発想と技術でどうにかなるもんさ。
「イオタ。精霊融合だ。」
「うんっ!」
俺の隣で見学してるだけだと思ってたのに出番が出来た事で急にイオタが上機嫌になる。対して反対隣にいるスプライトは非難がましい目で俺を見る。
「むう、イオタだけズルイのだ…私だけまだ精霊融合してないのだ…」
そういやそうだな。ちょっと可哀そうだから餌付けしてやろう。
「よし、スプライト、あ~ん。」
「あ~ん? もご! むふふ♪」
よし、これでスプライトも大丈夫っと。
俺はイオタの火属性の魔力を身に纏い、艦橋から出て船首へと歩みを進める。
「わあ!かずと!それが噂の融合状態?赤い魔力って事はイオタ様かな?」
俺に気付いたライムが感動の眼差しだ。
「その通り。今からちょっと照明弾を打ち上げるからさ。」
「照明弾?」
「ああ。敵が見えたら戦闘開始だ。」
____________________________________________________
ファンタジー小説大賞無事終了!たくさんの応援ありがとうございました!
「大掛かりな工事をしてるんだからもっと早く仕掛けてくると思ってたんだけどな。」
船首から沖を眺めながらテルが呟く。
「俺もそう思ったんだけどな。どうも連中、数を集めてて時間が掛かったぽい。」
船はおよそ80艘、兵は2500程。砦を攻めるには少なすぎるが工事中の造船ドックを破壊するだけなら十分だろう。しかも連中の認識ではこちらには水上戦力はない事になっている。砦から迎撃部隊が出たら海に逃げればいい。それでもこっちの工事の規模がデカいんで周辺の戦力を集めてから攻撃を仕掛ける事にしたんだろう。
「それにしても、連中ってどこかの島に拠点を造ってるのかな?これだけ長期に渡ってチンゼイを包囲してるんだからずっと船の上で暮らしてる訳じゃないだろうし。」
ライムの言う通り、何処ぞの島に拠点は持ってるんだろう。補給は朝鮮半島からか。それとも台湾、沖縄経由か。恐らく両方だろうとは思うが。
「全滅させずにいくらか残して泳がそう。で、拠点を掴んだら諸侯会議に出席しているお歴々の前で取り敢えずの軍功を上げさせて貰おうか。」
「泳がすって、追跡は誰が?」
「ん?ああ、この辺のヌシだっていうデカいシャチがいただろ?あいつの仲間にやって貰おうと思ってる。」
精霊達の情報では結構な数の島が占領されているので奴らの本拠地となると今一つ絞り切れない。やっぱり逃げ帰った先が本命だろうと思う。俺達の力を脅威と思うならば敵の司令官に報告するだろうしな。
「アクア、シャチのヤツに今の話を伝えてくれるか?それから戦闘中は海域から退避しとけって。」
「うむ。承ったのじゃ!」
さて、準備はこんなもんか。そろそろ出撃しようかと船首に向かって歩き出す。
「まあまあ、カズト殿。カズト殿はこの船の船長なのだ。船長は船長らしくどっしり構えて指示だけ出していればいいのではないか?」
「そうですわね。カズト様は何でもおひとりでお出来になりますので私達の活躍の場が少ないんですの。」
ふむ。たまには普通の指揮官の真似事をしてみるか。
「そんじゃ、今から指示出すから配置についてくれ。エスプリ、操舵は任せる。サンタナは動力炉の出力調整、アクアは潮の流れをこっちの有利になるように運べ。ランとチェロは両舷で索敵監視。スタリオンは船首に陣取っていつでもブレスを吐けるようにしとけ。ライム、ビート、蘭丸は魔法攻撃、テルとユキは指揮を執ってると思われる船に奇襲だ。スプライトとイオタは今回は見学だ。とりあえず仲間達の連携をじっくり見とけ。」
みんなが俺の指示に頷き配置に散って行く。段蔵爺さんと千代ちゃんはハカタの街へ諜報活動に行っていて残念ながら今回は不参加だ。少しずつ集まり始めている諸侯たちに不審な動きがないか監視して貰っているのだ。ちなみに砦に入った職人達には怪しい者はいなかったらしい。
「サンタナ、微速前進。エスプリ、船首を敵の中央に向けろ。」
外輪がじわじわと回り始め徐々にその速度を増すとイセカイ号が進み始めるとエスプリが思い切り舵輪を回して方向転換させる。実はこのイセカイ号、舵で方向転換する以外にも外輪も若干ではあるが舵を切った方向に角度が付くというハイテク技術が盛り込まれていたりする。これにより高速で航行しながらも小回りが利くという高性能な船になっているのだ。ダッツンのおっちゃんのアイディアと技術に感謝だな。
「さて、闇夜の海じゃなんも見えねえ。照明弾でも打ち上げて視界を確保するかね。敵にしてみりゃ夜襲を仕掛けたかったんだろうが、そのアドバンテージ諸共消し去ってやる。」
もちろんこの世界に文字通りの照明弾なんて有りはしない。けど、そこは魔法が存在するファンタジー世界だ。発想と技術でどうにかなるもんさ。
「イオタ。精霊融合だ。」
「うんっ!」
俺の隣で見学してるだけだと思ってたのに出番が出来た事で急にイオタが上機嫌になる。対して反対隣にいるスプライトは非難がましい目で俺を見る。
「むう、イオタだけズルイのだ…私だけまだ精霊融合してないのだ…」
そういやそうだな。ちょっと可哀そうだから餌付けしてやろう。
「よし、スプライト、あ~ん。」
「あ~ん? もご! むふふ♪」
よし、これでスプライトも大丈夫っと。
俺はイオタの火属性の魔力を身に纏い、艦橋から出て船首へと歩みを進める。
「わあ!かずと!それが噂の融合状態?赤い魔力って事はイオタ様かな?」
俺に気付いたライムが感動の眼差しだ。
「その通り。今からちょっと照明弾を打ち上げるからさ。」
「照明弾?」
「ああ。敵が見えたら戦闘開始だ。」
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